wakeupandpresentの日記

いつもは映像作品を作ってます。ここでは西田学くんの大冒険を載せていきます。

「西田学人生初の京都へ行く」第40話(特別話)「水泳部三人のオールナイトはどのように過ぎていったのか」

40話 

 

22:43

 

俺「20分間ずっと撮ってますよ今から、」

一回の撮影で撮れる最大時間がこのカメラは20分なのだ。

だから時々画面を確認して撮り直す必要がある。

俺「三上どこいんだ?」

室内は真っ暗、そこで俺はカメラのセットアップでLEDをオンにした。

しかしそれでも一部が明るくなっただけ。

俺「ちょっと手振ってみて、」

画面にぼんやりと揺れている手が映った。

もしこれが幽霊だったら幽霊さんごめんなさい、三上だと思っちゃいました。

俺は明かりが充分に来てはっきりと姿がカメラに映る範囲、

通称「はっきりエリア」に席をおいた。

 

オールナイト開始から40分。これといってすることもなく俺は自分の布団のそばにある扉に寄りかかってぼーっとしていた。

俺「お、すげぇ、見て。影が、」

俺はちょうどカメラから出る光と向こう側の壁との間に位置していたので

影を使って遊ぶことができた。手の形を変えてうさぎなどに見立てるあの遊びだ。

俺は左手で顔のようなものを作った。三上も何かを影で作ったらしい。なんだそれ。

三上「おっぱいと乳首」

 

影はすべての物体にできる。つまり三上の影も壁にはあった。

横たわってる体勢の影だった。俺はさっき作った顔を三上の影に近づかせていった。

俺「三上くんの頭を~パクリ!」

三上「チッ」

俺「あっ

ゴスッ!

俺「痛ってぇ!」

スライドキックを食らった。

 

俺「こんなんで遊んだの小学生以来だわ。」

三上「キモいわ西田、」

まぁな。15歳がすることじゃないよな。わかってる。分かってはいるが

仕方がない。こんなヒマなんだから仕方がない。

俺「今度はめっちゃでっかい龍つくろ。」

俺は両手を使いなんとなく指をキバに見立てた龍を作った。

これで三上もおしまいだ。

俺「三上くんをパクリ!」

すると中原は手だけでなく腕のうねりまで使って龍の全体を表現した。

さすがに勝てない。撤退である。壁場に移る影ではそんな壮大な戦いが繰り広げられているが実際にやっている側の人間の様子を見るとかなり痛々しかった。

しかしそんなことは気づかずに俺はもちろん三上までもスマフォを置いて影を作り始めた。戦いは激化。より一層動きを正確にしなければ。俺は影の動きに集中した。すると急に腹部に衝撃が走った。ガスッ、三上キックだった。

三上「本体を攻撃。」

こらこらこら。

俺「本体攻撃すんなよ、操り師を攻撃するのはいけないんだぞ、大人のルールだぞ。」

三上「「おらぁ~」とか出てきたら、いきなりみんなで

「わぁ~!本体攻撃ぃ~!」みたいにww

俺「見ろ!はっ!謎の生物だ!」

俺はまた両手を使い生物を作った。

俺「これカニに見えるな、」

俺「もっとキモい生物を作ろ

俺は人差し指から小指までを大きくウェーブさせウネウネ感を作った。

俺「うわっキモくなった

ここでいままでスマフォをやっていた小杉Bが顔を上げた。

小杉B「何やってんの?」

完全に人を蔑むテンションで出たセリフだ。

さっきも言ったようにこの遊び

実際やっている人間は楽しいものだがその姿を見る第三者側にとっては苦痛以外の何物でもない。確かに出てもおかしくないセリフだった。しかし俺は構わず小杉に言った。

俺「ねぇ壁みて壁。田中、」

その時壁では三上が剣みたいな物を作り出し戦いが行われていた。

ブシュッ! ディシッ!

