「西田学人生初の京都へ行く」第29話「行動予定表通りになぜ行かないのか」
29話
俺「とりあえず次の予定してるところ行くか。」
小杉B「え?次ってあの白川Tに言われて無理やりお前が入れたっていう文化財か?」
一回行動予定表全て食べ物関係のもので埋めて提出した際に
文化財を入れろとボツをくらい俺は文化財を行動予定表に三つ入れていた。
音羽屋の次は近くにある泉涌寺という場所へ行く予定になっている。
俺「そうだな。」
小杉B「はぁあ~?」
明らかに食べ物関係でないことに不満を隠しきれていない小杉B。
あとさっきから一定時間ごとに俺をどついてくる。
三上「しょうがなくね?」
俺「あ~ありがと、三上。小野田くんもごめんね、いいかな?」
小野田くん「うん。」
俺「じゃ、すいません。次行く場所泉涌寺に行きます。」
小杉B「チッ」
舌打ちした。隠す気はないようだ。でも心のなかでは全員小杉Bと同じ気持ちなのだろう。誰一人行くことを喜んでない。
会話が一気になくなった。さっきまで気にもしなかった雨の音が際立ちうるさくなった。アスファルトのくぼみに溜まった水たまりを踏むたびに
ビチャッビチャと音が鳴りそれも不快に感じる。
どんどんどんどんどんどんどんどん雰囲気が悪くなる。
疲れているが「疲れた」とは一切だれも言わない。
もう言う気力もないということか。
小杉Bも下をずっと見つめ歩いている。不自然なほど無口だ。
おれは頑張って時折話題を掘り下げ、あるいは切りだしていったが効果は出ず。
また泉涌寺への道のりも案外険しかった。
やはり百聞は一見にしかず。
パソコンでは捉えられない実際行ってみないと分からない坂の急さ。
並木がたって雨を少し防いでくれたので俺達は傘をさすのをやめた。
傘を持つことによって持ち手が痛くなることも地味にこのムードに貢献していた。
ただ黙々と歩いた。書くことも無いくらいに。
坂道を上る途中で思い出したがここは鑑賞代としてお金を徴収される。
確実に良い話題ではなかったが今はなりふり構っていられない。なんとか話す雰囲気を作り出し京都巡りを良い記憶として残さなければいけないのだ。
坂を登りながらみんなに話しかける。
俺「あと、学校で話したと思うけど…
ここ一応鑑賞代として300円必要だけどいいっしょ?」
三上「は」
小杉B「マジかよ…チッ。」
小野田くん「(-_-)」
思いの外「忘れてたわ!先言えよ!」→「もう帰る」みたいな流れにはならずみんな覚えていたらしい。ただ受け入れられていないようだった。
10:04
泉涌寺へ着いた。
えらいでかく泉涌寺と彫られた長方形のツルツル石が置いてあった。
そして前方には泉涌寺とそれ以外という風に境界線を意識したような門があった。
当然のごとく門の先には受付所が置かれておりそこにお金を払うことで見学ができるようだった。
門の中には足を踏み入れてもいいがその先にある泉涌寺本堂は見ることができないという訳か。
まぁいい、払うしかない。数十分かけてここまで来たんだから。すると小杉Bと三上が口をそろえて言った。
小杉B&三上「払わない。」
なんでやねん。
坂道を頑張って登った理由を二人は分かってないんじゃないか?
森林浴じゃないよ?ちょっとした健康法でもないよ?
泉涌寺を見学するためでしょ!?
え、ここまで来て帰っちゃうの?
俺「えっ、…いや…見てかないの?」
小杉B「うん、興味ねぇし。」
無いのは知ってるよ。でもそれココで言う!?
