「西田学人生初の京都へ行く」第30話「西田はなぜ壊れたのか」
30話
三条に着き電車を降りる一行。三条に着いた後は一旦駅から出て5分ほど徒歩で歩きまた違う駅に入ることになっていた。なんで駅から駅へ電車を使っていけないのか疑問だったが道のりは最善のはず。あまり突っ込まないでおいた。
一旦外へ出るとまた雨。みんな「あぁー…」みたいな顔をしながら
傘をさしだした。歩く。絶対五分じゃなかったがとにかく次の駅へ着いた。
そこから一駅で京都市役所前という駅へ向かい、
出口から徒歩2分でお好み焼き屋には着くとかかれていた。
移動は続く。全員無言のまま歩く。明らかにみんな疲れている。
泉涌寺の時点でそうだったので今ではみんな目が死んでしまっている。
これ、ホント着けなかったら殺されるな、マジで。
そう思いながら俺は歩き続ける。
いや!心配はいらない!だって現時点では着実に予定に沿って道を歩んでる!
それにさっきの電車内で確認したがおのだは今日は確実に営業してる。
弊害なんてないんだ。音羽屋の失敗は二度と繰り返さない。
この資料も完璧だ、俺が何時間もかけて京都のサイトを往復して入力してプリントして作った資料なんだ。間違いなんてあるわけない。
数々のトラブルもあった。行き先に「おのだ」って入力しても「見つかりませんでした」とか言って出てこなかった時もあった。いろいろ原因を考えてようやく店の住所を入力すれば出てくるんだということに気づいた。こんな風に何度も何度も壁にぶつかっては頑張って考えてそれを乗り越えてきた。それで出来上がった資料だぞ!
「最強」としか言いようがないだろう!そう。まだ今なら、
今なら持ち直して楽しい京都巡りにできる!
俺は確実な自信を持ちながら先陣を切り歩いた。
11:05
京都市役所前に着いた。
ここから外へ出て徒歩2分。
の、はずだった。
なのに10,20分歩いても一向に姿を現さないおのだ。
マップを見てもわからない。
どうなってんだこれは。周りに看板は山ほどあった。
しかし目を凝らしても一向に現れない「おのだ」の文字。
歩きスマフォをやっていた三上がついに急かし始める。
三上「お~い、どうなってんだよ西田。ぜんぜん着かねぇじゃーん。」
俺にもどうなってんのか分からない。亀並みの速度でもここまで時間はかからないはずだ。雨の中ひたすら歩く。
歩き、歩き、歩き続け、歩き続けた。
結論を出した。
俺「お好み焼き屋無い!」
テンション高く言いましたァ~!!
ハイ、無い~!!もうね!無いと思ったよ!こんなもん!
歩いて十分そこらで悟っちゃったねコイツは!
な~んでなんだろね!?なんで着かないんだろね?割とマジで!
もうね、逆にウケるわ!!こんなクソ運のついてなさ!!
テラワロスものじゃね!?うんちじゃね!?おれらうんちじゃね!?
よっしゃぁうんちだぁ!!キタァ!ほっほぃ~!!
ウッシャ!ウッシャ!ウッシャ!ウッシャ!
小杉B「ざっけんな!!!」
その声で俺は理性が戻った。
小杉の顔はこの京都旅行で一番のキレた目をしていた。
俺「いや…だってねぇんだもん…」
小杉B「なんで楽しそう言ってんだよ」
俺「ごめん、何か…もうヤケになって…」
小杉B「こんな奴班長にすんじゃ無かった。」
したのは誰だよ!
俺「おれだって一所懸命にやってたんだって!!
見ろよこの資料!!」
俺は雨にされされボロボロになった資料を引っ張り出した。
俺「これスペシャル資料なんだよ!
俺が数時間かかって家のパソコンで寸暇惜しまずいろんなサイトから情報を集めて家のプリンターでプリントアウトしたスペシャルな資料!」
三上「ちょ、見して。」
三上に資料を渡す。俺が作ったスペシャル資料。
三上「これなんで目的地が「京都市東山区大和大路通り塩小路下ル上池田町546」って変な名前なの?」
俺「おのだって入れたら出てこなかった。だから店の住所入れた。」
三上「これで変になっちまったんじゃねえか?」
俺「違う!それだけは絶対違う!」
三上「普通出てくるだろ店の名前で、無いっておかしいよ。」
俺「え、無かったんだって!…」
小杉B「もういいよメンドくせぇよ!さっきの駅戻ろうぜ。チッ。」
確かに小杉Bの言う通りだった。
最後の舌打ちは余計だが
半ば煮え切れないまま一旦駅に戻ることになった。
なんでこうなるんだ。俺が前に出るといっつもこうだ。全部うまくいかない。
京都市役所前に戻り駅内にあるでかいマップの前に俺たちはいた。
田中Bと中原は再び一つのスマフォでゲームをしていた。
俺は必死に地図を見ていた。
ホントにあっていると思ってた。
だって実際京都なんて行ったこと無いからパソコンに表示されたルートが間違ってるかどうかなんて分かんないんだ。
1+1=6000とかは一目で違うって分かるけど分かんないんだ。
京都なんて分かんないんだよ!
