「西田学人生初の京都へ行く」第33話「なぜ神聖な甘味所で居酒屋のノリにならなければならなかったのか」
33話
早速注文である。
小野田くんは特製わらび餅抹茶セット
小杉Bは抹茶クリームパフェ
三上は白玉ぜんざい抹茶セット
そして俺は栗白玉ぜんざい抹茶セットを注文した。
その後の待ち時間は今まで通りスマフォ二人文庫本一人たたずみ一人のセットだった。そうしてついにメニューが届いた。
四品全てがお盆に乗せられておりさらに全員に小皿に山盛りの塩昆布が配られた。
なるほど。同じ甘い味だけが続くとどんどん一口目の味から遠ざかり甘味を真に楽しめない。だから時折この塩昆布を挟むことによって味覚を一回リセットさせて
ずっと一口目の味を味わえるようにしているのだ。なんて知能的な店だ。
一同「いただきまーす。」
ぜんざいをすする。
ズズゥ…
あ~温けぇ~…、甘んまいしうんまい。
そこに白玉である。
白玉は通常の四角い餅と違い炭で
焼くことによってできる表面のパロパリとした硬さがない。
つまり100パーセント柔らかい弾力を楽しめるのだ。
モチモチが好きな俺にとってこの違いは大きい。
そこにさらに栗ちゃんである。柔らかい白玉、そして硬い栗、この二つの食感の違いを同時に楽しむという天才的なメニューだった。
そして四、五口目で小皿に盛り付けてある塩昆布をつまんで口に入れる。
美味い。この塩気、見事に舌がリセットされた。
栗白玉ぜんざいと塩昆布。
どちらも単体では楽しめない、二つあわさって最高に楽しめるコンビなのだ。
そして締めに抹茶、これで苦味も楽しめるというこのお盆内はちょっとした味覚の小宇宙状態になっていた。他のみんなもうめー!と連呼しながら食べ進める。
我々はこの甘味所で最高に癒される時間を過ごした。
ここまでは。
三上がとんでもないことを言い出したのだ。
三上「西田残った俺らの塩昆布食え、」
最悪の命令が発令された。
え、塩昆布だけを食べろと。この量を?あ、一回で?
実際塩昆布はかなりの量残っていた。その理由の一つは元の量が多いこと。
俺は甘味と交互に食べ進めたにもかかわらずぜんざいを全て食べ終えても
ある程度残ってしまい温かいお茶と一緒にゆっくり少しずつ完食した。
しかし他のみんなは自分の甘味が食べ終わったらそこから先はノータッチ。
さすがの小野田くんもこんな事態になるとは思わなかったのだろう、少しだけ残していた。そしてもう一つはそもそもぜんぜん手をつけなかった人がいたこと。
それが発案者三上のことである。
彼は二日目の明日香村サイクリングの昼食の柿の葉寿司が食べれなかかったなど食べ物に好き嫌いがある。おそらく磯系統の食材に苦手意識があるのだろう。昆布にもほとんど手をつけなかった。
そんなわけで食事が終了した後も塩昆布はテーブル上に残っているのだ。
ちなみに今俺の目線の先では三上が
ちゃんと3人分の塩昆布を一度に食べやすいように一つの小皿に塩昆布を集めて入れている。てか溢れたぞ、三上。それ本気で俺に食わせようとしてるのか。
俺は必死に一般論で逃げを図る。
俺「いや、食べ物で遊んじゃダメだって…」
三上「遊んでねぇぜ、処理するんだよ、残っちゃったから。」
俺「いや、だってさ、この塩昆布はね、
和菓子で舌が甘くなっちゃうのをリセットする目的で置かれたんでしょ、
甘いものがない今、この塩昆布を食べる目的もないよ。」
三上「でも、この塩昆布は捨てられるんだぜ、それなら食ったほうがいいだろ、」
俺「いや、そりゃ良いっちゃ良いけど、良いだけで義務じゃないじゃん。」
小杉B「いいから食べろよ。」
俺「いや、いいからってなんだよ、小杉、よくねぇわ。」
小杉B「お前食うまで帰れねぇぞ。」
出た脅し。この食わないと何にも進まないぞ的な脅し文句。得意中の得意ですコイツ。でもさすがに今回は折れないって小杉。唐突すぎだもん、あまりにも。
お前のそのドスの効いた脅しにもさっきので正直慣れちゃったし。
俺「いやぁ~…これだってどんだけ塩分あんの?」
小杉B「うるさい。つべこべ言わずに食べろ。」
俺「いや、おかしいもんこんな良い雰囲気の甘味所で
学生の居酒屋打ち上げみたいなこと…」
小杉B「食べろよぉ。」
俺「食う義務ないじゃん!」
そうなのだ。毎回思うがこういったやれよ的なことには正当な理由がない。
この時そういった理不尽さに敏感になっていた俺は頑なに拒絶した。
小杉B「食えよぉ!」
俺「やだ!」
小杉B「食うまで帰れねぇぞ」
俺「食わなきゃいけない理由がないじゃん!」
三上「あるぜ。」
ここで三上がにっこりスマイルで口を発した。え。あるの?
俺「なに?」
三上「俺たちを楽しませるため、さっきお前のせいで無駄に迷った時の償い。」
この返しは予想外。完全に考えてなかった。そことそこが結びつくなんて。
そうか。そう来ちゃいますか。それ出されたら何にも言えないわ
俺は何か自分が悪いことをしたらその償いをする。その時本当の意味で気持ちが切り替えれるのだ。わかったよ。やってやるよ三上。これで今日午前のことを償えるなら。やってやろうじゃないの!
俺「わかったよ。やるよ。」
三上「この皿にある昆布全部な。」
小杉B「一口でな。」
二人とも超悪い顔だ。
俺は向こうの提示を無言でうなずき全て飲んだ。小皿をテーブルから手で上げる。
ずんっ。
なかなか重かった。
親指と人差し指だけで持ち上げられると思ったがすぐに持ち方を変えた。
手のひらで小皿を持ちながら俺は三人を見た。
全員が見守っている。本当に大丈夫だろうか。
一瞬そう思ったが俺は小皿を置かなかった。これを行い償いをできることに少なからず安心している自分がいたからだ。ドMじゃない。償えるからだ。
娘のためなら全裸にでもなるという考えを露出狂とは言わないように
塩昆布大食いを俺が受け入れたこともドMではない。
俺はその小皿を。一気に口へ傾けた。時が一瞬止まった。
どさっという音とともに昆布の柔らかさ、
塩のザラザラとした食感が全身に伝わった。
そして俺は軽く世界保健機関が定めた1日の塩分摂取量の目安を超えた
大量の塩を口に含み込んだ。
うぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぇっっぇえっっ!!!!!!!!
ちょ!おっちゃ!お茶!茶!茶!
「んっ!んぅんっんんんんんぅっ!」
すぐさま俺が飲んでた湯飲みお茶を口に持って行きかかげるが!
ポタポタ
さっきぜんざいで全部使っちゃった!
おおおうぇぇえっえっ!
「ちょ!これガチで…死んじゃ…うえぇええ…」
自然と出たものだがが少なくともかなりのリアクションだっただろう。
これで俺のリアクション待ちの水泳部どもは満足するだろう!
どうだ!笑え!喜べ!これが償いダァアアア!
小杉B!三上!なんとか言ってみやがれぇええええ!
