wakeupandpresentの日記

いつもは映像作品を作ってます。ここでは西田学くんの大冒険を載せていきます。

「西田学人生初の京都へ行く」第40話(特別話)「水泳部三人のオールナイトはどのように過ぎていったのか」

40話 

 

22:43

 

俺「20分間ずっと撮ってますよ今から、」

一回の撮影で撮れる最大時間がこのカメラは20分なのだ。

だから時々画面を確認して撮り直す必要がある。

俺「三上どこいんだ?」

室内は真っ暗、そこで俺はカメラのセットアップでLEDをオンにした。

しかしそれでも一部が明るくなっただけ。

俺「ちょっと手振ってみて、」

画面にぼんやりと揺れている手が映った。

もしこれが幽霊だったら幽霊さんごめんなさい、三上だと思っちゃいました。

俺は明かりが充分に来てはっきりと姿がカメラに映る範囲、

通称「はっきりエリア」に席をおいた。

 

オールナイト開始から40分。これといってすることもなく俺は自分の布団のそばにある扉に寄りかかってぼーっとしていた。

俺「お、すげぇ、見て。影が、」

俺はちょうどカメラから出る光と向こう側の壁との間に位置していたので

影を使って遊ぶことができた。手の形を変えてうさぎなどに見立てるあの遊びだ。

俺は左手で顔のようなものを作った。三上も何かを影で作ったらしい。なんだそれ。

三上「おっぱいと乳首」

 

影はすべての物体にできる。つまり三上の影も壁にはあった。

横たわってる体勢の影だった。俺はさっき作った顔を三上の影に近づかせていった。

俺「三上くんの頭を~パクリ!」

三上「チッ」

俺「あっ

ゴスッ!

俺「痛ってぇ!」

スライドキックを食らった。

 

俺「こんなんで遊んだの小学生以来だわ。」

三上「キモいわ西田、」

まぁな。15歳がすることじゃないよな。わかってる。分かってはいるが

仕方がない。こんなヒマなんだから仕方がない。

俺「今度はめっちゃでっかい龍つくろ。」

俺は両手を使いなんとなく指をキバに見立てた龍を作った。

これで三上もおしまいだ。

俺「三上くんをパクリ!」

すると中原は手だけでなく腕のうねりまで使って龍の全体を表現した。

さすがに勝てない。撤退である。壁場に移る影ではそんな壮大な戦いが繰り広げられているが実際にやっている側の人間の様子を見るとかなり痛々しかった。

しかしそんなことは気づかずに俺はもちろん三上までもスマフォを置いて影を作り始めた。戦いは激化。より一層動きを正確にしなければ。俺は影の動きに集中した。すると急に腹部に衝撃が走った。ガスッ、三上キックだった。

三上「本体を攻撃。」

こらこらこら。

俺「本体攻撃すんなよ、操り師を攻撃するのはいけないんだぞ、大人のルールだぞ。」

三上「「おらぁ~」とか出てきたら、いきなりみんなで

「わぁ~!本体攻撃ぃ~!」みたいにww

俺「見ろ!はっ!謎の生物だ!」

俺はまた両手を使い生物を作った。

俺「これカニに見えるな、」

俺「もっとキモい生物を作ろ

俺は人差し指から小指までを大きくウェーブさせウネウネ感を作った。

俺「うわっキモくなった

ここでいままでスマフォをやっていた小杉Bが顔を上げた。

小杉B「何やってんの?」

完全に人を蔑むテンションで出たセリフだ。

さっきも言ったようにこの遊び

実際やっている人間は楽しいものだがその姿を見る第三者側にとっては苦痛以外の何物でもない。確かに出てもおかしくないセリフだった。しかし俺は構わず小杉に言った。

俺「ねぇ壁みて壁。田中、」

その時壁では三上が剣みたいな物を作り出し戦いが行われていた。

ブシュッ! ディシッ!

三上はこの効果音を全部自分の口で出している。

三上「死ねっ!」

三上くんノリノリである

俺「タンカンツンク、タンカンツンク、タンカンツンク謎の異生物の足音」

三上「シュッ!」

三上の一刺しが決まった。俺が召喚した異生物は2つにぱっくり割れた。

小杉B「なんで三上もノリに乗ってんの

三上「つまんねーからww

さすがの小杉Bも三上に引いてしまっている。

三上「なぁこれでアートやろうぜ。」

俺「お、アートやる?」

俺「いや、でもさこの影って見えないんだよね

俺はカメラを持ちいろいろ試行錯誤した。

三上「映ってる?」

俺「ちょっとやってみて

手を動かす三上。

俺「分かった!あ、ごめん、こっちからやってみて?」

手を動かす三上。

うまく影が映らない。

俺「えぇっ?えぇっもっかいやって?」

三上「こっち?うん?

俺「いや、ダメだ。この(カメラの)光があたった後ろに来るじゃん?影。だからこれ撮れないんだよお前の手で。」

光と撮影道具を常にどうやっても同じ場所から発信していることになるのだ。

これでは三上の手の後ろにある影を撮影することはできない。

三上「もう一個光?」

俺「もう一個光無い?」

三上「あ、あるぜぇ。」

三上はそう言うと小野田くんが寝ている方向をさした。

彼が指していたのは宿泊部屋に必ず一つ常備されている

非常用懐中電灯のことだった。

俺「お、これ行けばあるじゃん。」

俺は慎重に小野田くんをまたいで懐中電灯に近づいた。

懐中電灯は壁に設置されていた入れ物の中にすっぽりと入っていた。

俺「これ使っていいのかなぁ

「常備用」、「引き抜くと」」説明文を読んでもわからない。

多分こっからとっても警報が宿泊場全体に響き渡るようなことにはならないだろう。

俺「ちょっとやってみて、これで。できる?」

三上「ヒュンヒュン!」

三上の手の影が無事映った。

俺「あ、行けるね。」

三上「あ、明かり全部消すか、一応。」

俺「おぉ」

天井のLEDライトは4段階あり今は3段階目だった。

これを4段階目「消灯モード」にするのだ。リモコンを持つ三上。

三上「えーっと消灯消灯消灯あれ?どこに消灯あったわ、消灯。」

 

いよいよ三上 作・演出・出演のアート作品が披露される。撮影は俺だ。

俺「あ。なんだか出てきたぞ?お、一本になった。おあ、ゼロになった。」

ちょうど布団の影が山のようになっている、

そのてっぺんで三上の指が減ったり増えたりしてる。

俺「お、何がなんか物語が始まりますね

三上の指は山を下山していくが。

三上「指曲がんねぇ!そっちの方向!」

これ以上腕を右側に伸ばすことができず三上は山を下山することができなかった。

しかもぜんぜん影が見えない。正直全然見えない。

俺「これキッツイなぁ。そうだ、明かりを近づけよう。」

持つのがめんどくさくて机においていた懐中電灯を手持ちで照らすようにした。

光から離れれば離れるほど影は薄くなる。そこで元の光源を近づけることにする。

俺「近いほうが絶対やりやすいでしょう、あ!近い方がいい!」

一気にくっきりだ。それでは仕切りなおしだ。

俺「あ、いいね。手がアートですね手アート。ハンドアートといいますね。」

手の影が滑らかに動く様子はまるでクラゲが海に浮かぶ様子のように見え幻想的である。しかし観客、撮影、ライト照らし、この3つを両立する器ではなかった俺はライトをおろそかにしてしまいいつの間にか三上の顔にライトを当てていた。

三上「おい動かすな!」

すいません。

 

するとここで小杉が参加してきた。新しい手が右から出てくる。

俺「あ、なんか新しい手が、」

小杉の手はどんなアートを披露してくれるのか。

小杉の手はちょうどフランクフルトが入るような隙間を開け握ったような形になっていた。そして次第にその手は上下に高速移動し始めた。

俺「あぁ、違う、それ違うお前、何やってんだオマエは。」

小杉Bwwwwwwwwww

一番アートと程遠い行為を披露しやがってオマエは、

もうオマエにスポットはあてん。

そうしていると再び三上がアートを始めた。

三上「チョット指でファイブ、フォー、スリーツーワンってやるわ。」

俺「あ、OK。三上アート。題名は「タイム・リミット」です。」

すると性懲りもなくまた小杉Bが画面に入ってきた。

さらにカメラのフラッシュをこちらに向けてきた。やめろバカ。

俺「眩しっ、バカ。ほらっ、もう三上の芸術がはじまるんだから。」

そうだ。芸術が始まるんだ小杉、お前は黙って見てろ。それか寝てろ。

三上がカウントダウンをする。手が五本、四本、三本

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5…4…3…

すると画面の真下から中指を突き立てた手が入ってきた。また小杉である。

しかも今度は三上の演目の最中である。

俺「邪魔だなぁお前ホント

 

