wakeupandpresentの日記

いつもは映像作品を作ってます。ここでは西田学くんの大冒険を載せていきます。

「西田学人生初の京都へ行く」第13話「犯してしまった彼らはそれをどう処理したか」

13話

 

やってしまった。

呆然としていた。俺は呆然としていた。

小杉Bは「チッ」と舌打ちしている。

皆も状況を察知したらしい。

場の空気が変わった。

公共物を、しかもよりによって宿泊先の枕カバーを破いてしまったのだ。

完全に切り離されてはいなかったが、かろうじてつながっているような状態で、

糸の縫い目がブチブチとひしゃげていた。

三上「あ〜ぁ、やっちまったな西田、」

小杉B「隠せば良いだろ、こんなん、」

俺「え、」

小杉B「文句でもあんのかよ。」

俺「いや…隠すのは…まずいだろ…」

小杉B「じゃ、どうすんだよ」

俺「点呼取りにくる…白川Tに言う…」

三上「はぁ〜?そしたら俺ら携帯どころじゃなくなっちまうだろ!?」

小杉B「良んだよ!!隠すんで!」

俺「いやでもこれはまずいって、」

小杉B「まずくねぇっつってんだろ、良いの。」

俺「でもやった半分俺だし、携帯とかそういう違反は良いけど、

ものが壊れちゃってるから、言った方が良いだろ…ばれるよりかは…」

小杉B「だからばれねぇよ!どんだけチキンなんだよお前は!」

三上「こんなの破けた内に入んねぇよ、言ってたじゃん、先生も、

過去は障子を全部破いた生徒がいたって、

それに比べたら全然良いだろ。」

小杉B「グチグチグチグチ言ってさぁ、

こんなことが起きた位でテンション下がってんじゃねぇよ!

もう見なくていいよ、映画も、お前、」

俺「うん…まじで、ちょっと今日見れる気分じゃないな…」

小杉Bの刺々しい言い方にもまともに返す俺、本当に意気消沈だ。

そこへ先生が来た。

先生がなぜか室長の上川じゃなく俺に明日の朝どうするかの確認や、

起床時間を言ってきて、

最後に「大丈夫か」と深い意味ではなく皆に言っていたと思うのだが聞いてきた。

小杉Bも三上も皆俺を見ている。

俺は結局その事を言い出せなかった。もう違反物の加担とかそんなレベルじゃない。

普通に器物損害罪だった。それでも俺は隠蔽を選んだ。

今日は眠らない。携帯を見るとかではない。ちょっと考えようと思った。一人で。

でも小杉Bが言った。いつにも増して声低く、

小杉B「見ようぜ、テッド」

さっきはああいったが、やっぱり見てほしいのだった。

俺「いや、俺今日ホントにそういう気分じゃなくなっちゃったんだ、

悪いけど明日以降にして、今日はもう無理…」

小杉B「さっきの事悪かったから」

俺「いや、そういう事じゃなくて」

小杉B「じゃ、どういう事だよ。」

俺「いや、あの映画コメディ映画でしょ?今のノリで見る映画じゃないよ」

小杉B「いや、マジで。」

俺「うん…」

小杉B「お前と見たいんだって。」

俺「…分かった。」

絶対に笑えない。

今のテンションだったらガキ使の絶対に笑ってはいけない

仏みたいな顔で乗り切れる。

でもまた小杉Bともめるのは嫌だったので、とりあえずOKをした。

この時点で12時を過ぎる事を覚悟した俺は

「映画鑑賞」という枠を設けるのを止め、

「睡魔にどこまで耐えられるか」という新しい枠をつくる事にした。

すでに消灯の時間は過ぎていた。布団が引かれている部屋の電気は消え、

それぞれ個々の布団で四角状や丸状の光がもぞもぞと暗闇の中でうごめいていた。

小杉Bがセッティングし直したベースステージで小杉Bは携帯を取り出した。

彼の携帯はiPhoneだ。小杉Bは起こった出来事を引きずらないタイプの人間だ。

すぐにまた声が弾む。さっきの出来事が無かったように。

小杉B「こっれっでっすっよ」

指で画面をタッチ操作しながら小杉Bは言った。

所定の場所へ着いたらしい。

テッドと言う映画のジャケットが現れた。情報が下に少し書いてあり

「2013.アメリカ.116分」と表示されていた。

改めて横にある持参の目覚まし時計を見る。時計は十時十分辺りだった。

 

十二時六分。

 

覚悟を決めた。

小杉B「さ、見ましょ〜う!」

ポチッ

「この動画は再生できません」

そんな文字がタップしたら出てきた。

小杉B「はっ?」

不意打ちに小杉Bは動揺を隠せない。

何か色々試し始める。

数分後

小杉B「ごめん、何か見れない、」

やった。

俺「あ…そうなんだ、まぁいいよ、この修学旅行中に見れれば良いから。」

 

