「西田学人生初の京都へ行く」第27話「小野田くんは何故水泳部2人から受け入れられないのか」
27話
行動予定表は班長が記入して順路を実際に自宅のPCで確認した上で提出する。
クラスには人数分京都を楽しむガイド本が配られた。
100ページ強のボリュームで京都と奈良を巡るコース例が15個のっている。
つまり何が言いたいかというとどうしてもコースが浮かばない班はこの本に載っているコース例をなにか選びそのまま書いて提出すれば良いということだ。
コース紹介欄では「~したい人にオススメ」といったわかりやすい煽り文や
移動時間が~分予備として~分、合わせて~分。といったそのコースを巡るのにかかる時間配分も詳細に記入されている。どこの班ももうこの本に頼りっぱなしだった。そりゃ頼るわ。
しかし我々の班ではそもそもこの本は使えなかった。なぜなら我々の行動方針と
これらに載っていたコースの方針とは違っていたからだ。
ずばり我々が打ち立てた行動方針は「京都内の名物を食べ歩く」
これである。
これはスムーズに決まった。全員京都の文化財には興味がなくそれよりも京都名物の方が何倍も惹かれていたのだ。ちゃんと俺は小野田くんにも了承を得た。
お金をかなり使うプランを提示したので小野田くんは反対するかどうか心配だったが特にそんなアクションも起こさずやっぱりいつも通り風が通るような声で
「いいよ」とだけいった。
食べ物巡りとかいう食い意地の張った企画で京都をしっかり巡れるのか?
我々はミリ単位も思わなかったが
一般人にはこんな疑問が出る。が、それは心配ない。
事実京都が誇っている名物はガイド本をみるとかなり載っていた。
出汁が京風でなんともクセになる味な「京めん 名物うどん」
9時間かけて仕込むこだわりの鶏ガラスープ、
さらに修学旅行生には替え玉ひと玉無料な「京らぁ~めん」
大原の特産品柴ば漬の老舗「土井志ば漬本舗」
今日の名水の一つ醒ケ井水を使った和菓子が味わえる「亀屋良長」
これ以上あげたら軽く一万字ほど京都名物の文になってしまいそうだ。
このように食べ物巡りでも充分に京都巡りは成立するのであって
逆に1日を全て名物巡りに当てても回りきれるかどうかは疑問なほどだった。
今回我々の班が注目したのガイドブックのページでいうと78,79ページ。
コースは基本的に区域を限定してセレクトされており、あるコースは「三条」中心、あるコースは「四条」にある文化財を中心に構成されていたりする。
つまり巡るものどうしがそれほど離れていないのだ
先程言った通り京都名物はいくらでもありとても1日では回りきれない。
そこで我々はなるべく名物が密集している区域を探しそこにある食べ物だけを巡るように候補を絞った。頑張ってさがした結果一番食べ物が密集している区域は
「東山区」だった。こうして我々が巡るコースは出来上がった。
その後担任の先生に文化財を三ヶ所は入れろと指摘され
改良に改良を重ね我々の行動計画予定表は決まった。
しかしまたここから内乱の影響がではじめる。
小杉Bと三上が執拗に俺を攻めてくるのだ。
小杉B「お前なんでマジで小野田連れてきたんだよ~」
俺「いいじゃん、お前より強くはないし、お前が従うことはないよ絶対、」
小杉B「いや、嫌だよ?確かに、
初対面のやつにグイグイ押されて主導権握られたら、」
俺「じゃあ、良かったじゃん。小野田くんで。」
小杉B「ふざけんな!なんであんなクラスで浮いてるやつ連れてきたんだよ!?
島田くん連れてこいよマジで!」
俺「島田くんと小野田くんどう違うんだよ、おんなじぐらい喋んないよどっちも、」
小杉B「島田くんは良いんだよ!!」
俺「いやぁ…俺から見たら一緒だけどなぁ…何が違うの?ホント?」
小杉B「うっせぇーな!めんどくせーよ!!嫌だっつってんだろ俺はあいつが!」
三上「そうだよ、絶対楽しくなんねぇじゃんあいつ入ると、」
俺「えぇ…」
しまいには小野田くんの全てを否定し始めた。
小杉B「うわっ、あいつ今あくびしたぞ!すっげぇキモかった…」
小杉B「てか、なんであいつ毎朝HR前ブラックコーヒー買って飲んでんの?