第一ここを決めたのは水泳部二人だ、しかも決めた理由がまたひどい。
この店名を最初出した時少なからず皆さんは「あ、」と思わなかっただろうか?そう。この店の名前は「おのだ」うちの班員の一人小野田くんと読み方まで同じだ。
明らかに偶然じゃない。でも結局なんでかはわからなかった。それが今朝。
もちろん小野田くんがどこかへ行っているときに三上がぽろっと言ったのだ。
「あいつを昼に店へ置いてって午後は三人だけで見学しようぜwwww
小野田を置いて行く店だからおのだって店wwwww」
もちろん本気ではない。冗談半笑いで三上は言っていた。
それでも小野田くんに対してそういう目線なんだということは事実だった。
そのとき歯磨きをしていた小杉Bも笑っていたので多分あいつもそうだろう。
くそっ。
考えたらなんでこんな奴らと俺は京都を歩いてるんだ。
そもそも俺には班員を選ぶ権利すらなかった。
気づいたら小杉Bが当然のように俺を入れていたのだ。
別にそれ自体は嫌ではない。嫌ではない。
けど当たり前のように俺に聞かず彼の中で実行されていくのが嫌だ。
今まであいつと付き合ってきた2年間、
学校行事の班員選びの度にこれは繰り返されていたが
なんだか改めて考えたらこれっておかしいんじゃないか?
なんで俺の意向は考えてないの!?
そもそもなんで俺ってこんなに不遇を受けるんだ?あれ小杉Bって先輩だっけ?
俺より先にこの世に生まれてきてるっけ?いやあいつは1998年6月生まれ。
俺は1998年4月17生まれ。なんだ俺の方が早生まれじゃん。
くそ、
いやわかってる。こんなこと今まで何度も考えたことだったじゃないか。
俺の無駄に深読みアンド行動分析する脳は何度も何度もここにたどり着いていたのだ。疑問がわいたらとことん考える。
どうしてあんな行動したんだろう。なんでこんなことを言われるんだろう。
なんで上下関係があるんだ。と、
でも変わらず今に至る。じゃぁなんで?
それは俺が疑念を抱く対象があまりにも普遍的すぎるからだ。
もう当たり前のことなのだ。上下関係なんて行い手は意識をしていない。
そのため論理的な疑問にも至らない。だから本人には変えていく必要性も見出せない。いいか悪いかは関係ない。
善悪どちらの行いも習慣化すれば区別を考えなくなり無意識化していく。
だから行動を起こしてもダメだった。変わらなかったんだ。
むしろいちいち人間関係を分析して気持ち悪い。全部理屈化するなと言われたんだ。
確かにそうだ。いちいち日常生活で
今の行為は善悪でいうと悪なので今後からは控えてほしいなんて自分からしても付き合いたくない。解ってる。解ってるんだけど。
「うわっ、あいつ今あくびしたぞ!すっげぇキモかった…」
「てか、なんであいつ毎朝HR前ブラックコーヒー買って飲んでんの?調子乗ってんの?気取ってんだろあれ、」
「あいつを昼に店へ置いてって午後は三人だけで見学しようぜwwww」
「小野田を置いて行く店だからおのだって店wwwww」
くそっくそっくそっくそくそくそくそくそくそくそ
くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!!!!!!!!!!!!!
腹たつわぁ~!!!!あいつらぁ~!!!!!!
そんなふうに考えながら必死に俺は電光掲示板に食い入る。
しかし何もわからない。
駅員さんにも聞いたが駅内のことしか分からずこの周辺におのだがあるかどうかは結局わからなかった。
恐れていたことがついに起こってしまった。
修学旅行三日目にして最悪の日11月10日。いまそれが着々と完成されようとしている。
もうだめだ。完璧に失敗だ。
しかしそのとき予想だにしないことが起こったのだ。
続く