「西田学人生初の京都へ行く」第24話「小杉Bとの戦いはどのように繰り広げられたか」
24話
すごい。豆腐はもちろん京都名物だが今回はそれを自分らの手で作らせ出来たてを味わせるというなんとも楽しい企画になっている。一般人の場合。
そう、おかみさん。残念ながらあなたが思い描くこの後の展開は違う。
みんな仲良く和気藹々と豆腐作りに真面目に勤しむ情景をあなたは期待しているのだろうが、多分それは実現しない。平岡生だぞ?真面目に淡々と進むはずがい。
多少のオリジナリティーとかいって勝手ににがりを入れ出すに決まってる。
この豆腐たちは報われない。つくるのがこの平岡生では。絶対報われないことになる。すくなくとも大西がいるこのエリアは。
そう。なんと俺の右上、島田くんの左隣には
悪事の巨匠、大西が席を陣取っていたのだ。
彼の恐怖を体験済みの俺たちは明らかに嫌な予感しかしない。
小杉B「昨日のことがあるから怖い。」
俺「大西でしょ?さらに漬物まであるぞ。ご丁寧に、もう終わりだよ。」
小杉B「ハッハっwwwww」
笑うしかないコンディションだ。
その後先生の話に昨夜の夕食時と同じ英語科の先生が前に出た。
ちなみにこの英語の先生は我々にマラ石の存在を教えてくれた英語の先生ではない。中学三年のクラスはG組までの7クラスある。
毎週5回授業がある英語。全ての学科の中で最も授業回数が多い英語であるがゆえ一人では全てのクラスを回りきれない。よってA~C、D~F、Gで担当の先生が
分割されるのだ。そのため英語科の先生は三人いる。よってこの英語の先生はそんな下品な話はしないA~Cを担当する英語科の先生である。
そして先生の合図で生徒のいただきます係が前に出た。
いただきます係「手を合わせて」
全員「パンっ」
「いただきます!」
「いただきますっ!」
こうして二日目の夕食は始まった。
始まって直後。
小杉B「ねぇねぇ、」
俺「?」
小杉B「あそこの茶そばに乗ってる卵食べて、」
俺「もぉぉぅうぅぅ…」
小杉B「ハッハっwwww…」
俺「なんでそんな細かいとこまでいうの…」
今の食卓大体熱通した卵あるぞ?お前どうすんだよ俺がいなかったら?
多分その時は食べるって言うんだろうな…じゃぁ俺がいても食えよ!!
と、心の中で思いをぶちまけつつ俺は小杉Bから茶そばの上に浮いた刻み卵を
受け取った。
その後案外夕食はあっさり終わった。
女将の言った通り料理がいくつか追加された。
小型肉まんとか草餅とかどれも美味しかった。
自家製豆腐は労力も手伝い旨さが倍増した。
心配していた大西はカメラを撮るのに夢中で豆腐作りに出遅れ
邪魔することができなかったので豆腐はほぼ本来の形で完成を迎えた。
こうして夕食は終わった。
「ごちそうさまでした!」
18:40
E組の風呂は予定では8時からだ。
まだ一時間以上時間がある。
俺は部屋に戻った。俺らの部屋は東官の4階にある。
地面が近かった昨日の宿と違いジメジメとした感じはしなかった。
あと高かったので虫もまったくいなかった。
あと部屋をはじめに見た際の班員のリアクションは一日目と変わらないので割愛しました。小野田くんは無言でした。
部屋に入るのはこれで二度目。中はいつの間にか布団が四つ敷かれていた。
さっそく配置決めが行われた。その結果部屋を上から見て
上段左が小杉B、その右にオレ、その右に小野田くん。下段に三上ひとりとなった。
その後俺はあることに気づいた。
空気清浄機がこの部屋にはあったのだ。左奥に白い空気清浄機は置かれていた。
俺は自分が介入せずに自分にとってプラスなことが起こる機械が好きだ。
