「西田学人生初の京都へ行く」第3話「小杉Bのめんどくさいアビリティ〈グッドバイ〉とはなんなのか」
第三話
小杉Bとは思えば長い付き合いだ
かれこれ3年になる
とはいっても彼と本格的に面識を持つようになったのは一緒のクラスになった2年からで、それまではなんだかでかい人だな。
「進撃の小杉B」とかで映画の企画が通りそうだなとかしょーもない事ばっか思ってた。
水泳部同士に加え同じクラスになったという事で彼とはすぐに打ち解けた。
すこし自分の意見を突き通す感があるんだけど
逆にそのおかげで俺も彼の趣味に合わせてみたり新しく
今まで聞かなかった英語の歌詞を歌う日本人のロックを聴いてみたり
話の引きだしが編集と仮面ライダーの二つからちょっとずつ増えていってる。
最近では彼と一緒に自分がバンドをやるという話が出てきている。
それはちょっと現実味にかけるけどなんだかんだつき合っていて楽しい人物だ。
しかしそこはBADの異名を持つ(てか俺がつけた)男。
単なる良い男では終わらない。
距離が縮まり互いの事を理解した我々2人。
理解した上で彼は私の股間に筋肉痛用のスプレーをぶっかけまくってきた。
ね?中々のワルでしょ?
かけられた後周りの部員も気にせず叫びまくったからね?
「股間とれる!」って、なぜか分からないけど。
そんなBADボーイこと小杉Bはこの6行で語らせてもらったように
何かと俺に対しちょっかいをかけてくる。
俺も口だけで反抗しないからなんだろうけど。
今回も当然小杉Bの魔の手が忍び寄った。しかも修学旅行。普段に増してハメが外れてヤバい匂いがぷんぷんしちゃってる状態だ。
そんな小杉Bが向こうから島田くんと俺を見つけて来ました来ました。
島田くん「何でこんな遅れたの?」すかさず島田くんが聞く。
小杉B「あのね…バスで東京駅に来たまでは良かったんだけどさ…
その後ここの場所がさっぱり分からなかった…」
息も絶え絶えだ。さては走ってきたんだろう。集合時間まで後2分しか無いからだ。
そして小杉Bは「ちょっと息が…」といいながら膝に両手を当て下を向いてしまった。
目線の先には俺のズボンが映っている。まずいこのアングルは!
次に発する小杉の一言に緊張が走る。
小杉B「めっちゃ疲れた。」
分かったよ、疲れたのは。でも良かった。
最初の一言を逃れればファッションの話題は出ない。
島田くん「そういえば今日の西田のファッションどう?」
小杉B「あ、クソだ。」
島田くん「wwwwwww」
島田くぅぅぅん!
絶妙に最悪なタイミングで合いの手入れましたねあなた。
やっぱり島田くんは俺が小杉Bにいじられる事を知ってて狙ってるんだよ。
第三者としてコントを楽しむ感覚なんだよこの人。
島田くん「ちなみにどこら辺がクソなの?」
小杉B「え?もうね、上下のカラーバランスもおかしいし、あと何?その腰についてるポーチ」
俺「あ、これはね、貴重品をここに入れると絶対落とす心配がないっていう…」
小杉B「つまりファッションセンスがクソ」
まとめんな。お前は、最後まで聞き終わらずに…
ちっっくしょ〜!
ここで追加補足をしておこう。
小杉Bにはもう一つ厄介な特性がある。
それがズバリ!小杉アビリティ〈グッドバイ〉だ!
このアビリティを発動した際小杉Bの耳関係の感覚神経に特殊な信号が送られ
自分に不都合な情報や論破される危機性がある台詞を全てシャットアウトするという特殊状態だ!
はい。そうです。つまりは聞き流し、シカトです。
ごめんなさい。
まじめに書いてたら僕の精神が持たないので
無理にでもヒーローが使う超必殺技の解説みたいなテンションで
行かせていただきました。
そうなんだよ!このアビリティのおかげで
手とか出すのが嫌いな俺が使う対抗手段
〈論理的観点から見た論破〉が無効になっちゃうんだよ!