坂道を登る前ならまだしも。
泉涌寺まで40センチもないこの場所でそれを言ってしまうんですか。
三上「音羽屋で何にも食えねぇのにここでお金払うってなんかな…」
小杉B「あぁ、」
う~わぁ、やっぱそこか。結局は音羽屋を引きずってるのか。
それが根底にあるなら何を言っても無駄だ。
なぜなら音羽屋は俺の過失だからだ。
おそらく彼らは迷いながら坂を登っていたのだろう。
そして泉涌寺へ到着したちょうどその時。
お金をここで使うべきではないという結論に達したのだ。
ノリではなく真剣に考えて彼らは意見を変えたんだ。そう思うことにした。
事前に学校で3日目の行動班についての注意が先生の口から聞かされていた。
班長は班員に単独行動をさせるなと。
今、四人中二人が見学代を払わないという状況にありこれは覆りそうにない。
彼らを門の外において行き小野田くんと二人で見学するのは論外だった。
俺「小野田くん…悪いんだけど、見学はしなくていいかな…」
小野田くん「…うん。」
こうして我々は泉涌寺の門前で見学を断念し引き返すことになった。
せめて行ったことだけでも証拠に残すためにと写真を撮った。
誰も楽しそうじゃなかった。
こうして我々は次の場所へ移動することになった。
次に予定されている場所は東福寺。
しかし現在もう予定通りに進んでいない。
なぜなら時間のズレが生じてるからだ。
俺はこの行動予定表にそのスポットごとに大体の滞在時間を細かく設定していたのだ。例えば文化財の場所では「見学時間」、
飲食店では飲食をする時間が滞在時間に当たる。
つまり滞在しないとその分だけ時間がずれ始めるのだ。
行動計画表では音羽屋で一時間分を取っていたため
実際は営業していなったためそのまま泉涌寺へ直行。
この時点ですでにずれてる。
また泉涌寺から次の場所へ行く時刻は予定では11時10分からだった。
実際には見学しなかったため現時刻は10時20分。
40分ほど早い。
しかも結論として我々はこの後東福寺へは行かなかった。
文化財で消極的ということもあったがそれ以上の理由があった。
移動手段が徒歩だったのだ。
誰も足を動かそうとはしなかった。みんな無言で首を振っていた。
というわけで飛ばして次の場所を目指すことへ
東福寺の次の場所は「おのだ」。
とんでもないことに予定ではこの時間は昼どき。
昼食をとるためのお好み焼き屋へ行くことになっていたものだ。
東福寺へ完全に行かないことが決定した為また時間がズレる。
東福寺へ着いた時点で11時34分。
東福寺の見学時間に俺は三十分をとっていた。
12時4分出発の予定だった。
え~っとつまり10時20分からおのだを目指すということは…どんだけずズレるんだ?…えー…あ、104分ずれるということだ。
10時台から昼飯を食べる場所へ向かうなんて今考えてみたら早すぎていたが
その時の俺らは音羽屋のショックがあったのでとりあえず飲食をすることを目的として行動したかったのだ。早すぎとかは考えもしなかった。
というわけで我々は予定より約2時間早くおのだを目指すことになった。
10:20
かなりカオスなことになっているが決まったことは仕方がない。
このおのだへ行くには初登場の交通手段、「京都地下鉄」を使うことになる。
ほとんどの路線はワンデイチケットの対象なのでお金がかかることはない。はず。
そこまでは正直かったるいので調べなかった。
実際ワンデイチケット今日配られた訳だし
ちょっと頑張らないと調べられなかったのだ。
まぁちょっと頑張れば調べられたけど。
京都の地下鉄はいつも俺が通ってる東京の地下鉄とほとんど変わらなかった。
東京と同じ無味無臭だったし。
10:39
電車内はそれなりに日曜だったので混んでいた。座れず全員立ちながらつり革につかまった。小杉Bと三上はスマフォでゲームの対戦。小野田くんは文庫本、
俺は外の景色を眺めていた。
汽車さん「七条~七条~です。」
俺「俺たちが行くのは三条だからまだ降りないよ。」
あと六、五、四条らを越えないといけないのでまだまだ先は長い。
思えば東福寺から一番近くにあり三条を通っている路線に乗り込むはずだったが
我々は泉涌寺から最寄りにあった駅に乗ってしまったので
三条には着くことはわかっているが手持ちの資料に書いてある所要時間はあてにならず何分かかるかわからなかった。
あ~こんな時にスマフォでもあればいいんだろうな。音楽とか聞けるわけでしょ。
良ーなぁ~、本持ってるは持ってるけどこの本難しすぎて行きの新幹線から一度も開けてないし、本電車で読むと酔っちゃうしな…あ~ぁヒマ。
それになんもしてないと体調に敏感になってくる。つまり空腹感を意識してしまうのだ。あ~お腹すいたなぁ~、とりあえず俺は非常食の一環としてポーチに保存していた二日目の朝食の焼き海苔をパリパリ食べた。電車内に磯の香りが充満した。
こうして我々は三条に着いた。
PS次回でついに30話。だいぶキャラクターにもなじみが出てきたんじゃないでしょうか。残すところ十数話。ノンフィクションで突っ走ります。