例えば掃除機を使えば部屋のゴミは綺麗になるが自分がその掃除機を操るため自分が介入することになる。一方パソコンなどでよく表示される「処理完了まであと◯時間」的な表示はその処理が完了するまでの間踊り続けなければいけない等の義務がない。つまりパソコンが自分が何をしようが関わらず仕事を進めるのでこの場合は自分が介入しないといえる。だからこの理屈でいうと俺はパソコンのそういう表示が好きだ。そして空気清浄機だ。空気清浄機はボタンを一回押す動作を区切りにあとは自分が何を使用が勝手に空気を綺麗にする。だから自分が介入せず確実に自分にプラスなことが生まれる。だから空気清浄機も大好きなのだ。
俺は自室にも空気清浄機があるので無駄なくフタを外し給水用の容器を取り出した。これは加湿機能の際に使われる部分でこの水を少量ずつ細かい霧状にして空気上に放出する。容器の中にはまだ少々水が残っておりチャプチャプしていた。
これは古い水なので俺たちように新しく水を入れよう。こんなこと誰も興味がないので全て俺の一人作業となった。まずは容器を取り出す。
よいしょっと、
がこっ
ボドボドボド
外した直後水が出てきた。布団にビタタタタタタ…
小杉B「テメェゴラァァアアアア!!!!!!」
そこは小杉Bが寝るはずのベットだった。
俺はその後スプリングアッパーをかけられカメラを没収された。
俺は自分の布団と濡れている小杉Bの布団を交換する羽目になった。
三上は他の部屋へそそくさと移動、
小野田くんはテレビ番組を見ている。
一時不慮の事故で作業が中断したが作業再開だ。
容器を持ち備え付けの洗面所に移動。
洗面所に俺をこんな目にあわせた憎き古い水を捨てる。
その後何回か水洗い。ここどれくらいのレベルで洗えばオッケーなんだろう。
この古い水が何日前のものかとか知らないし。うーん。
古さの度合いがわからない以上ここは最悪の場合を考える必要がある。
とりあえずこの水は1世紀前のものと仮定する。もう大変に汚い水だ。
よって最大級の洗浄を行う必要がある。
まず水洗いだけではダメだ。俺は洗面所に置いてあるプッシュ式手洗いせっけんに目をつけた。とりあえず4,5回容器内にプッシュ。そこに新鮮な水を入れて丹念にシェイク。石鹸水入りの水で加湿したらいいんじゃないかと一瞬頭に考えがよぎったがさすがにそれはやりすぎだと思ったのでやめておいた。
その後2,3プッシュ。水ですすぐ。最後に仕上げの一回プッシュ。
この仕上げをねぇ、忘れる人が本当に多いんです。
最後までしっかり洗浄しましょう。
そして計9回のプッシュを終え洗浄は完了。すごくいい匂いになった。
満を持して新鮮な蛇口ひねりたての水を容器に注入。
そして元の空気清浄機に再びセット。がこっ
加湿スイッチオン。ピッ。ブイーーン。すごいちゃんと加湿してるっぽい。
噴出口から風が出ていることを手によって確認した俺は
ミッションを完了による達成感を感じていた。
だが失ったものも大きい。俺のカメラだ。そうあれ以来ずっと俺のカメラを小杉Bは手に握ってる。カメラいじりはやめてほしいって心の中で懇願した矢先にこれだ。
とことんついていない。
俺の中で新たなミッション「カメラ奪還プロトコル」が発令された。
19:28
力勝負で勝てないのは三年前から知ってる。
ここは隙をつくしかない。さっきから小杉Bは自身のiPhoneをいじりつつ
周期的に俺の様子をさりげなく見てる。無視だ無視。理屈じゃない。討論じゃない。
あいつに効くのはもはや無視という行為しかないのだ。
俺は無関心を装いさっきから小野田くんがつけていたテレビ番組を一緒に見た。そうすることで目線がテレビという定位置に落ち着き冷静さをよそえる。
〈もうオレそういうの飽きたから。
まじお前いつまでそんなことやってんの的な感じ~〉
小杉Bにはきっとこんな風に俺の後ろ姿が見えただろう。
直接見てはいないが小杉Bはどうやらカメラを回し始めたらしい。
耳をすますとデジタルカメラ特有のノイズ音が聞こえる。くそ~無関心!無関心!