三上「もうなにやんの?」

演目のネタが尽きた三上。リクエストをしてみる。

俺「変な生物作ってよ。」

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もうちょっとだけリクエストしてみる。

俺「この本体の手の部分が写ってほしくないんだよね

三上「いや、ソレは無理だよ

あ、駄目だった。

その後の三上は「男女の出会い」とかを指で演じていたがエスカレートしてしまい

結局小杉Bと二人で変態劇にすり替わってしまった。

 

2317

問題が起きた。

小杉Bが眠りに落ちた。

問題はそこじゃない。

俺の布団まで使って横に寝ちゃってるのだ。

オールナイトといったって24;00を過ぎるまでである。

そこを過ぎた瞬間俺はすぐ寝る予定なので今現在の小杉Bの状態が40分続けば

俺は今夜寝れずに四日目を迎えることになる。

続きそ~~~~……四十分ずっとこのままでいそ~~~~~……

これはよくない。三上にカメラを回してもらい俺は小杉Bを自身の領域からどかすまでの動画を撮り始めた。

小杉Bを見る。布団に直角だそんなんだから無駄にスペース取るんだよ、俺のところにまで来やがって。どきなさい。三上と俺でツンツンする。特に三上の方は腹んところを刺してる。小杉Bがめっちゃ嫌そうな顔をして寝返りをうつ。

俺「いっつも俺こういう気分なんだよ。(オマエに)やられる時。」

そうなのである。一日目の夜のことを思い出してほしい。ツンツンどころではなかった。目を閉じて視界が無い状態で突如掛け布団が横に引っ張られ消失したのだ。

俺はこんな生易しくなかったぞ、小杉、それなのにオマエなんだその顔は、

こっちを向いてさ、阿修羅みたいな表情しやがって。そいでもって近づいてきやがって、おれの首根っこ両足で締めつけやがって、あれ苦しい。

キツイキツイキツイキツイ!

結局小杉Bは俺の陣地から一ミリも出なかった。

もう諦めることにした。

 

基本的に寝転がったままの小杉。夜がふけるとともに小杉の防御力、行動力、攻撃力、いろいろなスペックが低下し始めてきた。

そこをみはからった俺と三上は当然いたずらを考える。しかしこの二人が話しあうと変態なことにしかならない。案の定動かない小杉を勝手に役者に組み込んだ即興茶番劇を行うことになった。内容は地球外から突如襲来した生物=小杉に地球代表者=俺がどんな目的で来たのか、友好的な関係は築けるのかといったことを探るためにコンタクトを試みるという内容だ。で、その地球人と地球外生命体とのコンタクトという歴史的瞬間をカメラマン=三上が収めているという設定だ。これなら小杉Bが一切喋らななかったり、劇に参加してくれなくても宇宙人という未知の生物という設定によりコミュニケーションの疎通ができないという設定で成り立つ。

この劇の一番の見所は小杉が未知の物体という設定をいいことに演者西田が普段できないようなことをしまくるところ。この京都旅行始まって以来

初めていじる側、いじられる側の立場が逆転するのだ。小野田くんが眠ってから56分。2326分。

その劇は静かに開演した。

続く

 

PS 今回はいつもより長く乗せてみました。

当時は一週間に1話だったので、この回で京都旅行から1年が過ぎました。

ついに最終日に入りかけるので、もうちょっとお付き合いお願いします。

「西田学人生初の京都へ行く」第39話「点呼の際うちの担任の先生はなぜ面白かったのか」

39話

 

2202

 

10時点呼時間だ。担任が各部屋を回り最終チェックを行う。

白川Tが例によって確認のため我々の部屋にもやってきた。

しかし班員確認をした際三上がいなかったので連れに帰ってくるといい

一旦部屋を出て行った。

ほどなくして先生が戻ってきた。

俺「どうしたんすか?」

白川T「え~っとぉ

俺「三上いました?」

白川T「三上いない。」

いなかったのか。あいつ大丈夫か、

青春野郎のあいつのことだから今夜はここじゃなく

違う部屋で寝るっていうこともありえるぞ!?

白川T「荷物はどうなってる?荷物の準備はできてるの?袋に詰めた?」

郵送する大きい荷物のことだ。

最後に大きなビニール袋を施すのだ。

ただ俺はその施し方がわからなかったので先生に質問することにした。

俺「これ上下どっちでもいいんすか?どっちが下で上?」

荷物を袋の中に入れるのか、かぶせるのか、そこのところが俺はわからなかった。

白川T「あの上から被せんの、」

俺「これをこう?あぁはい

白川T「うんうん。」

小野田くん「キャリーバックはどうするんですか?」

白川T「キャリーバックも同じ。」

 

白川T「明日は6時起床です。」

俺「早いっすね。」

白川T「うん、早いよ、」

白川T「で、6時半になったらぁ、下に荷物を持って行って、あのー荷物出しね、

荷物出しが終わってから朝食。」

俺「は~い。」

 

白川T「え~と健康状態はどうですか。大丈夫ですか。」

明らかに大丈夫じゃない人間が一人いたので班長の俺が報告。

俺「小杉くんのお腹が

小杉B「僕ちょっと今日腹痛かったです。」

白川T「あぁほんと晩飯どうした?」

小杉B「いや、普通に食べました。」

俺「いや、ちょっとあのおふをちょっといっぱい食べちゃったらしいです

白川T「おふ食べたあ、おふ食べ過ぎた?」

俺「汁を吸ったおふをいっぱい食べて

白川T「あぁ~結構お腹もたれるかもね

俺「そうなんですね。それが心配。」

白川T「あぁーでもずいぶんおふあったねぇ

全員ここで笑った。普通の教師ならこういった個人的なコメントをしないからだ。

当然できるだけ早く仕事を済ませたいと思ってる。でも白川Tは違うのだ。

自分の話を突然しだしたり、相手のフリに乗ってくれたりそういう普通の教師よりもパーソナルな部分が面白いのだ。白川T今回もいい感じです。

白川T「俺もなんかこう、嫌におふが入ってんなぁって」

俺「吸うんすよね汁を、」

白川T「そうそうそう!うん

白川T「俺こんなにいらねぇだろって思ったんだけども

一同は大爆笑。白川Tはそう言い残して帰って行った

 

2215

 

完全就寝の時刻を過ぎた。

三上は先生が帰った10分後ぐらいに帰ってきた。

その後俺は三上にさっきの会話を撮っていた動画を見せ三上を爆笑させた。

三上は覚えていたようだ、俺の録音機能つきの目覚まし時計を使い

白川Tの声を収録して目覚まし音にしようと言った。

俺はトイレへこもりカメラの音が出るスピーカーと目覚まし時計の音を拾うマイクを最新の注意を払いできるだけ音質良く収録した。

俺「できたぞ。」

耳をすませる三人。

ぴっ。

録音音声〈俺こんなにいらねぇだろって思ったんだけども

先ほどの感動がよみがえる。また全員は爆笑した。

これが明日の6時に再生される。起きるのが楽しみになった。

 

今日はいわずもがな修学旅行の最終夜である。明日の夜には俺は自分の部屋で寝ているだろう。だから最終日ということで俺は夜更かしをすることにした。

誘いを受けたのはもちろん水泳部二人から、まぁ部屋の外に出て自動販売機で飲み物を買いに行くレベルのことをしようとしているわけではない。あくまでこの部屋内でただわいわい寝ずに起きようと思っているのだ。先生に迷惑はかからない。

班長の面目も保たれる。

俺は学校行事の就寝時間を破りオールナイトすることを決心した。

 

22 30

 

