「西田学人生初の京都へ行く」第38話「小杉Bに見つかった時前川はどうなったか」
38話
20:00 決着の時まで残り32分。
俺「じゃぁ僕は…見送り人として…後ろからついていきましょう…」
小杉B「腹痛い…」
時折お腹をさすりながら小杉は発する。まだ完全に戻ってはいないようだ。
小杉B「まぁ…結構治ったわ。」
おそらく強がりだ、体調はトイレにいた時と何ら変わってない。
小杉B「D組ってどこ?四階?」
前川はD組だ。完全に狙いに行ってる。
俺「四階じゃないかな…あ、でもここ島田くんだね…」
E組の部屋は二階に分かれているのだ。
俺「小杉~前川って名前が三文字だから表記でわかりやすいぞ、」
小杉B「おぉ、そうだな。」
部屋の外にはここに泊まっている生徒達の名簿が
紙で印刷して貼られている。ほとんどの生徒の名前が2文字なのに対して前川の名前は龍之介で三文字、表記すると一人だけ名前部分が長くかなり目立つ。
この方針で俺たち二人は部屋を回っていった。
2文字、2文字、2文字、2文字…
足を止めず流れるように廊下を歩き確認していく。
しかし前川は見つからなかった。
20:11 決着の時まで残り21分
その後いろいろ巡り歩き回った。G組、E組、C組。
どれも前川が所属していないクラスの部屋が続く。
しかしD 組は見つからない。名前もヒットしない。
小杉B「違う、ここ全部F。」
俺「なんか疲れてきた。」
探し始めて10分。もう疲れてきた。
小杉B「俺らのところにさ…水泳部集めようよ…」
前川を捕まえた後の話か、そんなことを計画してるのかお前は。
俺「そんな体調で無理だよお前は…君は休んだほうがいい。」
そうだ。腹をさすりながら言うセリフじゃないぞさっきの。
小杉B「俺は大丈夫。」
嘘つけ。
20:25 決着の時まで残り7分
もしかしたら部屋にはおらずロビーでお土産を見ているのではという俺の意見により俺たちはロビーに来ていた。俺は荷物発送用の票の記入説明のホワイトボードを見たり、小杉Bはお土産を見たりして潜伏したがいくら待っても前川は姿を現さなかった。俺たちはロビーを後にした。俺は再びカメラを回し始めた。
ロビーでカメラを回すと怪しまれるので動画は一時中断していた。
しかしロビーの階段を上りながらおれは再びカメラを起動させた。
俺「後編ですね、多分。もしかしたら中編、処刑編といってもいいでしょう。」
小杉B「あ、つっちー。」
俺「おっと、処刑人小杉は友達に聞くようです。」
小杉B「聞いてみる。」
俺「はい。聞いてくるようです。」
小杉Bは友達に聞き始めた。
俺の知らない友達だったので俺は単独で他の場所を捜索することにした。
小杉Bは本当に前川をやる気なのか。水泳部でも一二を争う仲のいい前川を。
ほかの見ず知らずの人ならまだしも、親交も深くお互いよく知ってる相手だぞ。
友達でさえ彼は容赦ないのか。もし本当にそうならもう小杉Bはちょっと意地が悪いけど優しいところもある人とかいう生ぬるい表現では表せない。
悪。
悪人となってしまう。己の私利私欲のためか、それとも復讐しないと小杉Bのキャラとして顔が立たないからか、いずれにせよ小杉は自分の意思で自分のために前川を殺そうと行動してる。実に悲しい。修学旅行が始まるつい四日前まではあんなに笑い合っていたのに。
「おばキヨ」ひとつでこれほど仲たがいするのか。
小杉Bが実際に前川を見つけたとして、どうするか。
その後の行動により彼の運命が決まる。
今この事態を知っている第三者は俺だけ。
俺が小杉Bの運命を変える。彼をこれ以上誤った道に行かせたくない。
ちっぽけな力だ。小杉Bに両手で挑んでも腕相撲勝てなかったちっぽけな手の力だ。
それでも俺はこの手で小杉Bを救う。絶対に小杉VBなんかにはさせない!
