西田学人生初の京都へ行く」第23話「女将が出してくれた白い液体の正体は何だったのか」
23話
本題の法隆寺。
正直びくった。
なぜなら私は法隆寺一つがポンとおいてあるものだと思っていたからである。
そう思って行ってみたらまず町レベルで昔の建築物があるゾーンがあり
その一つとして法隆寺が立っていたのでびくってしまった。だから法隆寺を見に行ったのではなく印象としては古い町全体を見学しに行ったような感じだった。
俺は以前休暇時の社会の課題で法隆寺を題材にした作文を書いたことがあった。
そのため法隆寺については勝手にみんなよりも知ってると思っていた。
やはりその通りでみんなはガイドさんの話に驚くばかりだった。
しかしそれは俺も同じだった。ガイドさんが話す話の内容で俺が知っていたことは一つもなかった。知ってる話がなさすぎてガイドさんが嘘ついてんじゃないのかと思った。嘘を堂々と俺らに伝道してんじゃねーかと思ってしまった。
しかし全部まぎれもない事実。法隆寺の中にも仏像がいるなんて初めて知った。
そして法隆寺の見学は終了した。
我々はバスに乗りいよいよ京都へ舞台を移す。
かなり長い間バスで揺られた。俺はその間今度こそ寝ようと心に決めた。
午前のサイクリングのおかげでめっちゃ疲れたのだ。
普段陸では運動しないので他の人より一層疲れた。
さらに俺が率いた班はなぜか山奥の果てまで行ったので他の班より余計疲れた。
今ならあのバスガイドさんをもってしても俺の睡眠を邪魔することはできない
カメラもバス内では撮らないと決めたのでバックの中へ入れてしまった。さすがに小杉Bも俺のバックを探すほど執念深くない。あいつはいつでもその場にあるもので俺をいじるからだ。完璧に障害はすべて取り除かれた。よし、寝れる。
そう思いまどろんだ。いつもならまどろみかけたところで小杉Bの水平チョップか
肘エルボーが飛んでくるが今回はそれがない。どうやらあいつも疲れているようだ。
俺は目は開けなかったがきっとあいつもリクライニングして眠りの体勢に入っているに違いないと思った。そしてだんだんと意識が薄れ判断力行動力反射神経低下。
どんどんと意識もブラックアウトしかける。しかしふと俺の左耳に何か違和感を感じた。ぼんやりとだが何かがはめられたようだ。耳栓だろうか。これならあのバスガイドさんの声のボリュームも下がりより一層眠りのコンディションが整う。
誰だかわからないが気の利くやつだ。
(この時の西田はほぼ眠りかかっており判断力も思考能力も低下していたので
明らかに小杉Bの仕業ということにも気づけなかった。)
しかし数秒後悲劇が襲う。
ギャギャウギャギャウギャギャギャギャ!
まどろみ、スイッチをOFFにしかけている俺の脳内でエレキギターとドラムが炸裂した。小杉Bが俺の左耳にイヤホンをつけボリュームマックスで曲を流したのだ。
この攻撃的なイントロ。聞き覚えがある。小杉Bの大好きなロックバンドの曲だ。
確か小杉Bに聞けと言われ自宅で聞いた…サビでこの曲の名前を叫ぶはずだが
なんだっけ…この曲名…?
そしていきなりサビに入った。小杉Bが指でタップして飛ばしたのだ。
完!全!感!覚!dreamer~~!!!
そうだ。この曲は完全感覚dreamerという曲名だった。
ONE OK ROCKというロックバンドが歌う曲で小杉Bのお気に入り曲。
っていうかうるっせ!
冷静に分析していたがやっと体が動き俺はすぐさまイヤホンを外した。
鼓膜が破れそう。小杉Bは笑っていた。
小杉B「ハッハッハwww反応早wwww…」
俺「お前急に流すなよ!びっくりするだろ!」
小杉B「どう?ワンオクの完全感覚dreamer、YouTubeのライブバージョン。」
俺「知るかよ!今俺寝かけてたんだぞ!お前のせいで起きちゃったんだよ!」
小杉B「うるさい。寝るな。寝かせない。」
俺「てかお前、ケータイ出すなよ先生乗ってんだぞこのバスに?」
小杉B「大丈夫だよ!イヤホンだし、
白川Tは前に座ってんだぞ。後ろなんか見ねーよわざわざ、」
俺「………」
小杉B「おい、次は〈自分ROCK〉のライブ見るぞ。これさぁ面白いのがさぁ…」
こいつと隣に座ったこと、そして予想外のこいつの体力。
それが今回バス内安眠計画が失敗した原因だった。
その後ワンオクのライブからお笑いへ移りYouTubeに上がっていたキングオブコントやエンタの神様を見まくった。結局俺はそのバスではまともに寝れなかった。
そうしてバスは京都へ入り、俺たちが今晩から二泊する旅館「石長松菊園」へ着いた。
17:30
それぞれが班に分かれこの旅館で二泊過ごす。
メンバーが一泊目の時とは違うので紹介しよう。紹介と言っても新しく出てくるのは一人だけだが。メンバーは四人、俺、小杉B、三上、そして初登場小野田くんだ。小野田くんの説明はあえてしない。
ただ不幸にも後々彼の存在がこの班を乱す原因となってしまうことだけは先に言っておこう。彼は悪くないのだが。
荷物を置き、例によって旅館のおきまりであるおもてなしのお菓子を食べたら
すぐに集合予定間近になってしまった。こうして二日目の夕食会場へ行く。
18:00
二日目の夕食である。
今回は昨夜と違い丸型のテーブルがいくつもあるのではなく
横長のテーブルがひとクラスに2台ずつ置かれていた。
席順は特に決まっていない。三上は例のごとくクラスの主要メンバーの層へ出かけて行った。俺の左隣に小杉B、前方に島田くんその横に小野田くん、という配置に落ち着いた。我々がここへ来る前に料理はとっくに準備され机に並べられる。
だから俺が席に着く前、食事部屋に入った時から〈なんかあるな〉と認識できた。
〈なんかあるな〉と〈赤肉が見えるな〉と。
それでも全貌が見えるのはやはり席についたときだ。騒然とした。
今夜のメニューは豚肉と野菜の焼き鍋にサラダに椀物に茶そばに桃だった。
そして俺の脳内料理データに当てはまらなかった謎の料理が一つ。
以上だった。
俺は料理の写真を撮るために持ってきたカメラを床に置いた。
そして先ほどの謎の料理について思いを巡らせた。
いったいどんな、なんの料理なんだ?