メンバーは三上、小杉B、俺の三人。

小野田くんは寝てしまっていた。俺たちは仲間はずれとかそういう考えで小野田くんを起こさなかったわけではなく、

ただ寝ている人を起こすのが忍びなかったので起こさないことにした。

しかし三上は三人だけのオールナイト会が始まるやいなや他の部屋へ逃走。

おそらく就寝前他の部屋の生徒と段取りを決め会う約束をしていたのだろう。

はやくも小杉Bと二人になってしまった。

俺は一応念のためTEDが見れるかどうか聞いてみた。

小杉B「あぁ~なんかネットつながってないと見れないらしいんだよ、

iTunes Storeができないからごめんな。」

俺「いや、別に全然いいけど、」

だよな。見れたらお前から言ってくるもんな、まぁ仕方がない。

その後小杉Bは自身の布団の中で携帯ゲーム。俺はすることがなかったので暇つぶしにカメラを回し始めた。

あぁーこんななんでもない動画撮っちゃうから無駄に容量食うんだよなー、節約しないとな、明日もあるしな、

俺は一旦カメラの電源を落とした。しかし俺はふと父親から旅立つ前に言われたことを思い出した。

「学、カメラ結構取るでしょ?じゃぁもう一枚メモリ持って行きなよ」と。

俺は思い立ったように自分のバックの側面を開いた。完全に忘れていた。そこには

16GBメモリースティックが未開封で存在していた。このカメラでは大体1GBで最高画質の動画10分が撮れる。つまり16GBなので160分動画を回せる。

もともとカメラに入っていたメモリーの容量分も合わせると撮れる時間は三時間以上になった。そうか。全然惜しむ必要なんてなかったんだ。小杉Bが撮った変な動画も、間違えて撮っちゃった三秒くらいの動画も、手ブレがひどくて視聴者のことをまったく考えず撮った動画とかも、全部全部消す必要はなかったのだ。

俺は決心した。今から俺が寝るまで動画撮りっぱなしにする。

いままで節約でストレスが溜まっていた。だから京都旅行では実際雨が上がったあとにも躊躇してしまい動画はあまり撮らず写真で我慢していた。

そこにこの新品のメモリーの登場だ。運命のタイミングとしか言いようがない。

ただ忘れてただけだろとか言う奴はちんちんが取れてしまえ。

俺は思いっきり動画を撮りたくなったのだ。視聴者とかカメラマンの常識とかどうでもいい。ただ撮りたくてカメラを回した。

当時の自分がそんな決心をしたおかげでこの三日目の夜から就寝するまでの間はとてつもなく動画が撮られていた。したがってここから先はこの京都旅行始まって以来の忠実さ、本当のノンフィクションで描かれる。

お、三上も帰ってきた。ちょうどいい。さぁ始めるぜ。

ピッ

 

PS次回は特別編です。いつもより長い文章を送ります。

「西田学人生初の京都へ行く」第38話「小杉Bに見つかった時前川はどうなったか」

38

 

2000 決着の時まで残り32分。

 

俺「じゃぁ僕は見送り人として後ろからついていきましょう

小杉B「腹痛い

時折お腹をさすりながら小杉は発する。まだ完全に戻ってはいないようだ。

小杉B「まぁ結構治ったわ。」

おそらく強がりだ、体調はトイレにいた時と何ら変わってない。

小杉BD組ってどこ?四階?」

前川はD組だ。完全に狙いに行ってる。

俺「四階じゃないかなあ、でもここ島田くんだね

E組の部屋は二階に分かれているのだ。

俺「小杉~前川って名前が三文字だから表記でわかりやすいぞ、」

小杉B「おぉ、そうだな。」

部屋の外にはここに泊まっている生徒達の名簿が

紙で印刷して貼られている。ほとんどの生徒の名前が2文字なのに対して前川の名前は龍之介で三文字、表記すると一人だけ名前部分が長くかなり目立つ。

この方針で俺たち二人は部屋を回っていった。

2文字、2文字、2文字、2文字

足を止めず流れるように廊下を歩き確認していく。

しかし前川は見つからなかった。

 

2011 決着の時まで残り21

 

その後いろいろ巡り歩き回った。G組、E組、C組。

どれも前川が所属していないクラスの部屋が続く。

しかしD 組は見つからない。名前もヒットしない。

小杉B「違う、ここ全部F。」

俺「なんか疲れてきた。」

探し始めて10分。もう疲れてきた。

小杉B「俺らのところにさ水泳部集めようよ

前川を捕まえた後の話か、そんなことを計画してるのかお前は。

俺「そんな体調で無理だよお前は君は休んだほうがいい。」

そうだ。腹をさすりながら言うセリフじゃないぞさっきの。

小杉B「俺は大丈夫。」

嘘つけ。

 

2025 決着の時まで残り7

 

もしかしたら部屋にはおらずロビーでお土産を見ているのではという俺の意見により俺たちはロビーに来ていた。俺は荷物発送用の票の記入説明のホワイトボードを見たり、小杉Bはお土産を見たりして潜伏したがいくら待っても前川は姿を現さなかった。俺たちはロビーを後にした。俺は再びカメラを回し始めた。

ロビーでカメラを回すと怪しまれるので動画は一時中断していた。

しかしロビーの階段を上りながらおれは再びカメラを起動させた。

俺「後編ですね、多分。もしかしたら中編、処刑編といってもいいでしょう。」

小杉B「あ、つっちー。」

俺「おっと、処刑人小杉は友達に聞くようです。」

小杉B「聞いてみる。」

俺「はい。聞いてくるようです。」

小杉Bは友達に聞き始めた。

俺の知らない友達だったので俺は単独で他の場所を捜索することにした。

 

小杉Bは本当に前川をやる気なのか。水泳部でも一二を争う仲のいい前川を。

ほかの見ず知らずの人ならまだしも、親交も深くお互いよく知ってる相手だぞ。

友達でさえ彼は容赦ないのか。もし本当にそうならもう小杉Bはちょっと意地が悪いけど優しいところもある人とかいう生ぬるい表現では表せない。

悪。

悪人となってしまう。己の私利私欲のためか、それとも復讐しないと小杉Bのキャラとして顔が立たないからか、いずれにせよ小杉は自分の意思で自分のために前川を殺そうと行動してる。実に悲しい。修学旅行が始まるつい四日前まではあんなに笑い合っていたのに。

「おばキヨ」ひとつでこれほど仲たがいするのか。

小杉Bが実際に前川を見つけたとして、どうするか。

その後の行動により彼の運命が決まる。

今この事態を知っている第三者は俺だけ。

俺が小杉Bの運命を変える。彼をこれ以上誤った道に行かせたくない。

ちっぽけな力だ。小杉Bに両手で挑んでも腕相撲勝てなかったちっぽけな手の力だ。

それでも俺はこの手で小杉Bを救う。絶対に小杉VBなんかにはさせない!

 

2031 決着の時まで残り1

 

 

結局考えてるだけで何にも見つからなかったので、小杉と合流しようと階段へ戻る。

俺「小杉~小杉、小杉~?」

すると小杉Bはなにやら指で何かを表したまま階段を上ってきた。

右手は2本、左手は5本指を表していた。

俺「えっ?」

小杉B252252号室。

小杉はついに前川がいる部屋番号を知ってしまった。

俺「やばいです。

処刑人小杉に居場所を知られてしまいました。前川、全くの無防備です。」

部屋の番号がわかってしまえばしおりで居場所がわかる。確認したところ部屋はこの階だったそろそろ決着がつく。

小杉Bは罪を犯すのかはたまた前川を許すのか

そして小杉Bが廊下の角を曲がると、前川がいた。

 

203152 決着の時まで残り8

 

小杉Bはなんの喜怒哀楽の感情も出さず無表情で足を速め前川の肩に手をかけた。前川は何も言わない。明らかにさっきトイレでやったことの報復だってことはわかってるはずなのに。そうか。受け入れたのだ。前川は全てを、この先起こることを全て知ったうえでそれを受け入れたのだ。

運命を受け入れた人間に訪れる境地なのだ。

はたして彼は罪を犯してしまうのか?小杉VBになってしまうのか!?

