「西田学人生初の京都へ行く」第32話「初めて西田の想像どおりの形で出てきてくれたのはどこだったのか」
32話
13:12
今までかろうじて存在していた目標的なもの、それがおのだだった。
それを叶えた今、我々の班は再びノープラン状態へ放り出された。
もはや誰も当初計画していたコース巡りの話題は出さなかった。
とりあえず歩きながら大通りへ向かう。
歩く構図は先頭に並行して歩く俺と小野田くん。
そこから大股で5歩くらい下がったところに水営部二人が歩いている状態だった。
俺は頼れる小野田くんに仕える秘書として今後の予定を話し合った。
俺「小野田くん、次どうする?」
小野田くん「うーーん。」
三上「次どうする~?」
お前も参加するのか。三上は主張が強くて面倒だから抜かして進行しようと思ってた。まぁいいか。
三上「和菓子屋行こうぜ」
やっぱだめ、五歩下がれ。
これには小杉Bも反論。
小杉B「いや、いま食ったばっかっしょ…」
三上「さっきのお好み焼きで昼食を食べた。でもデザートはまだ食ってないよな?
だから甘味所いってたべようぜ。
いけるでしょ。甘いものは別腹ってよく言うじゃん。」
小杉B「ん~…まぁ実際当初そういう企画だったしいいか。」
三上「食べ物巡りだったしな、方針。」
あれあれあれ?
なんか決まっちゃいそうな雰囲気。まって。俺ら二人のこと忘れてない?
三上「西田、小野田、それでいいな。決定。」小杉B「決定。」
忘れられてなかったけど強制的にいいってことにされた。
こうして我々の新たな目標が決まった。
次の目標は視界に移った甘味所に無条件で入るというもの。
というわけで歩く。ここから一番近い甘味所を目指して。
歩き続ける。構図はさっきと同じ。三上と小杉Bはさっきからずっとこんな会話をしている。
小杉B「…それは出ればでしょ。」
三上「いやでも大体…一番最初の10連はでる。」
小杉B「あぁー…ま、でもね。俺30連やってのアーサしか出なかった男だから」
三上「はぁ、俺なんて50連やって星5一体も出なかった男だぞ。」
まぁ盛り上がってますね。スマフォのゲームの話題で。
ここで小野田くんは再びガイドブックを取り出し現在地をお好み焼きおのだから計算して確認した。俺も確認してみた。みるとどうやらこのすぐ近く。数十メートルの距離で観光スポット「耳塚」があるはずだった。戦国時代豊臣秀吉が二度の朝鮮出兵の際手下に殺した朝鮮人の耳をちぎれと命令された結果できた大量の耳を入れた塚だと言われているなかなかエグい建物である。もう視界に入ってもおかしくない距離のはずだった。
俺「この近くに耳塚があるはず。」
小野田くん「あれ」
小野田くんが指差す反対側の道路に耳塚はあった。全体が石で出来た建物なのですぐにガイドブックに載っている耳塚だとわかった、
俺「おい、小杉お前の興味あるっつってた…」
小杉B「あっ?無ぇよ。」
俺「耳塚なら行きたいかなぁって…五日前のお前、」
小杉B「じゃ、いこーぜ耳塚。」
意外に素直に折れてくれた。
反対側の道路へ移る。
小杉B「これあれでしょ、朝鮮の戦争でしょ。」
三上「負けた奴な、」
小杉B「そうそう証拠として耳とか鼻を切り取って」
三上「あぁ、耳塚ね、あぁ、あぁ。どこにあるの?」
俺「いや、あれだってだから。」
三上「なんで公園の中にあんの?」
俺「いやそんなわけねぇだろ。」
耳塚は案外小さかった。大きさからして俺の自宅と変わらないんじゃないか?
なんかこうイメージ的には灯台のように原っぱの崖ぎわにでかく立っている雰囲気だったのに。公園の近くに建っている耳塚はすごくチープだった。
それでも数千もの耳や鼻が中に入っており、さらに塩なども入れて保存を効かせたなんて考えると一気にチープでいいと思い始めてしまった。
説明プレートが横にある。読んでみよう。
「耳塚(鼻塚)
この塚は16世紀末、天下を統一した豊臣秀吉がさらに大陸にも支配を伸ばそうとして朝鮮に侵攻したといういわゆる文禄の役、慶長の役
(朝鮮史では文禄の役を壬辰倭乱と呼び、慶長の役を丁酉倭乱または丁酉再乱といった)に関わる遺跡である。
古来一般の戦功の印である首級のかわりに、朝鮮軍民男女の鼻や耳をそぎ
塩漬けににして日本へ持ち帰った。それらは秀吉の命よりこの地に埋められ、
共養の義が持たれたという。これが伝えられる耳塚、鼻塚のはじまりである。
今日ではこの耳塚を戦乱かに破った朝鮮民衆の受難を歴史の遺訓として、今に伝えている。」グロいですね。この小説には無い要素ですがもうやめたいとおもいます。
耳塚を見終わった我々はその後も歩き続け、
ついに午後1時33分我々は京都初めての甘味所にしておそらく最大の店
「京菓匠 七條甘春堂 本店」にたどり着いた。
13:33
全員明らかに興奮してる。それもそのはずだ。京都名物の中でも我々が一番食べたかった京和菓子を今から頂こうとしているのだ。
それに店の雰囲気が俺らの思っていた想像通りだったのも大きい、
考えてみればこの旅行、奈良の時点から俺が想像していたものは大抵が斜め上を行ってた。
水落遺跡
イメージ 非常に広大な面積を占めた遺跡観光スポット。
実際 めっちゃ小規模。
イメージ 外観は土や粘土を用いた柔軟なイメージ。
実際 これでもかというほどのゴツゴツ仕様。
こんな調子だから初めてイメージぴったりの店が現れてくれたこの京菓匠七條甘春堂本店に俺の好感度はマックスになったのだ。
全体的に木材作りで赤い布が被せられている。
和菓子のサンプルが置いてあり素晴らしい雰囲気。
戸を開け中原がすいませんと女将を呼ぶ、女将が出てきた。着物姿だ。いいね。
早速待つことなく四人は上へ案内された。
二階は全て和室でありある場所では手作りの和菓子を作るという授業を行っていたらしく何十人もの女性が畳上に正座していて一人の女の話を聞いていた。
俺たちはベランダを案内された。なんと屋外である。頼んでもいないのに屋外である。周りのには京都の町並みが景色いっぱいに広がっており、ちょっと身を乗り出して頑張れば稲荷山神社も見えた。
素晴らしい雰囲気の中その雰囲気を楽しむものは皆無。全員メニューに即手が出た。
どうやらお腹が空いていないという問題は考えなくて良かったようだ。
続く