調子乗ってんの?気取ってんだろあれ、」
もはやなんでも批判だ。
結局小杉B達の小野田くんに対する態度は変わらずこの京都旅行を迎えた。
だから俺はこの3日目が来るのが正直怖かった。
それでも俺は決意した。なんとかこの三日目を楽しいものにしようと。
今日の1日の結果によってこの京都旅行全体が後に思い出す際良い思い出にも悪い思い出にもなる。そんなわけで西田はこの三日目が京都旅行の中で一番重要な日だと思っていた。
8:30
班が先生のチェックを受け続々とロビーへ移動する。
俺たちも行動を始める。
揃った班から順に携帯電話、マップ、そして京都市内のバス、電車が一部を除き全て無料になる「京都修学旅行1DAYチケット」を渡される。
その後旅館の入口に立ち出発の一枚を撮る。
このプロセスののちその班の京都内班別自由学習が始まる。
我々も出発。
しかしここでまたお詫びタイムである。
実はこの日はあいにくの雨で傘を差さなければいけなかった。
そのため片手が傘用に使われるため普段のカメラ用の手が入る隙間がなくなってしまったのだ。その為また残念ながら1日目、2日目のような詳細な描写はできなかった。以上、お詫びタイムでした。
「石長松菊園」を出発すると向かう次の予定の場所は
確か「音羽屋〈おとわや〉」だった。
創業50周年を記念して考案された
赤飯万寿と飲み物のセット550円などをゆっくり味わえる
商店街ならではの温かい雰囲気に包まれた庶民的な和菓子屋さん。
朝食後間もないのにいきなり初めに甘味所を打ち込むあたりが
実に学生が作った計画表らしい。
ここに向かうにはまずバスを拾う必要がある。
実は残念なことにクラスの誰もが虜になったあの京都万能ガイドブックをもってしても石長松菊園からというピンポイントな道のり情報は記載されておらず
班長である俺が全ての道のりを事前に調べ把握しておく必要があった。
そんで頑張って調べました。日時、時間を正確に入力しバスや地下鉄を検索。
十何枚くらい地図をプリントアウトしました。数時間かかりました。
プリントアウトは出発前夜にしたのだが実はプリンターの調子が悪くて
なんども失敗しプリントできず。最後には黒のインクがなくなり印刷実行すらできず。カメラでパソコンの画面を撮って持っていくところまで行きかけたその時!父が千里眼を使い一本だけ未使用の黒インクを発見。不具合も治りやっと印刷できたというハプニングがあった。そんな一歩間違えれば修学旅行にしか持って行かれなかったかもしれない資料、この京都では大いに役立ってくれるはずだ。そう俺は信じていた。あんなことになるまでは…
旅は始まった。
俺が持つ資料は完璧だ。いつどの交通手段を取ればいいかが書いてある。
一番初めに使う交通手段はバスだった。8時53分という余裕の効かせた
バスをとっていた俺。もうね、すばらしい。
てくてく傘をさしながら歩く一行。バス停は3分もしないうちに見つかった。
なんというスムーズィーな流れ、よっしゃ、こいつで甘味所へ行き
縁起があるものでも食べるとするか!
時刻表見た。
53分がない。
50分の次は飛んで55分になってしまっている。
自宅で作った手作りパーフェクト資料を再確認。確かに53分だ。
どうやら違う。このバス停じゃないらしい。思わず走ってしまいみんなに先立って
一足早くその事実を知った俺はみんなが追いついた時にはすでに歩き出していた。
三上「おい西田ぁーここじゃねぇの?」
俺「なんだか…違ったみたいだな…」
まずい。早くも「大丈夫かコイツ?」みたいな目線で見られてる。
やめなさいそんな目で見るのは、いやいや落ち着け、53分発だ。まだ15分はある。
また別のバス停を探せばいい、想定の範囲内みたいな顔をしていればいい。
その時!
またバス停あった。視力はいいものの遠すぎてぼんやりとしか見えないが
視界の右ら辺に確かに確認した。
思わずダッシ…シュはせずに想定の範囲内という設定なので急ぐそぶりなく歩く。
本当は走って先に確認して違った時のために備えたい。
でも走らない。大股です。
再びバス停に着いた。時刻表は!
「54分」
違った。
PS ドロ沼へはまって行く