しかし前川がなにやら話をし始めた。

前川「ちょ、俺今ね先生に怒られたんだよ

俺「えまじで?」

前川「やばいめっちゃねぇ落ち込んでるよ俺は

どうやら前川はなにかを起こして先生に怒られてしまったらしい。

そうか。それで小杉Bに会った時も無反応だったのか。

普段は叫びまくって全力で抵抗するはずなのに。

運命を受け入れた人間の境地とか言っちゃったけど単に怒られて小杉Bを相手にするテンションじゃなかったというわけか。

すると小杉B一応怒ってる感を出す。完全に今の前川に困惑してるが出す。

小杉Bお前俺になにしたか分かってんのか。」

前川は答えない。答えられないのか前川。もうこれはダメだ。

今日の彼はもうダメだ。報復どころの話しじゃない。

小杉Bもこんなテンションの前川には手を下す気持ちは沸かなかった。

いつものテンションが高い前川が必死に抗う姿を楽しむつもりでいたからだ。

こんな状態じゃどうしようもない。

俺「………

小杉B………

前川は首にかけられている小杉Bの手を嫌がるどころか頭を置いてうなだれてしまっている。小杉Bもその様子を見てさすがに察した。

今日の前川は十分に罰を受けた、と。

 

2100

 

最後の班長ミーティングだ。例によって本日の班長も俺なので俺が出席することになる。今回は遅刻しなかった。昨日ついた時は最後から二番目くらいで若干バツが悪かったが今日はそんなことはなく悠々と班長が揃うのを席で待てた。

そしてミーティングは始まった。主に話の軸になったのは旅館での過ごし方のマナーに関してだった。どうやらこの旅館に来て二日目にしてついに平岡生の裏の顔が明るみになって議題に出たようだ。まず数学の先生が話し始める。

先生は冷静に旅館内各地で先生に生徒が捕まり叱責されているという現状を報告。

注意を促した。

我々の班は外へ出たり温泉で水を大放出しながら戦争したりと精力的に活動していたが先生に怒られるようなことはなかった。

つまりは今書いてきたこと以上のことを他の平岡生は行い先生に叱られたということだ。先生どれだけ寛大なんだ。

数学の先生「僕たち、君たちを信用してます。だから夜の見回りもしてません。

してないでしょう?ライト持って部屋の外でてる生徒いないか徘徊するとか。

先生はね、信頼しているんですよ、あなた方のことを。だから信頼されている君達は信頼している側の気持ちを考えて、それに応えてください。」

その後バトンタッチ。

(マラ石の真実を教えた方じゃない)英語の先生が話し始める。どうやら先生の中で今回の平岡マナーに関して一番の被害者らしい。

英語の先生「まぁね、個人的な話になっちゃうけども、少し先生怒りすぎたとは思ったよ。」

まじか、英語の先生が怒ったのか、想像するだけで泣きそうになる。

英語の先生「でもね、それ位うるさかった。そこだけはC組のみんなはわかってほしい。」

知らないぞその話、なんだどんなことが起きてたんだ。

てか前川も怒られたよな、何が起きてたんだ!?

色々知りたかったが結局ミーティングで語られたのはマナーに関しての

注意の呼びかけだけだった。

その後部屋に帰ると珍しく全員がいた。珍しい理由は三上が常にどっか他の部屋へ回って青春してるからだ。

水泳部二人にミーティングで言われたことを報告した。

俺「でも、英語の先生キレるなんて相当だよな、なにやったんだろ

三上「あ~C組の人英語の先生が隣の部屋にいるのに

枕を壁に当てまくったんだって。」

なんで班長よりお前の方が知ってるんだ。青春野郎の特権、絶大な情報網。

 

続く

「西田学人生初の京都へ行く」第37話「水泳部はどうしてこんなにもいい人たちばっかなのか」

37話

 

19:15

 

部屋に戻る一行。部屋の中央に置かれていた机は見事に端に移動しており

四つ白い布団が敷いてあった。例によって場所取りが行われる。

布団の場所は縦に三つ、横に一つ置かれていた。

場所取りの結果縦の三つには左から三上、小杉B、小野田くんが寝ることになり

横の一つで俺が寝ることになった。

この三日目は言うなれば修学旅行最後の夜。

つまり明日までに準備することが非常に多い。

荷物札を記入したり、着替えを袋に詰め圧縮したり、お土産をこの旅館で買えるのも今日の9時まで。旅館から出発する明日の815分まではノンストップで予定が詰まっている。つまり実質ここで土産を買うのも今日。しかし土産は強制でもないし、着替えはそもそも一日分しか持ってきていない人も中にはいるかもしれない。

つまり今上に挙げたやらなければいけない項目は250名の中三平岡生全員に共通することではなく、それぞれなのだ。だからしおりにはお土産を何時何分に買うとかいちいち行動表に書けない。だからしおりもこれまでの二日間と違い行動予定表がスカスカだ。しかし俺の場合今挙げた上の項目すべてが該当していた。

しおりのスカスカさに反し実は今夜が一番忙しい夜なのだ。

 

しかし言ったそばから俺は布団の場所決めのあと小杉Bによって他の水泳部仲間の部屋を訪問することになってしまった。まぁこれは自分も行きたかったしあまり抵抗はしなかった。まず小杉Bが向かったのは中学水泳部所属にして時期部長

前川のところだ。前川も能勢レベルに凄い男だ。

スポーツがなんでもできてしまい野球のうまさには同じ時間を生きてきた人間とは思えない。年をごまかしているとしか思えない。

さらにうまいだけじゃなくてスポーツに興味を持っている。俺は自分が水泳部なのに世界大会に出た水泳選手を「何も言えねぇ」の北島康介選手しか知らない。まさに「なんも分かんねぇ」状態である。

水泳でさえこの程度の俺はもちろん野球やサッカーやボクシングなどの試合を一回もテレビでフルで見たことはないし知識もない。

阪神と巨人も変化しない単語だけで年々変わる戦力やメンバーなんてものは知らない。そんな無知の俺とは対照に前川は水泳の世界大会は毎回見るし選手も何人も知っておりさらに自分が尊敬している点をそれぞれに持っている。

プロ野球スピリッツというゲームソフトを持つほど野球は好きであの

野球マニアの小杉Bとも互角に話し合える。スポーツにおいては全てに精通していると言っても過言ではない。そんな前川だから友達も多い、クラスの主要人物は大抵がスポーツ好きなのだ。見事にスポーツという盛り上がる話題で友人関係を作っていく。それも全然押していくそぶりなく嫌みのない作り方。

しかし俺が凄いと思うのは能勢にも当てはまるがそういった凄い点を持ちながら目立ちたがらない、いじられ役に回るという点である。

なんだろう。俺と同じいじられる側だからだろうか。一概に比べられるものではないが忍耐の面ではおそらく小杉Bよりも凄いと思ってしまうのだ。

豆知識だが能勢は主に小杉Bがいじり、

前川は主に三上がいじるという構図だ、ただし例外はしょっちゅうある。

そんな前川を俺たち二人は尋ねた。その後前川と小杉Bと俺で地下一階のお土産売り場を見に行くことになった。

 

1947

 

結局地下一階の土産売り場には買いたいものはなかった。

だがまだロビーである一階にもお土産場がある。そこも見ていかないと。

しかし小杉Bはそのまま前川を地下一階から自分の部屋へ連れて行こうとする。

しかもなぜか前川の首を絞めながら。

前川「痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ」

小杉B「俺の部屋に来て、」

前川「いや、まずロビーいかねーと

小杉B「え?」

早乙女「なんかもらうって言ってたじゃん、」

田中B「あ?」

前川「なんかもらうって言ってたじゃねーかよ、」

小杉B「なんかもらうの?」

前川「ロビー寄っていくぜ、みんな、」

小杉Bは方向転換して階段を下り始める。引き続き前川を両腕で絞めながら。

俺「いや、ロビー一階でしょ?」

前川「あ、そっか。こっちから行けるのか。」

田中Bは再び方向転換。

その後小杉Bの拘束は外れたがロビーに行くまで前川は他の人からズボンを後ろから降ろされたり大変な目にあっていた。

結局何をもらったかはよくわからないが俺はこの時にロビーにあるお土産場を覗いておいた。この旅館のお土産はまだ買っておらず今日が最後なのでとりあえず

お菓子を買っておいた。餅系の甘菓子である。パッケージにここの旅館が写っているレベルのオリジナリティーだが買っておいた。

部屋に戻る。小杉Bは腹が痛いとトイレに鍵をかけて閉じこもってしまった。

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おふのせいだ

俺は先程言っていた項目を果たすことにした。

まず着替えを圧縮することにした。

最初にもう着ない服を袋に入れ空気を抜く圧縮作業を行う。

持ってきたパジャマのズボンは今夜使うはずだったが、明日の朝着替えるため一度封を開けてパジャマを入れ再び圧縮するのが面倒くさかったので今日は四日目のズボンを履き寝ることにした。空気を抜くために様々な行動をとった。