小杉B「そろそろ行くか。」
三上「ぜんざいうまかったなぁ~」
小野田くん「お会計は入り口でするんでしょ。」
触れられなかった。
まさかのノーリアクション事件ののち我々は1階でお会計をした。
その後各自でお土産を買う。
続く
PSいまだにこのやり取りは謎
「西田学人生初の京都へ行く」第32話「初めて西田の想像どおりの形で出てきてくれたのはどこだったのか」
32話
13:12
今までかろうじて存在していた目標的なもの、それがおのだだった。
それを叶えた今、我々の班は再びノープラン状態へ放り出された。
もはや誰も当初計画していたコース巡りの話題は出さなかった。
とりあえず歩きながら大通りへ向かう。
歩く構図は先頭に並行して歩く俺と小野田くん。
そこから大股で5歩くらい下がったところに水営部二人が歩いている状態だった。
俺は頼れる小野田くんに仕える秘書として今後の予定を話し合った。
俺「小野田くん、次どうする?」
小野田くん「うーーん。」
三上「次どうする~?」
お前も参加するのか。三上は主張が強くて面倒だから抜かして進行しようと思ってた。まぁいいか。
三上「和菓子屋行こうぜ」
やっぱだめ、五歩下がれ。
これには小杉Bも反論。
小杉B「いや、いま食ったばっかっしょ…」
三上「さっきのお好み焼きで昼食を食べた。でもデザートはまだ食ってないよな?
だから甘味所いってたべようぜ。
いけるでしょ。甘いものは別腹ってよく言うじゃん。」
小杉B「ん~…まぁ実際当初そういう企画だったしいいか。」
三上「食べ物巡りだったしな、方針。」
あれあれあれ?
なんか決まっちゃいそうな雰囲気。まって。俺ら二人のこと忘れてない?
三上「西田、小野田、それでいいな。決定。」小杉B「決定。」
忘れられてなかったけど強制的にいいってことにされた。
こうして我々の新たな目標が決まった。
次の目標は視界に移った甘味所に無条件で入るというもの。
というわけで歩く。ここから一番近い甘味所を目指して。
歩き続ける。構図はさっきと同じ。三上と小杉Bはさっきからずっとこんな会話をしている。
小杉B「…それは出ればでしょ。」
三上「いやでも大体…一番最初の10連はでる。」
小杉B「あぁー…ま、でもね。俺30連やってのアーサしか出なかった男だから」
三上「はぁ、俺なんて50連やって星5一体も出なかった男だぞ。」
まぁ盛り上がってますね。スマフォのゲームの話題で。
ここで小野田くんは再びガイドブックを取り出し現在地をお好み焼きおのだから計算して確認した。俺も確認してみた。みるとどうやらこのすぐ近く。数十メートルの距離で観光スポット「耳塚」があるはずだった。戦国時代豊臣秀吉が二度の朝鮮出兵の際手下に殺した朝鮮人の耳をちぎれと命令された結果できた大量の耳を入れた塚だと言われているなかなかエグい建物である。もう視界に入ってもおかしくない距離のはずだった。
俺「この近くに耳塚があるはず。」
小野田くん「あれ」
小野田くんが指差す反対側の道路に耳塚はあった。全体が石で出来た建物なのですぐにガイドブックに載っている耳塚だとわかった、
俺「おい、小杉お前の興味あるっつってた…」
小杉B「あっ?無ぇよ。」
俺「耳塚なら行きたいかなぁって…五日前のお前、」
小杉B「じゃ、いこーぜ耳塚。」
意外に素直に折れてくれた。
反対側の道路へ移る。
小杉B「これあれでしょ、朝鮮の戦争でしょ。」
三上「負けた奴な、」
小杉B「そうそう証拠として耳とか鼻を切り取って」
三上「あぁ、耳塚ね、あぁ、あぁ。どこにあるの?」
俺「いや、あれだってだから。」
三上「なんで公園の中にあんの?」
俺「いやそんなわけねぇだろ。」
耳塚は案外小さかった。大きさからして俺の自宅と変わらないんじゃないか?
なんかこうイメージ的には灯台のように原っぱの崖ぎわにでかく立っている雰囲気だったのに。公園の近くに建っている耳塚はすごくチープだった。
それでも数千もの耳や鼻が中に入っており、さらに塩なども入れて保存を効かせたなんて考えると一気にチープでいいと思い始めてしまった。
説明プレートが横にある。読んでみよう。
「耳塚(鼻塚)
この塚は16世紀末、天下を統一した豊臣秀吉がさらに大陸にも支配を伸ばそうとして朝鮮に侵攻したといういわゆる文禄の役、慶長の役
(朝鮮史では文禄の役を壬辰倭乱と呼び、慶長の役を丁酉倭乱または丁酉再乱といった)に関わる遺跡である。
古来一般の戦功の印である首級のかわりに、朝鮮軍民男女の鼻や耳をそぎ
塩漬けににして日本へ持ち帰った。それらは秀吉の命よりこの地に埋められ、
共養の義が持たれたという。これが伝えられる耳塚、鼻塚のはじまりである。
今日ではこの耳塚を戦乱かに破った朝鮮民衆の受難を歴史の遺訓として、今に伝えている。」グロいですね。この小説には無い要素ですがもうやめたいとおもいます。
耳塚を見終わった我々はその後も歩き続け、
ついに午後1時33分我々は京都初めての甘味所にしておそらく最大の店
「京菓匠 七條甘春堂 本店」にたどり着いた。
13:33
全員明らかに興奮してる。それもそのはずだ。京都名物の中でも我々が一番食べたかった京和菓子を今から頂こうとしているのだ。
それに店の雰囲気が俺らの思っていた想像通りだったのも大きい、
考えてみればこの旅行、奈良の時点から俺が想像していたものは大抵が斜め上を行ってた。
水落遺跡
イメージ 非常に広大な面積を占めた遺跡観光スポット。
実際 めっちゃ小規模。
イメージ 外観は土や粘土を用いた柔軟なイメージ。
実際 これでもかというほどのゴツゴツ仕様。
こんな調子だから初めてイメージぴったりの店が現れてくれたこの京菓匠七條甘春堂本店に俺の好感度はマックスになったのだ。
全体的に木材作りで赤い布が被せられている。
和菓子のサンプルが置いてあり素晴らしい雰囲気。
戸を開け中原がすいませんと女将を呼ぶ、女将が出てきた。着物姿だ。いいね。
早速待つことなく四人は上へ案内された。
二階は全て和室でありある場所では手作りの和菓子を作るという授業を行っていたらしく何十人もの女性が畳上に正座していて一人の女の話を聞いていた。
俺たちはベランダを案内された。なんと屋外である。頼んでもいないのに屋外である。周りのには京都の町並みが景色いっぱいに広がっており、ちょっと身を乗り出して頑張れば稲荷山神社も見えた。
素晴らしい雰囲気の中その雰囲気を楽しむものは皆無。全員メニューに即手が出た。
どうやらお腹が空いていないという問題は考えなくて良かったようだ。
続く
「西田学人生初の京都へ行く」第31話「一行が初めて京都で口にしたものとは」
31話
トンッ
小野田くん「この駅が最寄りだと思う。」
おのだのキタァアアアア!!!
同じくゲームも持ってきておらず俺と一緒に掲示板を見てくれていた小野田くんが発言したのだ。
きましたまさかの!まさかの小野田くんがこの絶望の状況に光をさしてくれる展開キターー!あまり率先的でない静かなキャラが後半先陣を切りみんなを引っ張るという展開!
このドラマティック展開!この展開をさせたいがために一度僕らを絶望の状態に陥れたんだね?神よ!素晴らしいです本当に!これは素晴らしい!
で?小野田くん掲示板の駅指してるけどそれが最寄り駅なんしょ!?
どこどこどこ?どこいきゃーいいの?どこなのっ?どうなのっ?