究極的にほっとした。その瞬間体の力みがほどけ猛烈な睡魔が襲ってきた。

 

その後小杉Bがこのままじゃ今日を終われない、とか言ってYouTubeで色々

動画を見たがやはり当初の目的映画鑑賞ができなくなったのが大きく

15分もしないうちに断念。YouTubeを閉じる小杉B。

小杉B「なんかおもしろくねぇなぁ。」

身も心もテッドだった小杉Bはそういい残して自分の布団へ戻っていった。

そして俺は目を閉じた。

 

さっきの起きた出来事は夢だったのか。

いや、夢だったと信じたい。

でもあのブチブチという音、非日常な感触はまだ残っている。

とりあえず小杉Bの言う通りいつまでもテンション低めだと修学旅行自体が楽しくなくなる。今夜だけじっくり考え、明日からは気持ちを入れ替えよう。

間違っているかもしれないけど、そうするしかない。

少なくとも人生で一番悪い事をした。頭の中で意識が薄れるまでそう思い続け、

やがて俺は懺悔の後就寝した。

おやすみなさいをした。

…………

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バサッ!

俺「はっ?」

刹那俺に敷かれていた布団が消失した。

てゆうか左側に吸い込まれた。ちょっと待て、え?左。

俺〈左を目でチラ〉

小杉Bが満面の笑みだった。

一言言わせてくれ。

嘘でしょ小杉!?

あんな事件あったらとりあえずは時間置くでしょ?俺と!?

一晩経たないうちに、ていうか一時間経たないうちにこれかよ!?

どんだけお前立ち直り早ぇーんだよ!?

天才か!?一周回って天才かお前は!?神が創りし天才かお前は!?

とりあえず全力で抵抗。今は11月。布団レスで一晩越すのはやばい。

寒い。取られて数秒で寒気が襲う。長袖長ズボンのパジャマなのに全く暖かくない。

俺「おい小杉返せよ…せっかくもうちょいで寝れるところだったのに…」

小杉B「ちょ、奪う。」

宣言いいよ。そんな宣言はしなくていいよ。

必死に布団を握っている小杉Bの手を解こうとする。

強っよ、ほどけやしねぇ。

俺「ねぇマジで返して小杉!またさっきみたいになるからこんなことやってたら!」

本当に二度は犯したくなかった。

俺「小杉!布団!」

寒すぎる。ていうか虫退治の時に開けてた窓が閉められてない。今気づいた。

小杉Bは俺がこういった風に翻弄される様子を楽しんでいるのだ。

だからあいつは俺がこのまま抵抗するうちは絶対に布団を返さない。

返さないことで俺がさらに抵抗するからだ。

こんな抵抗続けてても小杉Bには意味がない。むしろ喜ぶ。

でも力ずくでは勝てるわけがない。あいつはプロレスを習っている。

喧嘩には使うなって言われてるらしいけど。

その時30分前の光景がフラッシュバックした。

俺「止めろぉ〜!!!小杉ぃー!!」

小杉B「オゥラァアああ〜!!!」

 

あぁ。まただ。

またこうやって何かが取り返しがつかなくなるまでやり続けてしまうんだ。

またこんなことしてたら布団がブチブチ言い出すんだ。

俺は決心した。それまで全力で自分サイドへ引っ張っていた布団をふっと離した。

急なことに小杉Bは対応できずちょっと「うわっ」てなった。

俺「もういいや。寝る。」

俺は布団レスで一夜を越えることに決めた。これも断罪として考えれば当然の報いなのかもしれない。そう思ったのだ。しかし小杉B、俺を寝かせない。

バンッバンッ

奪った俺の布団で攻撃をしてきた。はいもう一回言います。嘘でしょ小杉?

そんな痛くないけどホコリ舞う、あとうるさい。寝てる人いたらどうすんだよ!

いや…耐えろ俺。ここで喋ったら今夜下した俺の決断が無駄になる。

これも断罪だ。小杉B全然断罪してねーけど。これも断罪だ。

バンッバンッ

丹念なる修行の一環である。

バンッバンッ

主に精神の統一と邪念の払拭を目的とするものである。

バンッバンッ

希求の門を開くのである。

 

脳内に響く声で修行感をアップさせ私は断罪を受け続けるつもりだった。

しかし以外にも疲れるだけで俺が何も言ってこないことに

猛烈にテンションが下がったのか小杉Bは布団を投げ返してくれた。

それきり小杉Bはその夜俺から布団を奪うことはなかった。

一度まどろみかけたのに再び起きる羽目になった俺。

もう一度あの出来事について考えることにした。

あの出来事が許されることはない。しかしとりあえず掛け布団を使い一晩を越すことを仏に許された俺はそれに満足してしまい深い眠りに落ちてしまった。

今度こそおやすみなさいした。

 

 

おそらく22:35    西田学完全就寝 (一日目終了)

 

ps 

 来週から二日目編です

明日香村サイクリング、法隆寺見学などイベント沢山です

お楽しみに