足で踏みつけたり、かかと落とししたり、ごんごんちゅうをやったりとかした。

 

19:53

 

かなりシワが出てピチピチになり始めた頃に前川がうちの部屋を訪ねてきた。

前川「あれ?小杉は?」

俺「トイレ、なんか腹痛いんだって、」

前川「俺はなぁ、西田、小杉に復讐してやるよ、」

首を抑えながら前川は言う。相当痛かったらしい。

俺「まじか、今トイレいるよ。」

前川「言ってやるんだ殺されるけど、俺は逃げ切ってみせる

何か小杉の嫌がる言葉を発してストレスを解消するつもりらしい。

前川は鍵がかかったトイレに近づきゆっくりと息を吸った。

そして

「おぉ~い!おばキヨーーーー!!!!!!!!」

説明しよう、「おばキヨ」とは。キヨとは彼の名前の頭文字、すなわち小杉Bのことを指す。そしておばとはおばあちゃんの略、つまりおばキヨとは小杉Bがおばあちゃん大好きな熟女好きであることを示す単語である。

いやこんな悪口一つで釣り合わないだろう前川、せめてコインでドアを開けて便座に座った小杉Bの羞恥心溢れる顔を拝むぐらいしないと

と思ったが小杉は。

「ウォオィッ!!!」

ブチ切れだ。お釣りがくるぐらい効果抜群だったようだ。

前川はすぐに逃げ出す。

前川「うわぁあ!怖い!怖い!怖い!」

ドアから一目散に逃げていった。

一連の事件を見ていた三上は大爆笑。俺も面白かった。

肝心の小杉は静まり返っている。トイレにいるので姿が見えず頼りになるのは音だけ。しかし何も発しない。相当にお腹の調子が悪いのだろう。さっきの怒鳴り声で

かなり声帯にダメージを負っているようだ。

三上「閉まってるwww…

俺「これが空いた時野獣が解き放たれるのだ

小杉B「めっちゃ腹痛いんだよ

俺「なんか言ってます www

三上「前川www終わったなwww

俺「なんか前川が言ってたけどどうすんの?」

小杉B「俺出るまで拘束しておいて、」

三上「いやもう逃げた、」

俺「俺ら捕まえる術なかった、ヒマ、」

小杉B……いいや。」

俺「あ、もういいんだ。」

なんとあれだけ喧嘩を売った前川に小杉まさかの許す宣言!

あの小杉が何の仕返しもしないなんて、これは緊急事態だぞ。

相当に小杉は腹の調子が悪いのだろう。声も弱々しい。

俺「彼は今弱っている

いつもの小杉でないことだけは確かだった。しかし。

 

20:00

 

小杉B「取っ捕まえる。」

俺「誰を?」

小杉B「前川を」

やはり許していないようだ。やはりいつもの小杉のようだ。

小杉B「半殺しにしてくる。」殺意の目だ。

前川と小杉B。始まりは同じ水泳部、

前川のもつプロ野球スピリッツでは楽しそうに対戦プレイをし、

野球の話ではいつも盛り上がりそして笑い合っていた。

正義と悪はまだひとつのままだった。

いつ間にか違(たが)ってしまった二人。一人は相手を憎み、一人は相手を恐れ逃げ続ける。これは彼の決別の物語。小杉Bが部活仲間さえ手にかけてしまうという

悲しき物語。本当の悪。小杉Bが小杉VBVery Bad)になる物語。

俺にはどうすることもできず、ただ記録する他なかった。俺はカメラを回し始めた。

そして祈るしかなかった。かれがもうこれ以上過ちを犯さないことを。

 

PS新キャラ前川くん登場です。

そして小杉Bがやばいです。この時はガチギレしてましたからね。

ここからはそんな登場して一話の彼を執拗に追い詰める小杉VB編が始まります。

「西田学人生初の京都へ行く」第36話「小杉Bへの返答について何を選べばよいのか」

36話

 

俺は引き続き小杉Bに冷水シャワーを当て続け小杉Bは苦戦していた。

必死に自分の持っている洗面器でこっちに水をかけようと努力するが

シャワーによって視界が塞がれているのでもうそれどころではなかった。

しかし目の前で相手にしているのは戦術のプロ小杉B

家では常に親と口喧嘩、アホ、馬鹿などの口論が絶えず

母はママ友に小杉Bの話題を出す時にBのことをなんの躊躇もなく「うちのバカ」という名前で話題を展開していくらしい。

俺より何倍もワイルドな家庭環境に育った男だ。

どんなことをしだすかわからない。次の瞬間小杉Bは動いた。

何をするのかと思えば俺側にある洗面器を奪い自分の持つ洗面器とふたつにしたのだ。そしてその一つは俺に水を浴びせる攻撃用に、もう一つは自分の体を冷水シャワーから守るための防御用にしたのだ。洗面器とシャワーが激しくぶつかる音がする。ビタタタタタタタタ!うぉー!すごい音だ!どんどん小杉Bが洗面器をシャワーに近づけていく。ジリジリと迫っていく小杉B

あいつシャワーの元栓を止めるつもりだ!くそ、そうはさせるか。

俺はシャワーの水圧を最大にした。

超水を無駄にしているが果たしてどちらが勝つのか。

俺「うおぉおおおおおぁああああああああああああ!」

小杉B「おぅうううぅらぁああああああああああああああ!」

バシュッ!小杉Bが持っていた洗面器が水圧に押されて吹っ飛んだ。

小杉Bの片手が水圧に絶え切れず洗面器の角度を少し変えてしまったのだ。

そのおかげで一気に洗面器は押されその結果洗面器は飛んで行った。

勝ってしまったが俺は小杉Bが怒り出すんじゃないかと心配していた。だが小杉は

小杉B「もうやめよう。」と素直に戦争終結宣言をした。

俺「わかった。」

再び頭を洗おうとする俺、視線を前の鏡に合わせた途端。

バシャーーーン!思いっきり水をかけられた。

なんてやつだ。しかしこの戦争のおかげで小杉B俺共々に体温が急激に低下していたため、小杉Bが髪を洗った後そのまま外に出る宣言を撤回してくれたのが唯一の救いだった。我々はもう一回お風呂につかりじっくりと体温を温めた。

結局風呂はこの三回で最長の30分入っていた。

俺は目標よりは少ない30分という時間に結果的には満足した。

風呂の回転率もあり着替え置き場に自分の服をずっと置き続けていることに罪悪感を感じたのだ。

 

18:30

 

結局風呂には30分しか入れなかった俺。

こんな時間までどうやって暇を潰したのか。

気にはなるが例によって資料が不足しているのでここに至るまでもカットさせてもらう。というわけで修学旅行最後の夕食である。

位置情報は左隣に小杉B、向かい側左に小野田くん、向かい側右が島田くんといったところだ。そして最後を飾る夕食メニューは最大にして最強。すき焼きだったのだ。

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大きな鍋が中央に置かれておりその両端には野菜、肉とそれぞれ部門別に皿が置かれていた。

野菜は様々な種類が勢揃いで置いてあり、

肉はオール豚肉でこれでもかというくらい皿に盛り付けられていた。

野菜の皿にはこんにゃく、おふ、しいたけ、白菜、豆腐、緑色野菜などがラインナップしていた。いただきますの前に先生による恒例のお話タイムがあった。

内容は明日に向けてのスケジュール予定確認。銭湯での忘れ物についての注意、

などだった。こうしていよいよいただきますの時間になった。

「いただきます!」

俺はまず野菜から攻めていった。白菜などを鍋に入れて食べた。

美味しかったがかなり味付けが濃かった。この汁を飲んだりでもしたらそれこそ

腹を壊してしまうんじゃないか。そう思えるほどの濃さだった。

そう思いながらも食べ進んでいると小杉Bがこんなことを言い出した。

小杉B「俺おふ好きなの、だからこの皿にあるおふ全部食ってやるよ。」

最近の彼が話す内容には返答に困るものが多すぎる。どう返答すればいい。

結びが「やるよ」だからな~、明らかに俺の反応を待ってる。

せっかく珍しくカメラも取られず変な介入もなく純粋にすき焼きを楽しめているんだ。

この状況を維持し続けるには次の俺の返答で彼の機嫌をいかに損なわせないかどうかにかかっている。

まったく、小杉Bという男は、お前は意識していないだろうがお前のアクション一つ一つに毎回俺は究極の選択を迫られているんだぞ!