「七条」
ここで本作品4068文字前の部分を振り返りましょう。
電車内はそれなりに日曜だったので混んでいた。座れず全員立ちながらつり革につかまった。小杉Bと中三上スマフォでゲームの対戦。小野田くんは文庫本、
俺は外の景色を眺めていた。
汽車さん「七条~七条~です。」
俺「俺たちが行くのは三条だからまだ降りないよ。」
あと六、五、四条らを越えないといけないのでまだまだ先は長い。
あるぇええええええ~~~~~~~~!?
汽車さん「七条~七条~です。」
俺「俺たちが行くのは三条だからまだ降りないよ。」
俺「俺たちが行くのは三条だからまだ降りないよ。」
俺「俺たちが行くのは三条だからまだ降りないよ。」
俺「まだ降りないよ。」
降りんといけんかったんやないかーい。
俺やん。結局こんな事態に陥ったの俺のせいやん。
や、ちょっと待って。ちょっと冷静に考えろ。さっきの小野田くんがリーダーキャラにシフトっていう超絶神展開の後だったからなんの疑いもなく受け入れちゃったけど違うかもしれないぞ?
もしかして間違えオノーダ?
超絶神展開からの間違えオノーダしちゃった?小野田くん?
これ間違ってたら結構はずいよオノーダ?
これは聞くしかない。
俺「え?小野田くんどうしてわかったの?」
小野田くん「ガイドブック76~77にある地図見て一番店から近い駅が七条だった。」
え!?
ガイドブックにあるおよそ15個の京都奈良巡りコース。
その一つ一つには箇条書きされた巡るコースを視覚的に捉えるため地図に載せたページが先頭にある。もちろんお好み焼き屋おのだも例外なく地図に載っていたのだ。
そして小野田くんはそれを見た。で、その周辺にある駅を最寄り駅と考えたのか。
たしかに66ページにはちゃんとおのだがありそのすぐ近くに七条という駅が書かれていた。
なんてことだ…俺は…ネットの京都道案内サイトを過大評価しすぎた。
三時間調べたお好み焼き屋おのだまでの道のりが印刷されたA4用紙に絶大な信頼を置きすぎた。置きすぎたことによってそれ以外のことに目が向かなかったのだ。
まさか。ガイドブックに書いてあったなんて。
確かに考えてみればそうだ。よく50年間歴史を研究し続けてきた老人の歴史学者が生徒のネットでの情報収集に難色を示すように。
ネットの情報よりもちゃんと書籍化され正式に発行されたガイドブックに書かれている情報の方が何十倍も信ぴょう性があるのだ。
あってるよ小野田。ご明察だ。「オノーダご明察」いただきましたよ皆さん。
気づかなかったよ俺。てかみてなかったそんなの。全部パソコンのサイトで済ませようとしてたから。
でもさ、3時間かけて一人で作った資料だよ?
11月10日平岡中学校中学三年修学旅行小杉B三上小野田くん俺班のコース巡りのためだけに構成され作られた世界で一つだけのパーフェクト資料!
情も湧いちゃうよ。情報が間違ってるなんてそんな。酷なこと思えるわけ無い。
こうして小野田君の完全リーダーキャラシフト展開が炸裂し俺たちは七条へ向かうことになった。俺は雨に打たれたA4用紙数枚を何も考えずバックに押し込んだ。
11:30
七条へ着いた。ここからだ問題は。お願い小野田君。俺が起こした悲劇を繰り返さ無いでくれ。時間をかけるんじゃ無いぞ、奴らが機嫌を悪くする。かけて10分だ。
頼んだぞ。
心では勝手に先輩面をしながらちゃんと小野田君に後ろからついていく。
俺はいっつもそう。ホントに思うだけ。
小野田君は76ページを見ながら歩いてく。資料を確認しながら歩いていく。
さっきの俺と同じだ。
唯一の違う点は小野田君のほうは止まらないといったところか。
角を曲がり、少しまっすぐ、また曲がり、だんだん狭い路地へ入っていった。
ちらりと後方を見た。小杉Bと三上はタラタラ歩いている。
どうせ着かないんだろ感が丸見え、隠す気もないのだろう。
相手が小野田だからってみんななめてかかっている。
ふと気づくと小野田君が止まっていた。まずい。迷っちゃったか?
よし、ここは一度修羅場を経験している俺の出番だ。アドバイスしてやろう。
え~とまずはだな。気持ちをしっかり持つことだ。
大抵勘のいい人間はこういう状態に陥ると先のことが走馬灯のように見える。
小杉Bと三上がキレている場面、打ちひしがれている自分の場面、
俺にも見えたよ、小野田。でもだからって気を落とすんじゃない。
たとえこれから辛いことが必ず起こるとしても、それをどう楽しく乗り切るかだ。
俺だって京都市役所前では楽しいことを考えた。
俺が「お好み焼き屋無い!」ってテンション高く言えたのもその後の運命を受け入れたからだ。小野田。恐れるんじゃないぞ。俺がついてる。全力で…フォロ…
小野田くん「看板があった。」
おいマジか小野田。
小杉B「あったじゃん。」
三上「やったぜぇ~…」
虫が好いていないんじゃないかと思ったが思いのほか二人とも喜んでいる。そりゃそうか。あったらあったで昼飯にありつけるからいいのか。なかったらまた怒鳴り散らしていたんだろうな。しかしそう簡単に昼食にはありつけなかった。
店内にはすでにたくさんの平岡生がいたのだ。
遅かった。ガイドマップは全生徒250名全員に配られていた。
俺たち以外にもおのだを昼食に選択する班はいるとは思っていたがまさかここまでとは。室内は10席ほど、カウンターが5席ほど、鉄板が机に埋め込まれたテーブル席が二、三ほどおいてあった。そのテーブル席二つを平岡生が確保していた。
完全に出遅れた。俺らのはずだったのに。一番早くおのだを目指してたのは確実に俺らだったのに。10時20分からおのだを目指していた俺らだったのに、
俺が…一回京都市役所前なんかに寄ったから、
こうして俺はまた自身が犯したことを深く後悔しはじめるのであった。
やっと持ち直したところなのに。また気分が沈んでしまった。
こうして俺たちは店内を仕切っているのであろうおばちゃんに呼ばれるまでの
約30分間、小雨の外で立って待ち続けたのだ。水泳部二人はもちろんスマフォ、
小野田くんは文庫本を読み、俺の気分はブルー一直線だった。
1日目の夜の心境だ。なんだか冗談で笑い飛ばせないようなことをしてしまった時、
俺はいつも気持ちの切り替えが遅い、ズルズルと引きずるのだ、
初日の夜はまだ1回だから良かった、さすがに二回はきつい。
いい加減仕切りなおしたいのに、何回同じことをやっているんだ俺は
自分自身が楽しくないとこの修学旅行楽しくならないわけがない。
切り替えろ!俺!いい加減気分を変えろ!おのだにはもう着いてるんだ!