ここで振り向いたらあいつの思うツボだ!
3分後。
俺「お前いつまで撮ってんだよ!!」
小杉B「ハッハッハwww気づいた!ww」
ダメだ。俺には無駄な動画が取られ続けるのを、ましてや俺のカメラで取られ続けるのを黙って見過ごし続けるわけにはいかなかった。
小杉B「ちょっと俺島田くんのとこいこっかなぁ…」
俺「フロだよ、」
小杉B「……………」
俺「ねぇ、ずっと撮ってんのお前それもしかして?…」
小杉B「……………」
俺「長い!長い!返してよぉ~ねぇー…」
小杉B「……………」
俺「電池なくなっちゃうだろぉ…ねぇえ…」
小杉B「……………っ!」
小杉Bのアビリティーグットバイにしびれを切らした
俺は小杉Bが持つカメラを力ずくで奪いにかかる。
俺「熱いじゃねぇかカメラが!お前どんだけ電源つけてんだよおい!…」
また力ずくの争いになりる。しかし俺はことごとく敗北。あいつの腕力やばい。
全然離さない。固ったい。昨夜の布団の時も思ったけど固ったいんだこれ。
俺は畳の上に突っ伏してしまい仁王立ちの小杉Bからケツを踏みつけられた。
そんな状況に三上が帰ってきた。彼は風呂がすいてるといった。どうやら風呂場も見てきたらしい。青春野郎が。時刻は7時33分。予定では今C組が入っている。
しかしもうそろそろ準備をしておく頃じゃないかと俺は思った。
依然として踏まれたまま。これから出てくる俺のカタカナは全て叫びです。
三上「あれどこいったっけ、ねぇねぇねぇ…」
俺「ヌァアアアアアアア~!!」
三上「ねぇ西田~、」
俺「はい…」
三上「俺が出しといたさぁ、寝巻とか知らない?」
俺「お前出してたっけ?」
三上「用意しといたんだけど…あった。」
俺「ウワァアアアア~…!!」
三上「これか?これだな、」
俺「ヌアウワァ!」
俺「もう行こうぜマジで…」
俺はやっと小杉Bの恐怖から解放されるや否や言った。
そしてすぐさま入浴の準備をし始める。
この瞬間小杉Bはもう戦いは終わったんだなと思っただろう。
それが俺の狙いだった。あのカメラががっちり握られている右手だって素早く瞬間的に隙をついて攻撃すれば本来の力が出せずカメラを奪還できると思ったのだ。
そうだ。忘れていた。そういえば一ページ前に俺はミッションを立てたんだった。
「カメラ奪還プロトコル」を。
これはミッション。無鉄砲に相手と力技で勝負するのではない。
頭脳戦なのだ。あのイーサンだって敵に何の策略もなく
「りゃー」ってバカみたいに突っ込んではいかない。誰にも思いつかないような秘策を立て最後には形勢を逆転するのだ。これはミッションインポッシブル。
不可能な作戦。でもイーサンは5度成功させた。
俺も一度くらいは成功させてやる。
俺「いくぞ、」
小杉B「ちょっと待って…」
俺「待たない。行くよ、早く」
小杉B「……………」
俺「小杉、いくぞっ…おい、いくぞ小杉…」
小杉B「待っとけ…」
俺「ねぇ、待ってじゃねぇよ…もう…」
いまだ!!!!
バッ!ヒュッ!スカっ!バキッ!勝ったのは!?
俺「ギャァ!!重い!重い!重い!重い!痛い!痛い!痛い!痛い!」
やっぱりまけました。
PSこっから後半戦です!連載当時は旅行から半年以上経ってるのでそろそろ記憶が曖昧になってきて非常に苦労しました。