くそ、憤っていても仕方がない、

考えろ。これは一種のギャルゲーだ、ラブプラスとかである選択ゲーだ。

相手が不快にならないような正しい返答を選択肢から選び発言すればいいんだ。

ただしゲームと違いやり直しができない。一回勝負だ。

セーブポイントもなくただ進むしかない。

俺は頭に思い浮かんだ返答一つ一つに冷静に分析していく。

 

返答候補案その1「どーでもいいや」

これが今思っている一番素直な気持ちだ。これなら嘘も演技っぽい感じも出せず言える自信がある。

だがそんな馬鹿正直な言葉を奴に投げかければ普通に機嫌を悪くしておしまいだ。俺の言いやすさはここでは重視しない。

嘘でもいい。

演技も全然ありだ。

いかに弁論術を展開できるかでこの局面は決まる。こんなものは論外だ。

 

返答候補案その2「う嘘だろおいお前正気か!おふを全部食べるなんて無茶いうな!

27時間テレビをラジオ体操だけで乗りきるようなもんだぞ!」

なるほど、これなら少なくとも無関心とは思われないだろう。

頼む、俺からお前に頼む、やめてくれ!お前を失いたくないんだ!小杉!」

おぉ、熱い、文字に起こしただけでも熱意が伝わる台詞だ。最後に何気なく小杉を持ち上げている点も抜かりがないな。

でもこれって普通の会話でする口調じゃなくね?演技だってばれるわ。

 

返答候補案その3「ワンオクのボーカルって元ジャニーズだったんでしょ?」

逆に話題を変える作戦か。しかも振る話題は小杉Bが興味を引くような話題に設定しておく。

すると小杉Bは一瞬なぜ俺のことを無視したという発想に至るかもしれないがすぐに振った話題の興味に負けて機嫌は悪くならないはずだ。

理論上は。いや、待て。

なんかこの旅行中あいつとのどっかの会話でこの手口が使われてた気が

 

俺「もぅ、電池無くなっちゃうよ

小杉B「え?でも昨日充電したんでしょ?」

俺「いや、そういう問題じゃない

俺「え、だって昨日充電したって無くなっちゃうじゃん

小杉B「じゃぁなくなるまで撮ろう。」

俺「いや、撮りたいときに撮れないの一番駄目だから、」

小杉B「何か耳が痛い。」

 

あいつが使ったんだ!てことはあいつ知ってる!

この手口あいつ知ってる!つまり返答に答えられないから仕方なく話題を変えて逃げようという真意がわかっちゃう!あっぶね~、

一回冷静に考えてよかった。この手口は使えない。

 

返答候補案その4「ぱいぱい。」

なるほど。一転してバカキャラで攻める感じか、

これなら小杉Bにこいつと関わると危ないという危機感を抱かせることが可能だ。

そうすれば小杉Bは少なくともそれ以上俺を追求することはしないだろう。

だがこれを使うことによってこの局面は乗り切れるが俺が社会的に抹殺されることは必至だ。どうやら台詞は自然な感じがいい。つまり

「俺おふ好きなの、だからこの皿にあるおふ全部食ってやるよ。」

この台詞に対して自然な流れの返答をしなければならないということだ。

だんだんこのゲームは無理ゲーなんじゃないかと思い始めてきた。

 

もうだめだ。結局俺はアドリブができない。こんな突然の問いかけに適当な回答なんてできるわけないんだ。考えても考えてもだめだ。もういい、ここは禁じ手を使うしかない。

小杉Bを前にして沈黙なんてそれこそ本末転倒だ。

俺「まじかwwwwやばくねwwwwww

そう、これが禁じ手、どんな問いかけにも対応できるオールマイティー返答。

要するにチート、なにがまじでなにがやばいのかまったくわからないが

とっさに言う分には至って自然だ。ただこれはやりすぎると話を聞いていないと相手に悟られてしまう。しかもこの禁じ手に至っては他の技より遥かに使える回数が少ない。この修学旅行中では一回が限度だろうと思っていた俺は今に至るまでできるだけこの禁じ手を使わずにほぼ不可能な問いかけにも立ち向かってきた。

しかし俺は負けてしまった、リスクを背負い戦うのをやめ一回きりの安全策を使ってしまった。早くも発言し終わるやいなや後悔し始めた俺をよそに小杉Bは機嫌よく

小杉B「大丈夫、やってやるよwwwww」と言った。効果は絶大だった。

もうここからは、俺に会話での安全は保障されない。

 

19:01

 

すき焼きを食べ続けて約30分。

俺は先ほどの後悔も忘れて肉を食べることに勤しんでいた。

すると隣の小杉Bが言った。

小杉「おい、これさっきからずっと鍋の中に浸ってるおふあんだけど!」

お前まだやってたのか。

俺「食べるんでしょ。それも。」

小杉B「やってやるよぁああああ!」

そういって小杉Bは鍋からおふを次々に取り出して自分の小皿に入れていった。

おふというものは汁を吸う、実際鍋から取り上げる度におふからぽたぽたと汁が落ちていた。あの様子だと相当汁を吸っている。

あんな濃い汁を吸ったおふをそんな全部食べて大丈夫なのか小杉、

小杉B「うぅわっ!しょっぺ!wwww

まぁ楽しいならいいけど。

こうして修学旅行最後の夕食は終わった。

そして小杉Bはこの直後からお腹の不調を訴えるようになる。

「ごちそうさまでした!」

 

続く

 

「西田学人生初の京都へ行く」第35話「京都の自由行動はどのような結末になったか」

お土産場はすでに平岡生が数人ほどいた。確かにお土産売り場は広く学校のカフェテリアよりも広かった。俺が買うお土産では消費物が中心になっている 。

今までは来たことを忘れないようにとご当地のキーホルーダーなど記念に残るものを中心に買っていた。

しかし時代ともにそのキーホルダーは邪魔なものでしかなくなっていく。

2010年らへんで記念コインを発行するのをやめた。

2011年のオーストラリア帰宅時には持ち帰ったキーホルダーの山を見てブックオフに売りたくなった。そして2012年を過ぎたあたりで自室の飾り場がなくなった。こうして俺のお土産は2012年の中頃からキーホルダーなどの残る系からお菓子や特産食品などの消費系に方向転換して行ったのだ。

あのシフトから2年。今では消費系万歳である。完全にお世話様になっている。

そんなわけで今回の京都旅行。例のごとくお土産を消費系にするために俺はお菓子コーナーへ足を運んだ。めまぐるしいほどのお菓子。八つ橋、抹茶菓子、羊羹、

せんべい、挙げ句の果てにはバームクーヘンというどう考えても京都発祥ではなくノリで入ってきたお菓子もあった。まぁ結果的に俺はそのバームクーヘンを買ったわけだが。だって好きなんだもん。あの抹茶のバームクーヘン。

「京ばぁむ」というバームクーヘンは京都のきれいな水と京都で作った抹茶を

クーヘンの生地に練りこんだ全体が深緑のバームクーヘンだ。一度父親が仕事で京都へ行った帰りの土産品に京ばぁむがあったがその味はとてつもなく美味しかった。甘さが控えめなところが俺は好きでパサパサしていない生地のふんわりさ

が兄は好きだった。俺はあと京ばぁむの他に和菓子を幾つか買って妹にはなんだかノートかペンのご当地グッズを買って行った。

小杉Bも京ばぁむは買っており他のみんなもそれぞれのお土産を買ったようだ。

こうして京都駅でのお土産買いが終わり我々は京都駅を後にした。

 