あとは食うだけだ!でもまてよ、なんで俺ら待たされてるんだっけ。
そうだ、俺が京都市役所前なんかに止まって時間ロスしたからか。
はぁあぁああぁあ~~~……………⤵︎
そうして楽しい気分を取り戻せないでいた俺を尻目に店内のおばあちゃんは
ついに俺たちを店に引き入れた。
12:33
改めて店の紹介をしよう「お好み焼きやおのだ」
看板を目印に細い路地を入ると現れるこの店。
肉玉、豚玉、イカ玉などのお好み焼きのほかそば入り、うどん入りなど一度食べたら病みつきになりそうな味が楽しめます。店内は「おばあちゃんの笑顔がいいね」と話す常連客で溢れ、湯気を上げるソースの香りが鼻をくすぐります。
ガイドブック引用より。
店内はお好み焼きソースのいい匂い、壁はいい具合に煙で黄ばんでいた。
また壁にはプラスチックで作られたペラぺラのメニューが何枚も画鋲で止めてありあるところの文字には「すじ煮 500円」
またあるところには「おでん有ります」
「酎ハイ 450円」など様々で正直ダブってないか心配だった。
机はカウンター席は石、テーブル席は木でできておりカウンター内は以外と最先端で最新の電子レンジなどがあり鉄がゴツゴツしてた。
白い長タウルを首にかけたおばちゃんはハッと目を離したスキにカウンターの内側でお好み焼きを鉄板からひっくり返している。いそがしいおばちゃんである。
俺たちはすぐさま注文を行った。注文はそれぞれが口にしたが何を頼んだかは忘れた。ただ覚えているのは全員が頼んだお好み焼きに「そば入り」と頼んだので
俺だけは新鮮さを狙って「うどん入り」を注文したのだ。
テーブル一つに一個置いてあるたれ入れから自分で好きなだけたれをつけていいとのこと。本当に好きなだけつけてもいいんだろうか。
つけすぎて容器がなくなりなくなったからお代わりちょうだいなんてでも言ったらその場でおばあちゃんに顔を両手で掴まれそのまま鉄板にじゅ~って
やられるんじゃないかと思ったが実際のところどんなに頑張ってつけても容器はなくならなかったので安心した。
そしてついに目の前にうどん入りお好み焼きが置かれた。
色はもちろん小麦色、白いうどんと生地にたれたっぷりがつけられ
じっくり鉄板で焼かれたそれは見事な小麦色を放っていた、
一口食べてみる。
う・ま・い
これでしか表現できなかった。本気でうまい。
口だけではなく足や手もその味を喜んでいるようだった。肉はジューシーでうどんももちもちで最高に美味しかった。
一人期を狙って頼んだうどん入りお好み焼き、これは頼んで正解だったな。
試しに俺はそれを小杉Bからそば入りお好み焼きとで一口ずつギブアンドテイクしてみた。今度からはそば入りを頼もうと考えている。
午前中の雨に降られながらのあやふやな歩きに班全員は疲れきっていた。
そもそも食べるより先に椅子に腰を下ろすことができてここに来て良かったと思ってしまった。そこにお好み焼きが出されたらもうカオスだ。
ざくざく箸で切っては食べ切っては食べの反復。うまいうまいと食べ進んだら
ものの10数分で食べ終えてしまった。午前10時20分から追い続けること2時間
40分。俺たちはついに昼食をおのだで食べ終え店を後にした。
続く
PSほんとドラマティックでしたよね
「西田学人生初の京都へ行く」第30話「西田はなぜ壊れたのか」
30話
三条に着き電車を降りる一行。三条に着いた後は一旦駅から出て5分ほど徒歩で歩きまた違う駅に入ることになっていた。なんで駅から駅へ電車を使っていけないのか疑問だったが道のりは最善のはず。あまり突っ込まないでおいた。
一旦外へ出るとまた雨。みんな「あぁー…」みたいな顔をしながら
傘をさしだした。歩く。絶対五分じゃなかったがとにかく次の駅へ着いた。
そこから一駅で京都市役所前という駅へ向かい、
出口から徒歩2分でお好み焼き屋には着くとかかれていた。
移動は続く。全員無言のまま歩く。明らかにみんな疲れている。
泉涌寺の時点でそうだったので今ではみんな目が死んでしまっている。
これ、ホント着けなかったら殺されるな、マジで。
そう思いながら俺は歩き続ける。
いや!心配はいらない!だって現時点では着実に予定に沿って道を歩んでる!
それにさっきの電車内で確認したがおのだは今日は確実に営業してる。
弊害なんてないんだ。音羽屋の失敗は二度と繰り返さない。
この資料も完璧だ、俺が何時間もかけて京都のサイトを往復して入力してプリントして作った資料なんだ。間違いなんてあるわけない。
数々のトラブルもあった。行き先に「おのだ」って入力しても「見つかりませんでした」とか言って出てこなかった時もあった。いろいろ原因を考えてようやく店の住所を入力すれば出てくるんだということに気づいた。こんな風に何度も何度も壁にぶつかっては頑張って考えてそれを乗り越えてきた。それで出来上がった資料だぞ!
「最強」としか言いようがないだろう!そう。まだ今なら、
今なら持ち直して楽しい京都巡りにできる!
俺は確実な自信を持ちながら先陣を切り歩いた。
11:05
京都市役所前に着いた。
ここから外へ出て徒歩2分。
の、はずだった。
なのに10,20分歩いても一向に姿を現さないおのだ。
マップを見てもわからない。
どうなってんだこれは。周りに看板は山ほどあった。
しかし目を凝らしても一向に現れない「おのだ」の文字。
歩きスマフォをやっていた三上がついに急かし始める。
三上「お~い、どうなってんだよ西田。ぜんぜん着かねぇじゃーん。」
俺にもどうなってんのか分からない。亀並みの速度でもここまで時間はかからないはずだ。雨の中ひたすら歩く。
歩き、歩き、歩き続け、歩き続けた。
結論を出した。
俺「お好み焼き屋無い!」
テンション高く言いましたァ~!!
ハイ、無い~!!もうね!無いと思ったよ!こんなもん!
歩いて十分そこらで悟っちゃったねコイツは!
な~んでなんだろね!?なんで着かないんだろね?割とマジで!
もうね、逆にウケるわ!!こんなクソ運のついてなさ!!
テラワロスものじゃね!?うんちじゃね!?おれらうんちじゃね!?
よっしゃぁうんちだぁ!!キタァ!ほっほぃ~!!
ウッシャ!ウッシャ!ウッシャ!ウッシャ!
小杉B「ざっけんな!!!」
その声で俺は理性が戻った。
小杉の顔はこの京都旅行で一番のキレた目をしていた。
俺「いや…だってねぇんだもん…」
小杉B「なんで楽しそう言ってんだよ」
俺「ごめん、何か…もうヤケになって…」
小杉B「こんな奴班長にすんじゃ無かった。」
したのは誰だよ!
俺「おれだって一所懸命にやってたんだって!!
見ろよこの資料!!」
俺は雨にされされボロボロになった資料を引っ張り出した。
俺「これスペシャル資料なんだよ!
俺が数時間かかって家のパソコンで寸暇惜しまずいろんなサイトから情報を集めて家のプリンターでプリントアウトしたスペシャルな資料!」
三上「ちょ、見して。」
三上に資料を渡す。俺が作ったスペシャル資料。
三上「これなんで目的地が「京都市東山区大和大路通り塩小路下ル上池田町546」って変な名前なの?」
俺「おのだって入れたら出てこなかった。だから店の住所入れた。」
三上「これで変になっちまったんじゃねえか?」
俺「違う!それだけは絶対違う!」
三上「普通出てくるだろ店の名前で、無いっておかしいよ。」
俺「え、無かったんだって!…」
小杉B「もういいよメンドくせぇよ!さっきの駅戻ろうぜ。チッ。」
確かに小杉Bの言う通りだった。
最後の舌打ちは余計だが
半ば煮え切れないまま一旦駅に戻ることになった。
なんでこうなるんだ。俺が前に出るといっつもこうだ。全部うまくいかない。
京都市役所前に戻り駅内にあるでかいマップの前に俺たちはいた。
田中Bと中原は再び一つのスマフォでゲームをしていた。
俺は必死に地図を見ていた。
ホントにあっていると思ってた。
だって実際京都なんて行ったこと無いからパソコンに表示されたルートが間違ってるかどうかなんて分かんないんだ。
1+1=6000とかは一目で違うって分かるけど分かんないんだ。
京都なんて分かんないんだよ!