つまり小杉Bに理屈は通じない。全て彼はフィーリングで動き、周りの論理性をも強制的に遮断させるというとんでもなくめんどい男なのだ。
だから私はこの旅行でことごとく彼にいじられるが、
皆さんに分かっておいてほしいのは今後俺が小杉Bに対して正論で反論をしないのは単にその場で思いつかないからではなく、
彼の常識、正論を全て無効化するというアビリティが前提にある為である。
遅刻が一名いたがそれ以外は問題なく三年生は大移動を始めた。
先生達や校長先生今回の旅で
我々をエスコートしてくれるおじさんガイドや
同行してくれるカメラマンさんたちの話の後我々三年生は大移動を始めた。
主に先生おじさん達の話を聞いてどうやら彼らは新幹線に我々が乗る事を心配しているようだ。
確かに新幹線という密閉空間で流れる景色に生徒達の興奮が爆発すれば先生達にとってはおちおち眠れもしないだろう。
でも先生が心配していたのはその点ではない。
電車が駅に到着して出発するまでに生徒全員が車内に乗り込めるかという点についてだった。停車時間が短いのだ。
今まで東海道新幹線に俺はいつも乗って名古屋へ向かうがそんなに急ぐようなイメージは持った事が無かった。
しかし実質最終日の帰る際に我々が乗る新幹線は乗車時間が一分だった。
行きではないので初日の乗車は大丈夫なのが幸いだった。
逆に言えばそれは帰りの乗車で一人でも乗り遅れたら
たちまち大パニックになる事を意味していたということに当時の俺には知るよしもあったけど忘れてた。
東京駅から新幹線への移動の際歩きながら小杉Bと話す
彼はこの旅行期間中に俺とある秘密の計画を企んでいたのだ。
それは小杉Bのスマフォの中にある映画を見る事だ。
ね?中々乙でしょ?京都で映画なんて?え?家で見ろ?
まぁいいや、ともかく俺は小杉Bと共にこのちょっぴりワルな計画を立てたのだ。
というのも最近私「脱•マジメMan」を掲げているので
ちょっと今まで踏み込んでいない場所へ、つまり悪い事手を伸ばして挑戦しているのです。
でも心配しないでください。
政治的汚職とかは今の所する予定は無いので。
でも先生がもちろん禁止しているスマフォの持ち出しを友人がしようとしている。
それを黙秘して犯罪に加担するという人生かつて無い悪事に打って出ちゃうのです。
(ちなみに私は小杉BにPSPを持ってこいといわれましたがそこまで行くと怖くなっちゃうので当日僕は持っていきませんでした。←めっちゃ卑怯)
しかしそんなワルと興奮に満ちたこの計画にも多少の穴…いや穴までは行かないけど心配事があったのだ。それは映画独特の特徴によるものだった。
長いのだ。我々が見ようとしている映画はTEDというコメディー映画で
上映時間は106分と映画ではいたって普通の分類に入る。
しかし見る時間帯が就寝時間を過ぎてからなのだ。
コレは動きようが無かった。
なぜならば先生達と完全に交流が
たたれる時間帯が最低に見積もってもそこからなのだ。
先生達は何一つ悪くない。
むしろ悪いのはこっちサイドだ。
だがしかし!深夜男同士でちょっぴりえちぃ映画を見るという
ロマンあふれる計画遂行のため先生達の目を欺く必要があるのだ。
となると必然的に眠さも増す。
映画を週に最低一本、多いときは3本くらい見ている
俺の映画鑑賞についての経験上睡魔は映画鑑賞の大の天敵だ。
思考能力が低下して話の内容理解度が低下して、聞き取れなかったセリフ、
意味が分からないシーンがあってもわざわざ戻す事も煩わしくなりそのまま見送ってしまうのだ…
だから睡魔は敵。
私は就寝時間を過ぎてから始まる106分の上映会にはとても体と頭が持たないと感じた。そこでこの新幹線ホームまでの移動時間を使って
小杉Bに日にちを分けて分割上映をするという提案をした。
俺「小杉。映画の事なんだけどな?…」
小杉B「ああ絶対TEDみような、TED!」
俺「もちろん良いよ。でもね?やっぱり今日初日で全部見るってのは…」
小杉B「きつくない」
俺はきついんだよ。察してくれ。小杉よ、
俺「分割してみるっていうのは…」
小杉B「駄目。」
俺「だから分轄してみ…」小杉B「駄目」
俺「分割…」小杉B「駄目」俺「ぶ」小杉B「駄目」
出ました〜!小杉Bのアビリティ〈グッドバイ〉!
こいつめんどくさいと思うと全部こういう対応に切り替わるんだよ。
こうなったら何を言っても彼は耳を貸さない。
とりあえず今回は身を引いておこう。
PS
当時はサカナクションのグッドバイという曲がマイブームでした。
清々しいほどに京都へ向かいません。