1559

 

いよいよ4時になる。

終わりが近づいていることを悟った俺はカメラを回し始めた。

それにカメラを撮った理由はもう一つある。

この半日。俺、小杉B、三上、小野田くんで行動した京都判別自由学習は最後の最後までハプニング続きだった。結局水泳部二人は小野田くんを受け入れなかったし

小野田くんも水泳部二人に語りかけるようなそぶりはとうとう見せずじまいだった。

それでも今水泳部二人は楽しかったと口々に言ってくれている。俺はこの二人が満足していた、最終的にはいい雰囲気になったよということを動画によって記録証明しておきたかったのだ。

俺「いや~、なんかもう終わりっぽいので今撮ってます。」

小杉B「もう修学旅行も終わりだ。」

俺「三日目、ね。どうなるかと思ったけど午前中。

なんかいい感じで終わったね、こういう感じでね。京ばぁむ買えたし。」

小杉B「いいね~いいね~。」

俺「よかったよかった。」

三上「何撮ってるの、動画?」

俺「なんかちょっと、

ハッピーいい感じに終わりそうだからここで終わりの動画をね。」

小杉B「よかったな。なんだかんだあったりしたけど。」

 

最終的にこの動画はカメラの主導権を田中Bに奪われた挙句

彼の独断でつまらないと判断され強制的に127秒で打ち切られたが

俺にとっては紛れもなく消せない動画になった。証拠として。

そして一つ余談だがこの動画は同時に

 

俺「じゃ、豆腐いただきます!」

小杉B「腐ってるそれ、」

俺「うん、冷たい!」

小杉B「腐ってるなそれ、」や

 

小杉B「いや、コレ西田に無理やり撮れって言われたんですよ。」

俺「嘘を付けよ。」

俺「俺が寝ている間、手の握力が弱くなったときに盗みやがって。」

小杉B「西田に無理やり撮れクソ野郎って言われたんですよ、」

 

わざと俺が嫌がる言葉を言ったりああいえばこう言ったりと俺を困らせてきた小杉Bが終始まっとうに一切の悪意なく俺に受け答えしてくれた初めての動画でもあった。

 

こうして俺らの班は約束の四時半にゆうゆうと余裕を残して石長松菊園に着いた。

 

1610

 

石長松菊園に数時間ぶりに戻ってきた俺たちは着いた後すぐ旅館の男の人に

荷物発送用の荷札をもらい記入することについて説明を受けた。

行きの際の荷物については

貴重品、よく使う品物などを入れた小さいリュックだけを持ち運んで

衣服や多少手荒にあつかわれてもいいと思った品物を入れた大きいバックはあらかじめ117日以前に一旦校内に集めて発送によって1日目の旅館先で初めて対面した。そのため帰りも同じシステムを取る必要があったが行きと違い帰りでは郵送票を両親ではなく自分で記入する必要があるのだ。

旅館の男の人「こちらの、また詳しいことは夕食時にお話しするんですけれども、

このように伝票に必要事項を書いて欲しいです、で、黒いボールペンで強く書いておいてください。わからないところがあったら、あの、こちらに来て頂いて結構なので時間がある時に書いといてください。」

俺「はい。」

 

その後俺たちは宿泊部屋へ戻り入浴への準備をし始めた。

実は修学旅行三泊四日のうち入浴の機会は三回設けられるが三日のみ入浴が今までと違い夕食の後に組み込まれている。

なぜわざわざ入れ替えたのか。実はこの入れ替えは学校の先生たちによる我々に快適な時間を過ごさせようと必死に考えた一環なのだ。先生たちは一切口には出さないがかなりの会議をこの修学旅行実現のために経ている。俺たち平岡生がこれをした後はどんな状態か、どう思っているだろうか、などをいちいち紙面上で一生懸命に話し合い細かく予定の調整を行うのだ。

今回の京都判別自由学習というイベントは午前午後を合わせたこの三日間で最も長い時間を要するイベント、11月だがその気候の暑さは昨日の明日香村サイクリングの俺たちを見ればわかるだろう。それが午前や午後だけでなく丸々1日あるのだ。終わった頃には体は疲労困憊、汗は吹き出し尽くされ足は歩き果てた状態になっている。

先生達はそんな疲労困憊の俺らの状態、汗がべとついて不快な気分になっている俺らの気持ちを会議段階で予想して食事より先に入浴を組み込んだのだ。

平岡の先生の努力は人には知られない。第一先生達は一切口にしない。

しかし俺は毎回感じる。

修学旅行のしおりの三日目の行動予定表の食事と入浴の

入れ替えの表記を見るたびに頑張ったのだと感じるのだ。

そんなわけで俺はこの最終日の入浴は彼らの頑張りに感化され

特別長く入浴してやろうと心に決めていた。

予定によると食事は6時半から。周りが許すなら一時間だって入ってやろうと思ってた。早く風呂から上がったことにより中途半端に食事まで時間が余る。

結果その中途半端な時間を中途半端に過ごしてしまう。それよりかは風呂に食事までの間移住してしまう方がよっぽど暇が潰せると思ったのだ。

風呂には班全員で向かう。温泉ののれんをくぐる前に二日目我々を山で撮ってくれたカメラマンさんによる撮影があった。その後我々は風呂場へと向かった。

石長松菊園の風呂場は御所、金閣銀閣と名のついた3つの銭湯に分かれる。

そのため最大三泊しても銭湯にマンネリ感を感じることはない。

俺たちは2泊なのでするわけがなかった。脱衣所は相変わらず混み合っていた。

周り全体が平岡生だ。ここ一般のお客さんもいるんだよな。と一瞬考えたが

小杉Bと中に入り体を洗い湯に浸かった時にはそれはすっかり忘れていた。

小杉Bはこれからどうなる予定なのか、明日は家に帰って何をするか、など

いかにも旅行の終盤に交わされるような会話を交わした。

湯はとても気持ちが良かった。体の汗が取れるのを感じた。それまでは肌に手を滑らせると必ず皮膚同士で突っかかっていたのが見事に滑りが良くなった。

湯に入りお肌がつるつるになるという話はもしかしたら美肌効果ではなくただ

湯に入ることによって肌についた、あるいは分泌されたものが取れるからではないかと思ったりもした。小杉Bは初めこそ楽しそうに俺と話しをしていたが俺があんまりにも気持ちが良くて普段は気を使い静寂時には必ず率先して話題を出し静寂を10秒以内に止めることをガチ放棄していたおかげで小杉Bばかりが話すことに、やがてその話題も尽き静寂が数分訪れた途端。

小杉B「出よう。」

言い放ったのである。ここまでの所要時間は4分です。運転お疲れ様でした。

いやその手には乗らない。ダメだってこいつにつられちゃ、もうはや三日目だぞ今日で、いい加減学べ西田!いままでは単純に小杉Bが言った無理難題に反対したから強制的に実行された。それでは今回は方向転換してみるというのはどうだろう。

俺「まぁとりあえず頭洗おうぜ、」

小杉B「そのまま出るぞ。」

ダメだ相手が忘れてくんねぇ。どんだけ出たいんだこいつ。もう頭洗う話題に変わったの!その話題忘れるの!時代は流れるもんなんだよ!

って言えるわけもなく結局小杉Bの最後のセリフに押されたまま頭を洗う。

ゴシゴシゴシゴシ

俺は横に座る小杉Bをみて頭を洗うふりをして頭を掻きむしった。

あ~またこいつにしてやられんよー俺ー。

何も変えられんよーわかってんのにー。

また俺はこの男のいいなりになり自分がたてた

食事までの間ここに移住する計画は果たせずじまいかよ

そう思いながら頭を洗っていたその時。

バッシャァアアアアン!

俺「つぅううううんめって!」

急に横から冷水が流れ込んできた。体温が低下するのを感じた。

なんだ。一体なにが起きた。なんのディザスターだ!?

え?横。この横って展開見覚えがある。

で例によって隣を見ると満面の小杉B

小杉ぃいいいいいいいいいいい~お前というやつは

小杉は洗面器に水一杯を入れ俺にぶち当ててきたのだ。なんの罪もない俺に!

いいさ。そっちから始めたんだからな?やっちゃうよ?ボクやっちゃうよ?