第一ここを決めたのは水泳部二人だ、しかも決めた理由がまたひどい。
この店名を最初出した時少なからず皆さんは「あ、」と思わなかっただろうか?そう。この店の名前は「おのだ」うちの班員の一人小野田くんと読み方まで同じだ。
明らかに偶然じゃない。でも結局なんでかはわからなかった。それが今朝。
もちろん小野田くんがどこかへ行っているときに三上がぽろっと言ったのだ。
「あいつを昼に店へ置いてって午後は三人だけで見学しようぜwwww
小野田を置いて行く店だからおのだって店wwwww」
もちろん本気ではない。冗談半笑いで三上は言っていた。
それでも小野田くんに対してそういう目線なんだということは事実だった。
そのとき歯磨きをしていた小杉Bも笑っていたので多分あいつもそうだろう。
くそっ。
考えたらなんでこんな奴らと俺は京都を歩いてるんだ。
そもそも俺には班員を選ぶ権利すらなかった。
気づいたら小杉Bが当然のように俺を入れていたのだ。
別にそれ自体は嫌ではない。嫌ではない。
けど当たり前のように俺に聞かず彼の中で実行されていくのが嫌だ。
今まであいつと付き合ってきた2年間、
学校行事の班員選びの度にこれは繰り返されていたが
なんだか改めて考えたらこれっておかしいんじゃないか?
なんで俺の意向は考えてないの!?
そもそもなんで俺ってこんなに不遇を受けるんだ?あれ小杉Bって先輩だっけ?
俺より先にこの世に生まれてきてるっけ?いやあいつは1998年6月生まれ。
俺は1998年4月17生まれ。なんだ俺の方が早生まれじゃん。
くそ、
いやわかってる。こんなこと今まで何度も考えたことだったじゃないか。
俺の無駄に深読みアンド行動分析する脳は何度も何度もここにたどり着いていたのだ。疑問がわいたらとことん考える。
どうしてあんな行動したんだろう。なんでこんなことを言われるんだろう。
なんで上下関係があるんだ。と、
でも変わらず今に至る。じゃぁなんで?
それは俺が疑念を抱く対象があまりにも普遍的すぎるからだ。
もう当たり前のことなのだ。上下関係なんて行い手は意識をしていない。
そのため論理的な疑問にも至らない。だから本人には変えていく必要性も見出せない。いいか悪いかは関係ない。
善悪どちらの行いも習慣化すれば区別を考えなくなり無意識化していく。
だから行動を起こしてもダメだった。変わらなかったんだ。
むしろいちいち人間関係を分析して気持ち悪い。全部理屈化するなと言われたんだ。
確かにそうだ。いちいち日常生活で
今の行為は善悪でいうと悪なので今後からは控えてほしいなんて自分からしても付き合いたくない。解ってる。解ってるんだけど。
「うわっ、あいつ今あくびしたぞ!すっげぇキモかった…」
「てか、なんであいつ毎朝HR前ブラックコーヒー買って飲んでんの?調子乗ってんの?気取ってんだろあれ、」
「あいつを昼に店へ置いてって午後は三人だけで見学しようぜwwww」
「小野田を置いて行く店だからおのだって店wwwww」
くそっくそっくそっくそくそくそくそくそくそくそ
くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!!!!!!!!!!!!!
腹たつわぁ~!!!!あいつらぁ~!!!!!!
そんなふうに考えながら必死に俺は電光掲示板に食い入る。
しかし何もわからない。
駅員さんにも聞いたが駅内のことしか分からずこの周辺におのだがあるかどうかは結局わからなかった。
恐れていたことがついに起こってしまった。
修学旅行三日目にして最悪の日11月10日。いまそれが着々と完成されようとしている。
もうだめだ。完璧に失敗だ。
しかしそのとき予想だにしないことが起こったのだ。
続く
「西田学人生初の京都へ行く」第29話「行動予定表通りになぜ行かないのか」
29話
俺「とりあえず次の予定してるところ行くか。」
小杉B「え?次ってあの白川Tに言われて無理やりお前が入れたっていう文化財か?」
一回行動予定表全て食べ物関係のもので埋めて提出した際に
文化財を入れろとボツをくらい俺は文化財を行動予定表に三つ入れていた。
音羽屋の次は近くにある泉涌寺という場所へ行く予定になっている。
俺「そうだな。」
小杉B「はぁあ~?」
明らかに食べ物関係でないことに不満を隠しきれていない小杉B。
あとさっきから一定時間ごとに俺をどついてくる。
三上「しょうがなくね?」
俺「あ~ありがと、三上。小野田くんもごめんね、いいかな?」
小野田くん「うん。」
俺「じゃ、すいません。次行く場所泉涌寺に行きます。」
小杉B「チッ」
舌打ちした。隠す気はないようだ。でも心のなかでは全員小杉Bと同じ気持ちなのだろう。誰一人行くことを喜んでない。
会話が一気になくなった。さっきまで気にもしなかった雨の音が際立ちうるさくなった。アスファルトのくぼみに溜まった水たまりを踏むたびに
ビチャッビチャと音が鳴りそれも不快に感じる。
どんどんどんどんどんどんどんどん雰囲気が悪くなる。
疲れているが「疲れた」とは一切だれも言わない。
もう言う気力もないということか。
小杉Bも下をずっと見つめ歩いている。不自然なほど無口だ。
おれは頑張って時折話題を掘り下げ、あるいは切りだしていったが効果は出ず。
また泉涌寺への道のりも案外険しかった。
やはり百聞は一見にしかず。
パソコンでは捉えられない実際行ってみないと分からない坂の急さ。
並木がたって雨を少し防いでくれたので俺達は傘をさすのをやめた。
傘を持つことによって持ち手が痛くなることも地味にこのムードに貢献していた。
ただ黙々と歩いた。書くことも無いくらいに。
坂道を上る途中で思い出したがここは鑑賞代としてお金を徴収される。
確実に良い話題ではなかったが今はなりふり構っていられない。なんとか話す雰囲気を作り出し京都巡りを良い記憶として残さなければいけないのだ。
坂を登りながらみんなに話しかける。
俺「あと、学校で話したと思うけど…
ここ一応鑑賞代として300円必要だけどいいっしょ?」
三上「は」
小杉B「マジかよ…チッ。」
小野田くん「(-_-)」
思いの外「忘れてたわ!先言えよ!」→「もう帰る」みたいな流れにはならずみんな覚えていたらしい。ただ受け入れられていないようだった。
10:04
泉涌寺へ着いた。
えらいでかく泉涌寺と彫られた長方形のツルツル石が置いてあった。
そして前方には泉涌寺とそれ以外という風に境界線を意識したような門があった。
当然のごとく門の先には受付所が置かれておりそこにお金を払うことで見学ができるようだった。
門の中には足を踏み入れてもいいがその先にある泉涌寺本堂は見ることができないという訳か。
まぁいい、払うしかない。数十分かけてここまで来たんだから。すると小杉Bと三上が口をそろえて言った。
小杉B&三上「払わない。」
なんでやねん。
坂道を頑張って登った理由を二人は分かってないんじゃないか?
森林浴じゃないよ?ちょっとした健康法でもないよ?
泉涌寺を見学するためでしょ!?
え、ここまで来て帰っちゃうの?
俺「えっ、…いや…見てかないの?」
小杉B「うん、興味ねぇし。」
無いのは知ってるよ。でもそれココで言う!?