三上はこの効果音を全部自分の口で出している。

三上「死ねっ!」

三上くんノリノリである

俺「タンカンツンク、タンカンツンク、タンカンツンク謎の異生物の足音」

三上「シュッ!」

三上の一刺しが決まった。俺が召喚した異生物は2つにぱっくり割れた。

小杉B「なんで三上もノリに乗ってんの

三上「つまんねーからww

さすがの小杉Bも三上に引いてしまっている。

三上「なぁこれでアートやろうぜ。」

俺「お、アートやる?」

俺「いや、でもさこの影って見えないんだよね

俺はカメラを持ちいろいろ試行錯誤した。

三上「映ってる?」

俺「ちょっとやってみて

手を動かす三上。

俺「分かった!あ、ごめん、こっちからやってみて?」

手を動かす三上。

うまく影が映らない。

俺「えぇっ?えぇっもっかいやって?」

三上「こっち?うん?

俺「いや、ダメだ。この(カメラの)光があたった後ろに来るじゃん?影。だからこれ撮れないんだよお前の手で。」

光と撮影道具を常にどうやっても同じ場所から発信していることになるのだ。

これでは三上の手の後ろにある影を撮影することはできない。

三上「もう一個光?」

俺「もう一個光無い?」

三上「あ、あるぜぇ。」

三上はそう言うと小野田くんが寝ている方向をさした。

彼が指していたのは宿泊部屋に必ず一つ常備されている

非常用懐中電灯のことだった。

俺「お、これ行けばあるじゃん。」

俺は慎重に小野田くんをまたいで懐中電灯に近づいた。

懐中電灯は壁に設置されていた入れ物の中にすっぽりと入っていた。

俺「これ使っていいのかなぁ

「常備用」、「引き抜くと」」説明文を読んでもわからない。

多分こっからとっても警報が宿泊場全体に響き渡るようなことにはならないだろう。

俺「ちょっとやってみて、これで。できる?」

三上「ヒュンヒュン!」

三上の手の影が無事映った。

俺「あ、行けるね。」

三上「あ、明かり全部消すか、一応。」

俺「おぉ」

天井のLEDライトは4段階あり今は3段階目だった。

これを4段階目「消灯モード」にするのだ。リモコンを持つ三上。

三上「えーっと消灯消灯消灯あれ?どこに消灯あったわ、消灯。」

 

いよいよ三上 作・演出・出演のアート作品が披露される。撮影は俺だ。

俺「あ。なんだか出てきたぞ?お、一本になった。おあ、ゼロになった。」

ちょうど布団の影が山のようになっている、

そのてっぺんで三上の指が減ったり増えたりしてる。

俺「お、何がなんか物語が始まりますね

三上の指は山を下山していくが。

三上「指曲がんねぇ!そっちの方向!」

これ以上腕を右側に伸ばすことができず三上は山を下山することができなかった。

しかもぜんぜん影が見えない。正直全然見えない。

俺「これキッツイなぁ。そうだ、明かりを近づけよう。」

持つのがめんどくさくて机においていた懐中電灯を手持ちで照らすようにした。

光から離れれば離れるほど影は薄くなる。そこで元の光源を近づけることにする。

俺「近いほうが絶対やりやすいでしょう、あ!近い方がいい!」

一気にくっきりだ。それでは仕切りなおしだ。

俺「あ、いいね。手がアートですね手アート。ハンドアートといいますね。」

手の影が滑らかに動く様子はまるでクラゲが海に浮かぶ様子のように見え幻想的である。しかし観客、撮影、ライト照らし、この3つを両立する器ではなかった俺はライトをおろそかにしてしまいいつの間にか三上の顔にライトを当てていた。

三上「おい動かすな!」

すいません。

 