その料理はガスコンロの上に乗せられた土鍋の中に入っており
中はなんと濁り液だった。牛乳の脂肪と水分が分離しちゃった
あの気持ち悪い液みたいな感じだ。
置かれたカメラ スッ
あれをなんらかの形で後々我々は体内に摂取することになるのか?
置かれたカメラ スチャッ
まさか宿泊客の目を楽しませるために置いた鑑賞物じゃあるまいし。
置かれたカメラ ピッ←スイッチON
え、ホント何?じゃぁ?なんなの一体アレ!?ちょっと怖い。
置かれたカメラ ジー←REC中
あれ?ちょっと待て。横を向く。小杉B俺のカメラで撮影中。
またかよー。もーやだよぉ、この感じ。小杉B例のごとく
ほら?どう?どうする?お前?どうするこの状況?何する?
みたいな感じ出してきてるし、めんどくっせえなぁ。ともかく返してもらおう。
俺「何を撮ってんじゃ、オマエ。バレバレだぞ。」
小杉B「いやぁこれは面白い動画になるぞ…」
俺「何が?」
小杉B「いや、ある人物を撮った…」
視聴者に向けてこの動画が消されないように面白いアピールですか。小杉B。
もうそういうのもいいから返してくれ頼む。
小杉B「クッwwww」
また誰か撮ってるようだ。多分ズームでもして顔をでかくしてるんだろ。
もういいって。それ。早く返してくださいお願いします!まじで!
結果完全に小杉Bの自己満動画1分8秒間を撮り終えカメラは返却された。
返却時小杉Bは見ていいよと言って返してきた。
俺はめんどくさいからそのままポケットに入れたら小杉Bは見てと言い出した。
なんだったんだよ最初の「いいよ」は。
そんで動画を見たら案の定内容は小杉Bが白川Tをどアップで撮ったものだった。
面白い面白くない関わらずその時の俺の心情は先ほどの不快感で満ちていたので当然問題のその動画は面白く感じなかった。
もうホント俺が誕生日プレゼントで買ってもらったカメラを勝手に使うカメラいじりはやめてほしい。これきりにしてください、と思った。
その後おかみさんの料理説明が始まる。
おかみさん「…今日の料理について簡単にご説明申し上げます。まず豚肉の方なんですが…まずガスライターお配りしています。それで気をつけて火を入れてどんどん奥の方に回してあげてください。あの、豚肉は重なったままだと最後まで焼けません。火をつけたらすぐに…フラットに、平らにしてね、焼いてください。…緑のおそばは宇治の名物茶そばでございます、…この後、京名物どんどんお運びしますのでお楽しみください。」
このあと追加で料理が来るのか。やった。最後のセリフしか頭に残らなかった。
しかしその後のおかみの言葉はさらに衝撃的だった。ついにあの謎の料理について言及されたのだ。
おかみさん「続きまして右上に置いてあるお鍋の中に入っている液、豆腐の元でございます。今からみなさんにはご自分の手でできたてのお豆腐を召し上がりになってもらいます。」
豆腐!?豆腐の元か!これ!なるほど!どうりですぐ乳製品の牛乳の比喩が浮かんだ訳だ。
おかみさん「…まず鍋内を沸騰させます。その後私が入れましょうと言いましたらそこにあります銀色のスプーンがついた白い液体、にがりを加えていただきます。入れる際は丁寧にゆっくり入れてくださいね。固まりにくくなり豆腐が出来上がりませんので…」
すごい。豆腐はもちろん京都名物だが今回はそれを自分らの手で作らせ出来たてを味わせるというなんとも楽しい企画になっている。一般人の場合。
そう、おかみさん。残念ながらあなたが思い描くこの後の展開は違う。
みんな仲良く和気藹々と豆腐作りに真面目に勤しむ情景をあなたは期待しているのだろうが、多分それは実現しない。平岡生だぞ?真面目に淡々と進むはずがい。
多少のオリジナリティーとかいって勝手ににがりを入れ出すに決まってる。
この豆腐たちは報われない。つくるのがこの平岡生では。絶対報われないことになる。すくなくとも大西がいるこのエリアは。
PS もうちょい他にタイトル考えつかなかったのかな