坂道を登る前ならまだしも。
泉涌寺まで40センチもないこの場所でそれを言ってしまうんですか。
三上「音羽屋で何にも食えねぇのにここでお金払うってなんかな…」
小杉B「あぁ、」
う~わぁ、やっぱそこか。結局は音羽屋を引きずってるのか。
それが根底にあるなら何を言っても無駄だ。
なぜなら音羽屋は俺の過失だからだ。
おそらく彼らは迷いながら坂を登っていたのだろう。
そして泉涌寺へ到着したちょうどその時。
お金をここで使うべきではないという結論に達したのだ。
ノリではなく真剣に考えて彼らは意見を変えたんだ。そう思うことにした。
事前に学校で3日目の行動班についての注意が先生の口から聞かされていた。
班長は班員に単独行動をさせるなと。
今、四人中二人が見学代を払わないという状況にありこれは覆りそうにない。
彼らを門の外において行き小野田くんと二人で見学するのは論外だった。
俺「小野田くん…悪いんだけど、見学はしなくていいかな…」
小野田くん「…うん。」
こうして我々は泉涌寺の門前で見学を断念し引き返すことになった。
せめて行ったことだけでも証拠に残すためにと写真を撮った。
誰も楽しそうじゃなかった。
こうして我々は次の場所へ移動することになった。
次に予定されている場所は東福寺。
しかし現在もう予定通りに進んでいない。
なぜなら時間のズレが生じてるからだ。
俺はこの行動予定表にそのスポットごとに大体の滞在時間を細かく設定していたのだ。例えば文化財の場所では「見学時間」、
飲食店では飲食をする時間が滞在時間に当たる。
つまり滞在しないとその分だけ時間がずれ始めるのだ。
行動計画表では音羽屋で一時間分を取っていたため
実際は営業していなったためそのまま泉涌寺へ直行。
この時点ですでにずれてる。
また泉涌寺から次の場所へ行く時刻は予定では11時10分からだった。
実際には見学しなかったため現時刻は10時20分。
40分ほど早い。
しかも結論として我々はこの後東福寺へは行かなかった。
文化財で消極的ということもあったがそれ以上の理由があった。
移動手段が徒歩だったのだ。
誰も足を動かそうとはしなかった。みんな無言で首を振っていた。
というわけで飛ばして次の場所を目指すことへ
東福寺の次の場所は「おのだ」。
とんでもないことに予定ではこの時間は昼どき。
昼食をとるためのお好み焼き屋へ行くことになっていたものだ。
東福寺へ完全に行かないことが決定した為また時間がズレる。
東福寺へ着いた時点で11時34分。
東福寺の見学時間に俺は三十分をとっていた。
12時4分出発の予定だった。
え~っとつまり10時20分からおのだを目指すということは…どんだけずズレるんだ?…えー…あ、104分ずれるということだ。
10時台から昼飯を食べる場所へ向かうなんて今考えてみたら早すぎていたが
その時の俺らは音羽屋のショックがあったのでとりあえず飲食をすることを目的として行動したかったのだ。早すぎとかは考えもしなかった。
というわけで我々は予定より約2時間早くおのだを目指すことになった。
10:20
かなりカオスなことになっているが決まったことは仕方がない。
このおのだへ行くには初登場の交通手段、「京都地下鉄」を使うことになる。
ほとんどの路線はワンデイチケットの対象なのでお金がかかることはない。はず。
そこまでは正直かったるいので調べなかった。
実際ワンデイチケット今日配られた訳だし
ちょっと頑張らないと調べられなかったのだ。
まぁちょっと頑張れば調べられたけど。
京都の地下鉄はいつも俺が通ってる東京の地下鉄とほとんど変わらなかった。
東京と同じ無味無臭だったし。
10:39
電車内はそれなりに日曜だったので混んでいた。座れず全員立ちながらつり革につかまった。小杉Bと三上はスマフォでゲームの対戦。小野田くんは文庫本、
俺は外の景色を眺めていた。
汽車さん「七条~七条~です。」
俺「俺たちが行くのは三条だからまだ降りないよ。」
あと六、五、四条らを越えないといけないのでまだまだ先は長い。
思えば東福寺から一番近くにあり三条を通っている路線に乗り込むはずだったが
我々は泉涌寺から最寄りにあった駅に乗ってしまったので
三条には着くことはわかっているが手持ちの資料に書いてある所要時間はあてにならず何分かかるかわからなかった。
あ~こんな時にスマフォでもあればいいんだろうな。音楽とか聞けるわけでしょ。
良ーなぁ~、本持ってるは持ってるけどこの本難しすぎて行きの新幹線から一度も開けてないし、本電車で読むと酔っちゃうしな…あ~ぁヒマ。
それになんもしてないと体調に敏感になってくる。つまり空腹感を意識してしまうのだ。あ~お腹すいたなぁ~、とりあえず俺は非常食の一環としてポーチに保存していた二日目の朝食の焼き海苔をパリパリ食べた。電車内に磯の香りが充満した。
こうして我々は三条に着いた。
PS次回でついに30話。だいぶキャラクターにもなじみが出てきたんじゃないでしょうか。残すところ十数話。ノンフィクションで突っ走ります。
「西田学人生初の京都へ行く」第28話「悪夢はどのようにして幕を開けたのか」
28話
あと60秒早ければよかったのに、この一分の違いで俺はまた別のバスを
後ろから付いてくる一方に悟られることなく探す羽目になる。
三上「お前どのバス乗るのかわかんねぇだろ。」
気づいていた。
俺「いや、あの~…時刻はわかっててぇ…53分のバスに乗るんだけど…」
三上「どこ?」
「どこっ?」って聞かないで。先を急がないで。順路を隔ててゆくゆくそこへ行き着くから、それまでの俺の苦労を聞いて。
結局一向に気づかれたがどうしようもできないので再びバスを探す。
今は45分、10分を切った。結構時間が押してきている。だんだん乗れるか心配になってきた。いや、でもみんな分かってくれ。
こんなことは想像もしていなかったんだ。
自宅のパソコンではわからないことなんだ。
もう振りもいらない。なりふり構わず走る。
バスは!バスはどこだ!どこにでもいい!バスよ出てこい!
心の中でそう叫ぶ。
二つバス停が出た。視界の前方、および右側それぞれ数百メートル先に二つあった。
う~わぁー…どっちだぁ…
正解が一つだけポーンて出てきて欲しかったんだけどなぁ…
カメラで見た時刻は50分。時間的に二つ分の停留所はまわれない。
どちらか一つに賭けるしかない。
俺「ぉえぇ~?…どっちだよー…」
くっそ、なんでこんな数百メートルで歩みが止まるんだ。
俺が思い描いていた京都巡りと早くもビジョンが違う。
もうどうしよう?どっちが正解なの!?
見た感じは同じバス停。違いがない。相違点が見つからない。
時刻表が55分なのだ、
必ずどちらかはそうなんだろうけどそれがわかんねぇんだよなこの距離じゃ、
う~~~~~~~ん…
右でいいや。
完全フィーリングで答えを出した。
実際目で見た感じ右に見えるバス停の方がすこし距離が少なそうに見えたのだ。
よっしゃ、進め。さらに小野田くんがねぇねぇと言って俺に話しかけてきた。
滅多に話さない彼から話しかけるということはよほど重要な情報なはずだ。
小野田くん「あのさぁ…今四つバス停あるじゃん。」
俺「うん。あったねぇ、」
小野田くん「バス停の名前見るとさ、〈東〉とか〈南〉とか書いてあって
これ東西南北のバス停だと思うのね。」
俺「へぇ~すごいね、よく気づくね。」
小野田くん「で、この資料〈俺が自宅でプリントしてきた資料〉
の55分のバスにのるって西って書いてあんの。」
俺「えぇ。」
小野田くん「右下の地図記号から北はこっちだから西はここ。
今前に見えるのが南側のバス停、右にあるのが西のバス停。
だから右のバス停だと思う。」
俺「あぁあ~!」
ユリーカした。そんでもってこいつは天才か。
四つあって東西南北に合わせてバス停が置かれて…
今俺たちが行きたいのは西だからっつって…
すげぇ~。金田一小野田じゃん、コイツは。
フィーリングで決めた右がすっごい理由付けされたよ。よかったな右。
時計は53分。あ、やべ、急げ!