20:31 決着の時まで残り1分
結局考えてるだけで何にも見つからなかったので、小杉と合流しようと階段へ戻る。
俺「小杉~小杉、小杉~?」
すると小杉Bはなにやら指で何かを表したまま階段を上ってきた。
右手は2本、左手は5本指を表していた。
俺「えっ?」
小杉B「2・5・2」252号室。
小杉はついに前川がいる部屋番号を知ってしまった。
俺「やばいです。
処刑人小杉に居場所を知られてしまいました。前川、全くの無防備です。」
部屋の番号がわかってしまえばしおりで居場所がわかる。確認したところ部屋はこの階だった…そろそろ決着がつく。
小杉Bは罪を犯すのか…はたまた前川を許すのか…
そして小杉Bが廊下の角を曲がると、前川がいた。
20:31:52 決着の時まで残り8秒
小杉Bはなんの喜怒哀楽の感情も出さず無表情で足を速め前川の肩に手をかけた。前川は何も言わない。明らかにさっきトイレでやったことの報復だってことはわかってるはずなのに。そうか。受け入れたのだ。前川は全てを、この先起こることを全て知ったうえでそれを受け入れたのだ。
運命を受け入れた人間に訪れる境地なのだ。
はたして彼は罪を犯してしまうのか?小杉VBになってしまうのか!?
しかし前川がなにやら話をし始めた。
前川「ちょ、俺今ね…先生に怒られたんだよ…」
俺「え…まじで…?」
前川「やばい…めっちゃねぇ…落ち込んでるよ俺は…」
どうやら前川はなにかを起こして先生に怒られてしまったらしい。
そうか。それで小杉Bに会った時も無反応だったのか。
普段は叫びまくって全力で抵抗するはずなのに。
運命を受け入れた人間の境地とか言っちゃったけど単に怒られて小杉Bを相手にするテンションじゃなかったというわけか。
すると小杉B一応怒ってる感を出す。完全に今の前川に困惑してるが出す。
小杉B「…お前俺になにしたか分かってんのか。」
前川は答えない。答えられないのか前川。もうこれはダメだ。
今日の彼はもうダメだ。報復どころの話しじゃない。
小杉Bもこんなテンションの前川には手を下す気持ちは沸かなかった。
いつものテンションが高い前川が必死に抗う姿を楽しむつもりでいたからだ。
こんな状態じゃどうしようもない。
俺「………」
小杉B「………」
前川は首にかけられている小杉Bの手を嫌がるどころか頭を置いてうなだれてしまっている。小杉Bもその様子を見てさすがに察した。
今日の前川は十分に罰を受けた、と。
21:00
最後の班長ミーティングだ。例によって本日の班長も俺なので俺が出席することになる。今回は遅刻しなかった。昨日ついた時は最後から二番目くらいで若干バツが悪かったが今日はそんなことはなく悠々と班長が揃うのを席で待てた。
そしてミーティングは始まった。主に話の軸になったのは旅館での過ごし方のマナーに関してだった。どうやらこの旅館に来て二日目にしてついに平岡生の裏の顔が明るみになって議題に出たようだ。まず数学の先生が話し始める。
先生は冷静に旅館内各地で先生に生徒が捕まり叱責されているという現状を報告。
注意を促した。
我々の班は外へ出たり温泉で水を大放出しながら戦争したりと精力的に活動していたが先生に怒られるようなことはなかった。
つまりは今書いてきたこと以上のことを他の平岡生は行い先生に叱られたということだ。先生どれだけ寛大なんだ。
数学の先生「僕たち、君たちを信用してます。だから夜の見回りもしてません。
してないでしょう?ライト持って部屋の外でてる生徒いないか徘徊するとか。
先生はね、信頼しているんですよ、あなた方のことを。だから信頼されている君達は信頼している側の気持ちを考えて、それに応えてください。」
その後バトンタッチ。
(マラ石の真実を教えた方じゃない)英語の先生が話し始める。どうやら先生の中で今回の平岡マナーに関して一番の被害者らしい。
英語の先生「まぁね、個人的な話になっちゃうけども、少し先生怒りすぎたとは思ったよ。」
まじか、英語の先生が怒ったのか、想像するだけで泣きそうになる。
英語の先生「でもね、それ位うるさかった。そこだけはC組のみんなはわかってほしい。」
知らないぞその話、なんだどんなことが起きてたんだ。
てか前川も怒られたよな、何が起きてたんだ!?
色々知りたかったが結局ミーティングで語られたのはマナーに関しての
注意の呼びかけだけだった。
その後部屋に帰ると珍しく全員がいた。珍しい理由は三上が常にどっか他の部屋へ回って青春してるからだ。
水泳部二人にミーティングで言われたことを報告した。
俺「でも、英語の先生キレるなんて相当だよな、なにやったんだろ…」
三上「あ~C組の人英語の先生が隣の部屋にいるのに
枕を壁に当てまくったんだって。」
なんで班長よりお前の方が知ってるんだ。青春野郎の特権、絶大な情報網。
続く