やっちゃっちゃっちゃ!俺は洗面器に水をためる時間に攻撃されることを予測し即効性で攻撃性のあるシャワーで冷水を浴びせた。

俺「この野郎!小杉っ!」

ブシャーーーー!

小杉B「うぉおっォオイ!」

一瞬ひるんだ小杉だがすぐに野獣のような声で俺を威嚇する。

どうして俺たちはまともに洗顔すらできないのか。戦争は激化していった。

 

 

ps 一番書きたかった京都班別自由学習編が終わりました。

 これから最も長い夜へ向かっていきます。

「西田学人生初の京都へ行く」第34話「旅の終わりに行くオススメお土産屋はどこにあるのか。」

34話

1417

 

甘味所を出たのち、歩いていること約20分。

今我々の次なる目標はコンビニ探しである。

なぜ京都に来てまでコンビニを探すことになったのかというとそれは三上に聞いてくれ。実はここの二時間の部分カメラが回っておらず我々の行動理由が著しく不明瞭でありこのコンビニに向かったという行動の理由も三上が言い出したということしか記憶していないのだ。

おそらく推察するに水泳部二人から俺だけが参加した班長ミーティングの様子を聞かれて英語の先生がコンビニやマックへは京都に来てまで行く必要はないと言っていたことを教えた時に三上が反応。

反抗意識を持ち始め小杉Bと勝手に盛り上がりスナック菓子を買おうということになりコンビニに行くことになったんだと思う。

しかし京都の待ちではコンビニは思った以上にレアな存在だった。

なんとなくこういう場所にコンビニがあると近代の感じが出てしまいせっかく一昔前の時代を楽しもうと訪れた観光客にデメリットを与えるのだろう。

たしかにこんなところにまでコンビニはいらないな。

歩きながら俺もそう思った。

しかし近代っ子水泳部二人の執念は恐ろしい。

さらに10分間京都の町をコンビニを探すために練り歩き、

ついには見つけてしまった。

コンビニはファミリーマートだった気がする。

全体が白くピカピカ、24時間営業のコンビニフーズは深夜帯でも目立つようにライトアップに加え全体的に白の店にしているらしい。

その戦略はすごいと思うがこの京都では逆に目立っちゃダメなんじゃないのと思ってしまった。三上はポテチ、小杉Bはなんかタブレット系のお菓子を買っていた。

都会から離れて今日で三日目、早くも都会のお菓子が恋しくなったのか店の外へ出るやいなや二人は小杉Bタブレットお菓子を食べていた。さっきの京和菓子食った時と同じくらいはしゃいでいた。いや同じじゃダメじゃん二人とも、

京和菓子に神経を使ってあげようよ。しかしそう言ってる俺も11個入りのもちおかきを買ってしまった。やっぱりどんな時でも欲しいものが必ずある。

コンビニは便利です。

 

1441

 

英語の先生のあてつけが終わり班は再びノープラン状態へ。

石長松菊園集合時間の1630分まであと二時間を切った。

終盤に差し掛かりここで全員はお土産を本格的に買うことにした。しかしお土産屋はどこにでもある。逆にありすぎて京都初の我々にはどこに行けばいいのか全然わからないのだ。

三上「どこ行く~?」

小杉B「いや、行く場所はどこにでもあるよ。」

俺「さっきの和菓子屋だってお土産屋さんっちゃぁお土産屋さんにはいるもんな。

実際お土産買ったし。」

小杉B「逆に多いんだよな、選択肢が。」

三上「うーん」

小野田くん「京都駅で買うといいと思う。」

小野田が口を開いた。彼の一言は俺らの一時間分の会話よりも価値があり重要だ。

俺「マジで?小野田、」

三上「え、なんで?」

小野田くん「京都は行ったことあるし。お土産はあそこで買うと一番いい。」

俺「おえ?小野田くん行ったことあるの?」

なんと経験者がすでに班員にいただと!?

京都を歩いてもう6時間だけど全然知らなかった。

教えてよ小野田くんそういうことは!こっちから聞かなくても!

てか、そうか、だから妙に京都に対しては俺らよりも興奮が抑え気味だったし

歩く感じも初見っぽくいちいち分かれ道で立ち止まらなかったんだ。

謎は全部解けた!解けただけ!

 

小杉B「え、じゃぁこっから京都駅までいけんの?」

小野田くん「多分。」

多分でもよっぽど俺よりは心強い。もう君が先頭だ。小野田くん。

三上「じゃ、行こうぜ。時間ギリギリだと思うから。」

こうして我々の班は再び小野田を先頭として歩き出した。

今我々がいる地点からとりあえず最寄りの駅を探す。小野田くん曰く

京都駅はこの京都内のどの路線も通っているので必ずたどり着けるとのこと。

完璧に経験者の物言いだ。だって経験者だもん。

俺たち水泳部三人は一人だけ経験者である小野田くんに尊敬の念を抱き始めた。

それは水泳部二人もおなじだろう。俺は一番最初、小野田くんを自分の班に誘ったことは心から正しいと確信した。10が嫌えば正しい1でもそれはまちがっている。

小野田くんをのけ者にせず誘うという行為は正しい1でそれを班員が全力で嫌う10

まったく頭がこんがらがってどっちなのかわかんなかった。

しかし今はっきりと気づいた。小野田くんは俺たちには必要だ。

駅内を歩く小野田くんを前に俺は水泳部二人に思わず問いかけた。

俺「な?やっぱ小野田くんは必要だろ?」

三上「ま、あいつ京都経験者だしな。」

小杉B「確かに助かりはする。」

俺「な?」

小杉B「でもやっぱいらない。」

俺の顔 (゚Д゚)

小杉B「ハッハwwwwウソウソwww

こいつ。やっぱりひどいやつだ。

 

1509

 

電車で京都駅にもうすぐで着く。

感情が高なり思わずカメラを回す俺。二時間ぶりの動画だ。カメラに語りかける俺。

俺「京都です。」

瞬時に気づいた三上は一言。

三上「バカかお前、」

宿泊部屋との対面時での三上のあしらいが思い起こされる。

テンションの落差が凄い。

構わず俺は続ける。全てが特別に思えてくる。そろそろホームドアが開く。

これを降りることによって初めて京都駅に降り立つ。

そう思うとこのドアさえもドラマティックに感じる。

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ドアさえも特別に思える

俺「この開く感じいい

三上「普通だわ、JRと一緒だわ。」

ウィーン

俺「おぉおなんか威厳があるね。」

三上「無ぇわ。」

 

こうして京都のお土産場に着いた。さすが小野田くんが言った通りお土産のために生まれたような駅だここは。どこを見てもお土産がある。どこみてもだよ。いやー凄い。凄いね。いや確かに凄いんだけど小野田くん。

これさっきの問題解決してないよね小野田くん?

俺たちお土産屋で行くところが多いからどこいけばいいかって悩んでたんだけど。

お土産屋が凄いいっぱいあるところに連れてきてくれたね。

これで少なくとも足りないものは無いよ!あのお土産が無い!このお土産が無い!ってならなくて済むよ。いや~でもこれどこいけばいいんだい?小野田くん。

全部巡りたいけどな~、

あと一時間半待たずに俺たちは石長松菊園にいなくちゃいけないんだよな~。

どうしたもんかな~。しかしここまで俺らを引っ張ってくれた小野田くん。さすがに今の気持ちをいう勇気は俺にはとてもなかった。実際ここまで充実して行動してると実感した移動時間はなかった。今日の中で一番だった。そんな充実感を与えてくれた小野田くんに。僕は言えません。そんなことは言えません。

三上「多くねぇか!?」

そうです三上が言いました。

小杉B「これどこで買えばいいんだよ。」

小杉Bも続きました。

小野田くん「この中でも一番大きくておすすめのところあるからそこ行こう。」

見事に返した小野田くん。小野田返しが炸裂した。

素朴な言葉選びだが同時にかざらない言葉で相手に有無をも言わせ無い破壊力を持つ小野田返しだ。お見事だ。そんでもって俺はそう尋ねたデリカシーナッシング水泳部二人に珍しく感謝した。こうして小野田くんが京都駅の多々あるお土産屋の中でもイチオシのお土産屋に連れて行ってくれた。

 

続く

PS次回自由行動編クライマックスです。