もはや傘も閉じ雨に当たっていった。
ダダダダダダダダダダ
ダッシュ!
バス停ついた!もうバス止まってる。時計は55分だった。正解だ。
全員はそれぞれカードを入れ料金を払った。一日券だ。早速役に立った。
得な気持ちになる。早朝で天候が悪かったために座席に座れた。
それでも地面はバケツ一杯の水をぶちまけたように雨で濡れていて
ヌルヌルしていて嫌だった。横は小杉Bだった。ここから十数分移動する。
俺は資料に目を通しその間小杉Bはゲームアプリの「ディズニーツムツム」
に全神経を注いでいた。ひと段落し、息をつく暇ができ安心したのか疲れを覚えた。
このちょっと疲れた時に甘いものを入れると嘘みたいに気分が良くなる。
そういった意味ではこの疲れたコンディションはある意味準備万端と言えた。
まじで楽しみになってきた。音羽屋~まってろよー、縁起物だかなんだか知らないが俺らが喰らい尽くしに行くからな~…。でもなんだろう。音羽屋に近づくにつれ強くなるこのもやもやした気持ち。何か大切なことを忘れている気がしたが
思えば俺はいつでももやもやしているので今回もそのせいだろうと思い心配はしていなかった。しかしこの忘れていたことが俺の京都の旅を破滅へと導く引き金になることなんてバスに乗ってヌルヌルした地面が嫌だから靴を脱いで靴下を前にあるアミアミのポケットに突っ込んでいるこいつには知る由もなかった。
9:20
そして所定の駅についた。
我々は(止まりますボタン)をプッシュしバスから降りた。
地図を見ると少し行きすぎてしまったらしかった。
戻り歩く我々。
どうやら音羽屋は商店街内にあるらしく、我々は人気のない商店街へ入っていった。
雨のこともあり一行は明らかに疲労していた。
これを今から訪れてやる甘味所でリフレッシュさせる。
こう考えると雨もこの企画もなかなか筋がとおっているように思えた。
全てがいい方向に進んでいた。雨でさえ味方に思えた。
ここは自動車が通れる商店街。
歩道は車道を交えて二つに分けられており我々はそのうちの一つを歩いていた。
そのうち我々は商店街の終わりへ行き着いてしまった。
商店街にあるのは写真を見るかぎり間違いない。
恐らくもう一つの歩道の方に店が面しているのだろう。
もう一方の道路を俺たちは歩き始めた。
そして歩くこと更に数分。ついに音羽屋は姿を表した。
外観は普通だが明らかに俺らが求めていた音羽屋だ。看板を見て興奮する。
俺「あったァアァァアアァァ!」
三上「やっと着いたよぉ~…」
小杉B「早く食おうぜ、」
みんな口々に声を出し喜んでいた。
もちろん小野田くんも口には出さなかったが微笑んでいた。
いよいよ音羽屋でお菓子を食い尽くす時が来た。
現在の時刻は午前九時ちょい過ぎ。
音羽屋は資料によると九時から営業開始している。
人気の無さといいこの時間といい完璧に俺らが本日のお客さん第一号だ。
フラグ立ったね。来たねこれは。
扉に手をかける。
開かない。
チョイチョイご冗談を。
もう一度手をかける。
嘘だろ開かなかった。
資料をもう一度見てみる。
そして音羽屋の紹介文を穴の開くほど見つめた時
俺はようやくさっきの違和感の正体に気付いた。
音羽屋は日曜日に開店していなかった。
そうだった。
そう言えば日曜やってないってみたわ俺、
ガイドブックの下の営業時間に書いてあったわ。
いや待てって、ちょい待ち。
気付いてたんだったら何で行動予定表から外さなかったんだ?
そして俺は再び気付いた。この一文だ。これを見て俺は外さなかったんだ。
その一文は(11月のみ無休)と書いてあった。
言わずもがな今日は2014年11月9日。どう考えても11月だ。
そりゃ外さんわ。続行するわ、逆に。
丁度11月に京都行くし、なんて偶然!
神タイミング!入れない手はないわ!
って思うわこんな表記。
で、東京で思って実際出向いたらこれですよ。
開かんがな。
おもいっきり鍵かかってまんがな。
これってあれでしょ、店を持つ亭主しか持つことを許されない店鍵でしょ、これ。
もう絶対今日来る気無いでしょ、亭主。
俺「開かねぇ…」
小杉B「はぁ?なんでだよ!?」
小野田くん「(・o・)」
当然驚く一行。事情を説明するが小杉Bは
「ふざけんな」の一点張りで納得してくれなかった。
そしてさっきからずっと資料を読み込み黙っていた三上が顔を上げ言った。
三上「電話しよう。」
びっくりした、急に何を言い出すんだ三上、でも残念だが俺の首からぶら下がってるこの二つ折り携帯ではかけることは出来ないぞ。
俺「いや、この携帯警察救急車以外どこにも掛かんねぇぜ?」
三上「ちげぇよ、俺ので掛けんだよ。」
なんと三上は自らの携帯を懐から取り出した。
明日香村サイクリングで携帯に関するヒヤリとした体験を経験している三上。
それ以来彼の携帯を今まで俺は目にしなかった。
恐らく彼自身あの時から自分が持つ携帯が違反物ということを少なからず意識しだし露出を抑えていたのではないかと俺は思っていた。
人目が多く付くような場所では見つかるリスクが増す。
特に今日は京都という公衆の場でほぼ一日を過ごす。
さらに金閣寺や銀閣寺やその他の区域にランダムに先生が徘徊をしている。
おそらく今日は出さないだろうと思っていた俺だが三上は出しちゃった。
それほどにまで諦めきれないということが彼の危険なその行動をみて読み取れた。
電話番号が資料にはのっている。三上は指を動かし入力している。
無言で待つ一行。
耳に当てる三上。電話を掛けたようだ。かすかに漏れるコール音。
そして電話はかかった。三上は数言会話をし「ありがとうございました」と電話を切った。
俺「どうだった。」
三上「今日は…やってませんよって…」
俺「え、11月は無休っていう事は?…」
三上「聞いたけどよく分からなかった。相手はおじいちゃんだったし
ずっと今日はやってないって言い続けてて、これ以上聞くのかわいそうだから切っちゃった。」
いや駄目だって。これはやっちゃ駄目だって音羽屋!
俺らはるばる東京から県を跨いでやってきた身ですよ。
書いたからにはちゃんと守ろうって!
こんなところで閉め出すなよマジで!縁起物のお菓子食わせてよマジで!!
小杉B「おい~…どうすんだよ…マジで、」
口調に苛立ちが混じり始めた小杉B。(・o・)の顔のままな小野田くん。
携帯を静かに見つめ続ける三上。それを見る俺。
雨は止む気配がない。
これどうすればいいの?
「西田学人生初の京都へ行く」第27話「小野田くんは何故水泳部2人から受け入れられないのか」
27話
行動予定表は班長が記入して順路を実際に自宅のPCで確認した上で提出する。
クラスには人数分京都を楽しむガイド本が配られた。
100ページ強のボリュームで京都と奈良を巡るコース例が15個のっている。
つまり何が言いたいかというとどうしてもコースが浮かばない班はこの本に載っているコース例をなにか選びそのまま書いて提出すれば良いということだ。
コース紹介欄では「~したい人にオススメ」といったわかりやすい煽り文や
移動時間が~分予備として~分、合わせて~分。といったそのコースを巡るのにかかる時間配分も詳細に記入されている。どこの班ももうこの本に頼りっぱなしだった。そりゃ頼るわ。
しかし我々の班ではそもそもこの本は使えなかった。なぜなら我々の行動方針と
これらに載っていたコースの方針とは違っていたからだ。
ずばり我々が打ち立てた行動方針は「京都内の名物を食べ歩く」
これである。
これはスムーズに決まった。全員京都の文化財には興味がなくそれよりも京都名物の方が何倍も惹かれていたのだ。ちゃんと俺は小野田くんにも了承を得た。
お金をかなり使うプランを提示したので小野田くんは反対するかどうか心配だったが特にそんなアクションも起こさずやっぱりいつも通り風が通るような声で
「いいよ」とだけいった。
食べ物巡りとかいう食い意地の張った企画で京都をしっかり巡れるのか?