するとここで小杉が参加してきた。新しい手が右から出てくる。

俺「あ、なんか新しい手が、」

小杉の手はどんなアートを披露してくれるのか。

小杉の手はちょうどフランクフルトが入るような隙間を開け握ったような形になっていた。そして次第にその手は上下に高速移動し始めた。

俺「あぁ、違う、それ違うお前、何やってんだオマエは。」

小杉Bwwwwwwwwww

一番アートと程遠い行為を披露しやがってオマエは、

もうオマエにスポットはあてん。

そうしていると再び三上がアートを始めた。

三上「チョット指でファイブ、フォー、スリーツーワンってやるわ。」

俺「あ、OK。三上アート。題名は「タイム・リミット」です。」

すると性懲りもなくまた小杉Bが画面に入ってきた。

さらにカメラのフラッシュをこちらに向けてきた。やめろバカ。

俺「眩しっ、バカ。ほらっ、もう三上の芸術がはじまるんだから。」

そうだ。芸術が始まるんだ小杉、お前は黙って見てろ。それか寝てろ。

三上がカウントダウンをする。手が五本、四本、三本

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5…4…3…

すると画面の真下から中指を突き立てた手が入ってきた。また小杉である。

しかも今度は三上の演目の最中である。

俺「邪魔だなぁお前ホント

 

三上「もうなにやんの?」

演目のネタが尽きた三上。リクエストをしてみる。

俺「変な生物作ってよ。」

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もうちょっとだけリクエストしてみる。

俺「この本体の手の部分が写ってほしくないんだよね

三上「いや、ソレは無理だよ

あ、駄目だった。

その後の三上は「男女の出会い」とかを指で演じていたがエスカレートしてしまい

結局小杉Bと二人で変態劇にすり替わってしまった。

 

2317

問題が起きた。

小杉Bが眠りに落ちた。

問題はそこじゃない。

俺の布団まで使って横に寝ちゃってるのだ。

オールナイトといったって24;00を過ぎるまでである。

そこを過ぎた瞬間俺はすぐ寝る予定なので今現在の小杉Bの状態が40分続けば

俺は今夜寝れずに四日目を迎えることになる。

続きそ~~~~……四十分ずっとこのままでいそ~~~~~……

これはよくない。三上にカメラを回してもらい俺は小杉Bを自身の領域からどかすまでの動画を撮り始めた。

小杉Bを見る。布団に直角だそんなんだから無駄にスペース取るんだよ、俺のところにまで来やがって。どきなさい。三上と俺でツンツンする。特に三上の方は腹んところを刺してる。小杉Bがめっちゃ嫌そうな顔をして寝返りをうつ。

俺「いっつも俺こういう気分なんだよ。(オマエに)やられる時。」

そうなのである。一日目の夜のことを思い出してほしい。ツンツンどころではなかった。目を閉じて視界が無い状態で突如掛け布団が横に引っ張られ消失したのだ。

俺はこんな生易しくなかったぞ、小杉、それなのにオマエなんだその顔は、

こっちを向いてさ、阿修羅みたいな表情しやがって。そいでもって近づいてきやがって、おれの首根っこ両足で締めつけやがって、あれ苦しい。

キツイキツイキツイキツイ!

結局小杉Bは俺の陣地から一ミリも出なかった。

もう諦めることにした。

 

基本的に寝転がったままの小杉。夜がふけるとともに小杉の防御力、行動力、攻撃力、いろいろなスペックが低下し始めてきた。

そこをみはからった俺と三上は当然いたずらを考える。しかしこの二人が話しあうと変態なことにしかならない。案の定動かない小杉を勝手に役者に組み込んだ即興茶番劇を行うことになった。内容は地球外から突如襲来した生物=小杉に地球代表者=俺がどんな目的で来たのか、友好的な関係は築けるのかといったことを探るためにコンタクトを試みるという内容だ。で、その地球人と地球外生命体とのコンタクトという歴史的瞬間をカメラマン=三上が収めているという設定だ。これなら小杉Bが一切喋らななかったり、劇に参加してくれなくても宇宙人という未知の生物という設定によりコミュニケーションの疎通ができないという設定で成り立つ。

この劇の一番の見所は小杉が未知の物体という設定をいいことに演者西田が普段できないようなことをしまくるところ。この京都旅行始まって以来

初めていじる側、いじられる側の立場が逆転するのだ。小野田くんが眠ってから56分。2326分。

その劇は静かに開演した。

続く

 

PS 今回はいつもより長く乗せてみました。

当時は一週間に1話だったので、この回で京都旅行から1年が過ぎました。

ついに最終日に入りかけるので、もうちょっとお付き合いお願いします。