我々はミリ単位も思わなかったが
一般人にはこんな疑問が出る。が、それは心配ない。
事実京都が誇っている名物はガイド本をみるとかなり載っていた。
出汁が京風でなんともクセになる味な「京めん 名物うどん」
9時間かけて仕込むこだわりの鶏ガラスープ、
さらに修学旅行生には替え玉ひと玉無料な「京らぁ~めん」
大原の特産品柴ば漬の老舗「土井志ば漬本舗」
今日の名水の一つ醒ケ井水を使った和菓子が味わえる「亀屋良長」
これ以上あげたら軽く一万字ほど京都名物の文になってしまいそうだ。
このように食べ物巡りでも充分に京都巡りは成立するのであって
逆に1日を全て名物巡りに当てても回りきれるかどうかは疑問なほどだった。
今回我々の班が注目したのガイドブックのページでいうと78,79ページ。
コースは基本的に区域を限定してセレクトされており、あるコースは「三条」中心、あるコースは「四条」にある文化財を中心に構成されていたりする。
つまり巡るものどうしがそれほど離れていないのだ
先程言った通り京都名物はいくらでもありとても1日では回りきれない。
そこで我々はなるべく名物が密集している区域を探しそこにある食べ物だけを巡るように候補を絞った。頑張ってさがした結果一番食べ物が密集している区域は
「東山区」だった。こうして我々が巡るコースは出来上がった。
その後担任の先生に文化財を三ヶ所は入れろと指摘され
改良に改良を重ね我々の行動計画予定表は決まった。
しかしまたここから内乱の影響がではじめる。
小杉Bと三上が執拗に俺を攻めてくるのだ。
小杉B「お前なんでマジで小野田連れてきたんだよ~」
俺「いいじゃん、お前より強くはないし、お前が従うことはないよ絶対、」
小杉B「いや、嫌だよ?確かに、
初対面のやつにグイグイ押されて主導権握られたら、」
俺「じゃあ、良かったじゃん。小野田くんで。」
小杉B「ふざけんな!なんであんなクラスで浮いてるやつ連れてきたんだよ!?
島田くん連れてこいよマジで!」
俺「島田くんと小野田くんどう違うんだよ、おんなじぐらい喋んないよどっちも、」
小杉B「島田くんは良いんだよ!!」
俺「いやぁ…俺から見たら一緒だけどなぁ…何が違うの?ホント?」
小杉B「うっせぇーな!めんどくせーよ!!嫌だっつってんだろ俺はあいつが!」
三上「そうだよ、絶対楽しくなんねぇじゃんあいつ入ると、」
俺「えぇ…」
しまいには小野田くんの全てを否定し始めた。
小杉B「うわっ、あいつ今あくびしたぞ!すっげぇキモかった…」
小杉B「てか、なんであいつ毎朝HR前ブラックコーヒー買って飲んでんの?
調子乗ってんの?気取ってんだろあれ、」
もはやなんでも批判だ。
結局小杉B達の小野田くんに対する態度は変わらずこの京都旅行を迎えた。
だから俺はこの3日目が来るのが正直怖かった。
それでも俺は決意した。なんとかこの三日目を楽しいものにしようと。
今日の1日の結果によってこの京都旅行全体が後に思い出す際良い思い出にも悪い思い出にもなる。そんなわけで西田はこの三日目が京都旅行の中で一番重要な日だと思っていた。
8:30
班が先生のチェックを受け続々とロビーへ移動する。
俺たちも行動を始める。
揃った班から順に携帯電話、マップ、そして京都市内のバス、電車が一部を除き全て無料になる「京都修学旅行1DAYチケット」を渡される。
その後旅館の入口に立ち出発の一枚を撮る。
このプロセスののちその班の京都内班別自由学習が始まる。
我々も出発。
しかしここでまたお詫びタイムである。
実はこの日はあいにくの雨で傘を差さなければいけなかった。
そのため片手が傘用に使われるため普段のカメラ用の手が入る隙間がなくなってしまったのだ。その為また残念ながら1日目、2日目のような詳細な描写はできなかった。以上、お詫びタイムでした。
「石長松菊園」を出発すると向かう次の予定の場所は
確か「音羽屋〈おとわや〉」だった。
創業50周年を記念して考案された
赤飯万寿と飲み物のセット550円などをゆっくり味わえる
商店街ならではの温かい雰囲気に包まれた庶民的な和菓子屋さん。
朝食後間もないのにいきなり初めに甘味所を打ち込むあたりが
実に学生が作った計画表らしい。
ここに向かうにはまずバスを拾う必要がある。
実は残念なことにクラスの誰もが虜になったあの京都万能ガイドブックをもってしても石長松菊園からというピンポイントな道のり情報は記載されておらず
班長である俺が全ての道のりを事前に調べ把握しておく必要があった。
そんで頑張って調べました。日時、時間を正確に入力しバスや地下鉄を検索。
十何枚くらい地図をプリントアウトしました。数時間かかりました。
プリントアウトは出発前夜にしたのだが実はプリンターの調子が悪くて
なんども失敗しプリントできず。最後には黒のインクがなくなり印刷実行すらできず。カメラでパソコンの画面を撮って持っていくところまで行きかけたその時!父が千里眼を使い一本だけ未使用の黒インクを発見。不具合も治りやっと印刷できたというハプニングがあった。そんな一歩間違えれば修学旅行にしか持って行かれなかったかもしれない資料、この京都では大いに役立ってくれるはずだ。そう俺は信じていた。あんなことになるまでは…
旅は始まった。
俺が持つ資料は完璧だ。いつどの交通手段を取ればいいかが書いてある。
一番初めに使う交通手段はバスだった。8時53分という余裕の効かせた
バスをとっていた俺。もうね、すばらしい。
てくてく傘をさしながら歩く一行。バス停は3分もしないうちに見つかった。
なんというスムーズィーな流れ、よっしゃ、こいつで甘味所へ行き
縁起があるものでも食べるとするか!
時刻表見た。
53分がない。
50分の次は飛んで55分になってしまっている。
自宅で作った手作りパーフェクト資料を再確認。確かに53分だ。
どうやら違う。このバス停じゃないらしい。思わず走ってしまいみんなに先立って
一足早くその事実を知った俺はみんなが追いついた時にはすでに歩き出していた。
三上「おい西田ぁーここじゃねぇの?」
俺「なんだか…違ったみたいだな…」
まずい。早くも「大丈夫かコイツ?」みたいな目線で見られてる。
やめなさいそんな目で見るのは、いやいや落ち着け、53分発だ。まだ15分はある。
また別のバス停を探せばいい、想定の範囲内みたいな顔をしていればいい。
その時!
またバス停あった。視力はいいものの遠すぎてぼんやりとしか見えないが
視界の右ら辺に確かに確認した。
思わずダッシ…シュはせずに想定の範囲内という設定なので急ぐそぶりなく歩く。
本当は走って先に確認して違った時のために備えたい。
でも走らない。大股です。
再びバス停に着いた。時刻表は!
「54分」
違った。
PS ドロ沼へはまって行く